アラベスク

ブルグミュラー「アラベスク」解説!難易度・解釈・演奏のコツ・練習方法

ブルグミュラー「アラベスク」の楽曲解説

今回は、ブルグミュラーの作品「アラベスク」に関する楽曲解説です。

ピアノを学ぶ人であれば多くの人が通る「ブルグミュラー25の練習曲」、その中でも「アラベスク」は特に人気が高い曲で、現代でも多くの人に演奏され親しまれています。

このページでは、「アラベスク」の楽曲の基本的な情報や難易度、曲想・解釈の方法、演奏のコツなどについてできるだけわかりやすく解説していきます。

ブルグミュラー「アラベスク」の楽曲解説の概要

まずは、ブルグミュラー「アラベスク」の楽曲解説の要点を簡単に確認しておきましょう。

拍子や楽曲形式などの基本的な部分や曲想・演奏法などの要点をおさえておくことで、その後の詳しい解説もより深く理解することができます。

アラベスクの楽曲の全体像は?構造・調・拍子・テンポなどの確認

ブルグミュラーの「アラベスク」は、ブルグミュラーの遺した曲集「ブルグミュラー25の練習曲」の2番目に掲載されている曲です。

以下に「アラベスク」の動画を載せておきますので、楽曲の確認用にご利用ください。

全体の構成としては、大きく3つの部分に分かれる「三部形式」という構造になっています。

三部形式とは、A-B-Aという3つの部分から成る楽曲形式です。

A-B-Aとは、はじめに提示されたメロディの後に、新たなメロディが展開され、また最初に提示されたメロディに戻ることを表しています。

また、アラベスクはA-B-Aの後に楽曲の締めとなる部分Coda(コーダ=終結部)が挿入されています。

したがって、全体の構造は、A-B-A-Codaという構成です。

続いて、楽曲の調についてですが、アラベスクには♯や♭などの調号がないため、ハ長調もしくはイ短調であると判断できます。

そして、楽曲の終わりの和音などから、楽曲の主調がイ短調であることがわかります。

また、拍子記号を確認しておきましょう。アラベスクの拍子は、2/4拍子です。

2/4拍子はあの有名なトルコ行進曲にも用いられている拍子で、行進曲やサンバなどによく見られます。

2/4拍子の楽曲はテンポが速いものが多いのも特徴です。

アラベスクも、楽譜にもよりますが130くらいで指定されており、比較的スピードの速い楽曲です。

アラベスクの楽語をチェック

ブルグミュラーの「アラベスク」には、覚えておきたい楽語がたくさん出てきます。

たとえば、楽曲の最初にドーンと提示されているのは"Allegro scherzando"という楽語です。

これは、「速く」を意味するAllegroと、「戯れるように、おどけて」といった意味のscherzandoが組み合わさったものです。

意味としては、「速くおどけた調子で」といったイメージでとらえるとよいでしょう。

以下は、「アラベスク」で使用されている楽語(イタリア語)をまとめたものです。

Allegro [アレグロ]
→速く

scherzando [スケルツァンド]
→戯れるように、おどけて

leggiero [レッジェーロ]
→軽く

cresc.(crescendo)[クレッシェンド]→だんだん強く

sf [スフォルツァンド]
→その音を特に強く

dimin.(diminuendo)[ディミヌエンド]→だんだん弱く

e [エ]
→そして

poco [ポコ]
→少し

rall.(rallentando)[ラレンタンド]→だんだん遅く

in tempo [イン・テンポ]
→一定の速度で

dolce [ドルチェ]
→甘く、優しく、柔らかく
※名詞では「甘いお菓子」の意味

risoluto [リゾルート]
→決然と

これらの楽語は、作曲者であるブルグミュラーさんが「こんな風に弾いてほしい」という思いをわざわざ楽譜に記載したものです。

演奏に際しては、ただ音符をなぞるだけでなく、これらのイメージを体現できるように練習していきましょう。

演奏のポイントは?

後半でより詳しく見ていきますが、アラベスクの解釈や演奏のポイントを先に簡単に確認しておきましょう。

演奏・解釈のポイント

○アラベスクは本来「アラビア風の」というイメージであり、唐草模様を表す
→右手と左手の複数の旋律が絡み合う感じを表現しよう。

●出だしの左手の和音は手首のスナップをうまく使い、軽やかに表現する。

●16分音符は拍の頭を強く鳴らすことを意識する
→左手は特に。部分練習も右手よりたくさんしよう。

●最後の和音は、正確に打鍵するために鍵盤に先に触れるよう意識づける

アラベスクの楽曲の概要などを確認したところで、この後はアラベスクの難易度や演奏のポイント、解釈するための前提知識などをより詳しく見ていきましょう!

アラベスクの難易度は?何歳から始める?

続いては、ブルグミュラー「アラベスク」の難易度や、演奏に適した年齢などを確認していきましょう。

アラベスクの難易度は初級後半~初中級くらい

数あるピアノ楽曲の中で、アラベスクの難易度はどのくらいに位置するのでしょうか?

英語圏のサイトで、アラベスクの難易度を調べると、トップに表示されるピアノ音楽情報サイトでは以下のように説明されています。

Today we’re going to have a look at Arabesque by Burgmuller, which is a grade 3 level etude (early intermediate). Since it’s an etude/study, it’s great for developing finger coordination for fast passages.
――PianoTV "Arabesque by Burgmuller: Piano Tutorial" より引用

【 日本語訳 】
今回は、グレード3レベルの練習曲(初中級)である、ブルグミュラーのアラベスクについて見ていきます。アラベスクは練習曲であるため、速いパッセージの運指の向上にとても適しています。

ここでは、アラベスクは初中級レベルであると説明されていますね。

諸説ありますが、ブルグミュラーはおおむね初級後半~初中級レベルと言われることが多いです。

バイエルなどの基礎的な教則本を終えたのちにブルグミュラーに移り、その後にソナチネアルバムなどのより発展的な教材を使用するのが一般的な流れです。

バイエルなどの基礎的な教則本と比較して、楽曲が旋律的で「曲」らしく、演奏していて楽しいのも特徴のひとつです。

何歳で弾くのか?小学校4・5・6年生くらいが一般的

では、ブルグミュラーは一般的には何歳で弾くことが多いのでしょうか?

この点に関しては、PTNA(全日本ピアノ指導者協会)が調査の結果をまとめているのでご紹介します。

下図は、2005年度ピティナ・ステップ参加者で、課題曲にブルグミュラー作品を選択した学年・人数のデータです。この表からみると、もっともブルグミュラーを弾いた人数が多いのは、小学校4,5,6年生です。小5では、3099人中801人、じつに4人に1人がブルグミュラーを課題曲に選んでいることがわかります。現代のレッスンの現場では、このあたりの層が厚いのですね。
――PTNA「みんなのブルグミュラー 連載:第05回 江崎光世先生公開講座」より引用

以上の調査から、熱心にピアノを学習している方で、だいたい小学校4~6年生くらい、年齢で言うと9~12歳くらいでブルグミュラーに取り組むケースが多いことがわかります。

もちろん、これらの年齢はピティナ・ステップに参加するような熱心なお子さんたちのデータですから、これより遅いからといって問題があるというわけではありません。

いくら早く進んでも、それに見合ったスキルや表現力が身についていなければ意味がありませんから。

その意味では、進度だけでなく、どれくらい練習した曲を弾きこなせるようになったか、という点にも目を向けていきたいですね!

アラベスクの演奏のコツと練習方法は?

ではいよいよ、ブルグミュラー「アラベスク」を演奏するためのコツについて、練習方法と共に見ていきましょう!

楽曲の前半から順を追ってポイントを説明していきます。

出だしが肝心!左手の和音をうまく弾くには?

アラベスクはまず、左手でイ短調の主和音、ラドミの和音をスタッカートで演奏するところから始まります。

ザッザッザッザ と気持ちをかき立てられる副旋律ですね。

和音を演奏するときに不必要な力が入っていると、和音にバラつきが出て重たい感じになってしまいます。

そこで、和音を調和させるために意識したいポイントは「手首のスナップ」です。

和音を演奏するときは、指先を鍵盤から離し過ぎず、ボールをドリブルするイメージで弾いてみてください。

きっと、指先を離して引いた場合と比べて音色が軽やかになっているはずですよ!

速い十六分音符の弾き方のコツは?

アラベスクでは、左手の和音に導かれて、右手の十六分音符のメロディーが始まります。

十六分音符は早いので、演奏するのにちょっとしたコツがいります。

ありがちなのが、全部の音をしっかり弾こうとしてしまうことです。

全ての音に気合を入れてしまうと、力んでしまいうまくいきません。

鳴らすのは拍の頭の音だけ、というイメージで弾くと良い力加減で演奏することができます。

例えば、最初のラシドシラ、ラシドレミだったら、「ラ」シドシ「ラ」、「ラ」シドレ「ミ」というように、「 」で示した音が拍の頭の音で、左手の和音と重なる音です。

間の音は力を抜いて軽く、「弾く」というよりも指を鍵盤に置いたまま重心移動します。

指を動かそうと思うと力んでしまうので、最初に弾いた音の勢いを利用して進むというイメージです。

ただ指を物理的に動かすだけではなく、それぞれの指から次の指へと重心が移り変わっているのを感じながら練習してみてください。

右手の十六分音符が加わっても、冒頭の左手の和音のテンポと変わらないように、一定に保ったまま弾きましょう。

両手を合わせようとするとテンポが遅くなってしまうという人は、まずは右手の拍の間の音を入れず、拍の頭の音だけ弾くことから始めましょう。

それから、テンポをキープしたまま徐々に間の音を入れてみましょう。

その時、間の音は軽く抜いて弾くというのを忘れずに。

中間部の左手の十六分音符の考え方

アラベスクの中間部(B)では、Aの部分で右手で弾いていた十六分音符のモチーフが左手にも登場します。

右手では弾けたけれども、ここで左手が動かず、ガクンとテンポが遅くなってしまうという人も少なくありません。

多くの人は右手より左手の方が自由に動かないものです。そのため、左手は右手以上に部分練習を行うようにしてください。

また、左手の十六分音符は、右手での演奏にも増して、「拍の頭の音を鳴らして間の音は抜く」ということを意識してみてください。

拍の頭の音だけ弾いて、右手でメロディを演奏するAの部分と同じテンポになっているかを確認し、整合性をはかるようにしましょう。

アラベスクの中間部がむずかしく感じられるのは、右手と左手の両方がメロディーとして絡んでいるからという点も大きな理由の1つです。

意識としては、左手の十六分音符の細かい動きに対し、右手の付点四分音符と八分音符という長いフレーズを対照的に聴かせることを心がけましょう。

鍵盤に先に触れてCoda(終結部)をカッコよく決めよう

アラベスクのCoda(コーダ:結びの部分)は、左手の和音、右手の十六分音符というモチーフを使い、右手はどんどん音域を上げていきます。

そして、一気に両手で低い音域をユニゾンで弾き、中音域に戻って両手で和音を弾いて終わる。

この音域を広範囲に行き来する感じや、最後に和音で派手に終わる感じがカタルシス(心がスッキリすること)なのではないでしょうか。

決まるとカッコイイですが、外しやすいのも最後の箇所です。

最後をしっかり決めるポイントは、次に移動する鍵盤の位置を先に目で確認しておくことです。

これはつまり、今弾いている箇所を見ていてはうまくいかないということを意味します。

そして、確認した行き先へ最短距離を最速で移動し、すぐ音を鳴らすのではなく鍵盤の上に指を乗せた状態で一瞬待つようにしましょう。

これを習慣づけることで、ブレずに狙った音を出しやすくなります。

アラベスクのイメージは?解釈のポイント

では、最後に「アラベスク」とはどのようなイメージなのか、意味を確認していきましょう。

アラベスクのイメージを確認しておくことで、きっと曲を解釈するときに役立つはずですよ!

アラベスクという言葉の意味するところは?

「アラベスク」と聞いて、何を思い浮かべますか?

「アラベスク」とは本来「アラビア風」という意味で、モスクの壁面などに見られる上下左右に連続する唐草模様を指します。

以下の画像のような模様です。

唐草模様の画像
画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:風呂敷_唐草模様.jpg

バレエのポースにも「アラベスク」というのがありますね。

音楽では、装飾的で幻想的な小曲のタイトルに使われています。

アラベスクは、唐草模様のイメージのように、右手と左手などの複数の旋律が交差しているような曲調のものが多いのが特徴です。

そして、「アラベスク」のタイトルで作曲したのはシューマンが最初だと言われています(op.18)。

シューマンのアラベスクの動画を以下に載せておきます。

また、ドビュッシーの「2つのアラベスク」も有名ですね。特に、第1番はCMなどで多用されているので、聞いたことのある人が多いと思います。こちらも動画を載せておきますね。

そんな中でも、特に小さい頃からピアノを習っている人が「アラベスク」と聞いて思い浮かべるのが、ブルグミュラーのアラベスクです。

ピアノの基礎ができたお子さんにとても人気の曲で、発表会などでもとても頻繁に演奏されています!

ブルグミュラーの「アラベスク」はどんなところが唐草模様なの?

先にも確認しましたが、「アラベスク」は唐草模様を意味する言葉です。

では、ブルグミュラーのアラベスクのどんなところに唐草模様が感じられるのでしょうか?

アラベスクには、ラシドシラという山形の音型、それに続くラシドレミという上行形が随所に散りばめられています。

そして、楽譜全体を眺めると、これらの十六分音符の形自体が唐草模様のように感じられてきます。

唐草模様の画像
画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:風呂敷_唐草模様.jpg

また、中間部では右手と左手のメロディーが絡み合っています。

この、右手と左手が織り成す複数の旋律の絡み合いが唐草模様のイメージを彷彿とさせます。

蛇足ですが、同じくブルグミュラー作曲で「トルコ風ロンド」(op.68-3)という曲があります。

こちらも左手がイ短調の主和音をスタッカートで連打するという出だしのせいか、「アラベスク」と似た雰囲気が感じられます。

「トルコ風ロンド」は「アラベスク」よりも難易度が高いですが、アラベスク同様おすすめの曲の1つです♪

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