エリーゼのために

ベートーヴェン「エリーゼのために」を解説!どんな曲?エリーゼって誰?

エリーゼのためにのイメージ画像

ピアノを習い始めたら、まずはあの曲を弾けるようになりたい!

『エリーゼのために』は、そんな名曲のひとつです。

楽聖ベートーヴェンが作曲し、現代では『情熱の花』『キッスは目にして』などポップスにもアレンジされ、親しまれている楽曲です。

このページでは、『エリーゼのために』が広く知られるようになった背景や、エリーゼとは誰なのか、どんな楽曲なのか、などのトピックについて一つひとつ解説していきます!

『エリーゼのために』はベートーヴェンの最も有名な曲のひとつ

ベートーヴェンのBagatelle No. 25 in A minorと言えば・・・ほとんどの人が知らない曲です。
※Bagatelle「ちょっとしたもの」「小品」といった意味

なぜなら、この曲は『エリーゼのために』という愛称で親しまれているからです!

『エリーゼのために』は、そのキャッチ―かつ魅力的なメロディーで、現代でも多くのピアノ学習者によって演奏されている名曲です。

そんな「エリーゼのために」が作曲されたのは1810年・・・

しかしながら、後世に語り継がれるあの名曲が世に出たのは、ベートーヴェン亡き後の1867年のことでした。

(ソース:Why Beethoven's ‘Für Elise’ is an unexpectedly sophisticated piece of music)

『エリーゼのために』は埋もれていた名曲だった!?

なんと、『エリーゼのために』は公に出版されていた曲ではなく、後に発見されるまで埋もれていた楽曲だったのです。

ベートーヴェンは一貫性をもって、主要な作品には自分で作品番号(opus)を付け、出版していました。

例えば、かの有名な交響曲第5番『運命』はopus 64、『第九』はopus 125、ピアノソナタ第8番『悲愴』opus 13、ピアノソナタ第14番『月光』opus 27-2、等々。

しかし、『エリーゼのために』にはWoO 59という作品番号が付いています。

WoOとはドイツ語のWerke ohne Opuszahlの略で、作品番号(opus)のない作品という意味・・・つまり、この曲は出版されず、公にされていなかった曲なのです。

後に、ベートーヴェン研究者であるノールがこの作品を発見し、1867年に出版した「新しいベートーヴェンの書簡集 Neue Briefe Beethovens」の中に掲載したことで、世に知られるようになりました。

いま私たちが当たり前のように慣れ親しんでいる名曲を弾いたり聴いたりできる背景には、後世の研究者の功績があったのですね!

エリーゼって誰なの?

こんな素敵な曲を捧げられたエリーゼってどんな女性なのか、気になりませんか?

実は、『エリーゼのために』のエリーゼは誰なのか・・・一人に絞ることができません。いくつかの説があるのです。

テレーゼ・マルファッティ説

エリーゼの正体としてしばしば引き合いに出されるのが、本当は『テレーゼ(Threse)のために』と書かれていたのに、『エリーゼ(Elise)のために』と読み間違えられて広まってしまった説。

その「テレーゼ」の候補として、テレーゼ・マルファッティという人物の名前が挙げられます。

マルファッティ家は絹織物を扱うウィーンの豪商です。ベートーヴェンは、20年来の親友で法律家のイグナツ・フォン・グライヒェンシュタイン男爵の紹介で訪れるようになり、令嬢であるテレーゼとも知り合いました。

その後、テレーゼはハンガリーの男爵ヨハン・ドロシュディクと結婚。『エリーゼのために』は、そのテレーゼ・フォン・ドロシュディク夫人(旧姓マルファッティ)の遺品として、ミュンヘンのブレドル嬢に贈られたものの中から発見されているのです。

ただし、「エリーゼとは誰か」とテレーゼの妹であるグライヒェンシュタイン男爵夫人(ベートーヴェンの親友、イグナツ・フォン・グライヒェンシュタイン男爵と結婚)に尋ねたところ、覚えていないとのことだった、と発見者であるノールは記しています。

つまり、ノールの結論は、エリーゼの正体は「わからない」。

テレーゼ・マルファッティ説は、『エリーゼのために』が発見されてから約半世紀後、1923年にウンガーが発表したものです。

テレーゼ・マルファッティ説が根強かったのは、ベートーヴェンの周りにエリーゼに該当する女性がいないと思われてきたからです。

エリーザベト・レッケル説

そこへ2010年、コーピッツによる、ソプラノ歌手エリーザベト・レッケル説が登場しました。

もともとエリーザベトの兄とベートーヴェンが知り合いであり、その縁で交流を持つようになります。

エリーザベトはベートーヴェンの歌劇にも出演し、後に作曲家フンメルの妻となりました。

コーピッツは、エリザベートの第一子が洗礼を受けた時に記載されていた、「マリア・エヴァ・エリーゼ」という母親の名前に注目。ベートーヴェンの周りで「エリーゼ」と呼ばれる女性を発見したのです。

また、エリーザベト・レッケルと交流を持っていた時期がベートーヴェンの『エリーゼのために』のスケッチから作曲までの時期とぴったり重なるのも根拠の一つ。

ベートーヴェンが『エリーゼのために』のスケッチを始めた頃は、まだ先ほどのテレーゼとは知り合っていないんですよね。

前からアイディアを練っていた曲に、後から名前を付けたということも考えられなくはないですが。

エリーゼの正体にまつわるその他の説

他にも、テレーゼの向かいの家に住んでいたピアニストのジュリアーネ・カタリーネ・エリーザベト・バーレンスフェルト説、テレーゼの甥の妻であるエリーゼ・シャハナー説があります。

ちなみに、ノールの発見した『エリーゼのために』完成稿は現在行方不明。スケッチのみ残されていて、そこには『バガテル』と記されているそうです。
※バガテル…ピアノのためのキャラクターピースで、「ちょっとしたもの」の意。

「エリーゼのために」をピアノで弾こう!楽曲解説

『エリーゼのために』にまつわるエピソードに続いて、楽曲の特徴について簡単に解説していきます!

楽曲の概要

『エリーゼのために』の基本的な特は、以下の通りです。

  • 調:イ短調
  • 拍子:8分の3拍子
  • 楽曲形式:A-B-A-C-A-B-A-D-A-B-Aというロンド形式。
  • テンポ:Poco moto(ポコ・モート)の指示。直訳すると「少し+動き」。少し動きをつけて、といったところでしょうか。

『エリーゼのために』の難易度は?

では、『エリーゼのために』は、どのくらいの難易度なのでしょうか?

バイエルの巻末に収録されているテキストもあることから、バイエル終了程度で弾けると思われがちです。

しかしながら、実のところ、レベル的にはブルグミュラーを終了してソナチネ程度のテクニックは必要でしょう。

楽譜をなぞるだけならば低学年でも弾けるのかもしれませんが、小学校4、5年生くらいになってから、しっかりと音楽的にも聴かせる演奏ができた方が良いでしょう。

練習のポイントは?

有名なA-B-Aの部分はすんなり弾けても、その先のC及びDの部分でつまづくのがありがちなパターンです。

しかし、その部分こそベートーヴェンらしかったりするんですよね。

Cの部分。ここではヘ長調に転調しますが、がくんとテンポが遅くなりやすい箇所です。

そして、テンポが遅くなってしまうと、すごく重たく聞こえてしまいます。

テンポをよくするためにまずやるべきは、左手の十六分音符の動きを徹底練習。

まずはゆっくり、そして少しずつ速く、最終的には主題の十六分音符と同じ速さをキープできるようにしましょう。

そのベースの動きに、右手のメロディを乗せるようにしたいものです。

D部分での左手の同音連打は、低い位置でボールをドリブルするイメージで、手首を柔軟に使いましょう。

また、右手は和音を弾くことだけに気を取られるとメロディがぶつ切りになってしまうので、一番上の音だけを弾いてみて、メロディラインを確認するのもよいですね(その際、指使いは和音で弾く場合と同じ指使いで、フレーズを意識しつつ弾くこと)。

和音を一緒に弾いてもそのメロディラインが聴こえるように、心掛けましょう。

Eliseの"e"の音に思いを馳せて

イ短調の属音であるe音と、半音下の音が揺れ動き、両手のアルペッジョへと続く主題が特徴的。
――Wikipedia「エリーゼのために」より

上記はWIkipoediaの記述ですが、まさにそのとおり。

『エリーゼのために』と言えば思い浮かぶあのメロディでは、ミの音(ドイツ音名ではe)が形を変え、位置を変え、何度も何度も出てきます。

そのe音がエリーザベト(Elisabeth)あるいはエリーゼ(Elise)の頭文字を暗示しているようで、だからやっぱり、テレーゼじゃなくてエリーゼを想って響かせている、と思えてなりません。

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