ト調のメヌエット

ベートーヴェン「ト調のメヌエット」(ピアノソロ)の楽曲解説│難易度や奏法など

ベートーヴェン「ト調のメヌエット」イメージ画像

「ト調のメヌエット」は、古典派を代表する楽聖・ベートーヴェンによって作曲された楽曲です。(以下の曲です)

 

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このページでは、ト調のメヌエットとはどんな曲?というところから、楽曲の特徴や演奏のポイントなどについて解説していきます。

ベートーヴェン「ト調のメヌエット」ってどんな曲?

ベートーヴェンの「ト調のメヌエット」を演奏する上でまずおさえておきたいのは、この曲が元々はオーケストラのために書かれた楽曲であるということです。

ベートーヴェンは、弦楽などを含むオーケストラのために「ト調のメヌエット」を作曲しました。

ところが、元々のオーケストラ向けの楽譜は残っておらず、ピアノ用のアレンジ楽譜のみが現代に残った、と言われています。

そのため、ピアノ演奏だけでなく、弦楽による室内楽などでもよく演奏されています。

元々がオーケストラの楽曲であることもあり、弦楽による演奏も聴いておくことで、オリジナルのオーケストラ曲に近いイメージを持って演奏することができるでしょう。

以下に弦楽演奏のサンプル動画を貼っておきまので、参考にしてみてください。

そんな「ト調のメヌエット」は、現代でもピアノや弦楽など様々な場面で演奏され受け継がれている楽曲です。

誰もが一度は耳にしたことがある・・・聴いたことはあるけど曲名は意外と知られていない楽曲の代表的な存在でもあります。

なお、ベートーヴェンは元々「6つのメヌエット」として作曲しており、ハ長調・ト長調・変ホ長調・変ロ長調・ニ長調・ハ長調の6つのメヌエットがあります。

その中でも、現代でも特によく演奏されているのが、今回取り上げている「ト調のメヌエット」(WoO.10-2)なのです。

 

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ト調のメヌエットの楽曲の特徴は?

続いて、「ト調のメヌエット」の楽曲の特徴(拍子や楽曲形式など)について確認しておきましょう。

ト調のメヌエットの拍子は3/4拍子で、テンポ指定はありませんが、Allegretto(やや速く)の指定がある楽譜が多いようです(B)へと移り、その後再びAの部分が一度演奏されます。

楽曲の調はト長調で、調合は♯がひとつです。

楽曲形式は、A-A-B-Aで、有名な「シードレードレードレードレー・・・」の部分(A)が2度繰り返された後、Trioと呼ばれる中間部(B)へと移り、そのあと再びAが1度演奏されます。

Trioは、「声部が3つに分かれている楽曲」を表す場合もある言葉ですが、「メヌエット、スケルツォ、行進曲などの楽曲の中間部」を指す場合もあり、ト調のメヌエットにおいては後者を指します。

何度も繰り返されるAの部分と、TrioのBの部分は雰囲気も全然違い、求められる技術も異なるので、うまく弾き分けられるようになるまで練習を重ねましょう。

ト調のメヌエットの難易度・レベルは?

では、「ト調のメヌエット」の難易度・レベルはどのくらいであると考えられるのでしょうか?

ト調のメヌエットは、全音ピアノピースのレベル分けではBとされています。

このことから、そんなにむずかしい曲ではなく、一般的には初中級くらいのレベルの楽曲と認知されていることがわかります。

確かに、「ト調のメヌエット」は、ただ楽譜をなぞるだけであればそんなにむずかしくはないかもしれません。

ただ、3度と6度の重音が繰り返される部分は、きちんとメロディを際立たせて演奏することや、3:1のリズムをきちんとキープしたまま演奏することを考えると、きれいに演奏することは実はとてもむずかしいです。

よく初心者の方が「ト調のメヌエット」の演奏動画をアップしているのを見かけますが、3:1のリズムがキープできず、前のめりなテンポになってしまっている場合がほとんどです。

その意味で、ただ楽譜をなぞるだけであればむずかしくはないものの、リズムや強弱などを正確に&きれいに演奏しようとすると、ある程度の難易度がある曲、と考えられます。

ト調のメヌエットの楽曲解説&奏法のポイント

続いて、ト調のメヌエットはどんな楽曲で、どのように演奏すればいいのか、楽曲解説していきます。

Aパート前半

Aパートは、大きく分けると、「シードレードレードレードレ―・・・」から始まる前半部分と、「レソソーファーソーラー」から始まる前半部分に分けることができます。

Aの前半部分は、p(ピアノ)の指定があり、三度の重音が続くのが特徴です。

そして、それぞれの「シードレードレードレードレー」の部分と、「ソーラシーラシーラシーラシー」の部分、「ラソソファファラソミレ」の部分で、同じ三度の音が主役でありながら、求められる指使いが異なるのが特徴です。

三度の音は、2つの音のうち、高い音がメロディーを担当しています。

そのため、高い方の音を大きく、低い方の音を弱く弾く意識で、演奏することが必要不可欠です。

Aパート後半

続くAパートの後半は、「レソソファソラー」の部分でメゾフォルテでありながらクレッシェンドしていきますが、それに伴って高音と内声の距離が少しずつ広がっていくのが特徴です。

この部分は、ペダルを使っているとついつい「レソ ソッ ファッ ソッ ラー」とレガートではなく切れ切れのフレーズになってしまいがちです。

しかしながら、ペダルを使っていても、きちんとレガートで弾いているかどうかは聴いているとわかるので、きちんとフィンガーペダルでレガートをつくるようにしましょう。

「ミードシーラ」の部分は、完全につなげるのは難しいですが、ペダルをうまく使ってカバーしましょう。

「シーラ」の3・1→4・2の指使いは慣れていないと少しむずかしく、勢いがついてしまいやすいです。

ただ、シからラにかけて音が小さく落ち着いていく箇所でもあるので、きちんとラの音を抑えめに弾けるようにしましょう。

続く「ソーラシーラシーラシーラシー」の部分は、今度は三度ではなく、六度の重音がメインです。

さらに、黒鍵も絡んでくるので、音のバランスをキープするのも簡単ではありません。

ここも、高音と内声のうち、高い方の音をメロディーとして強調すること、3:1のリズムをキープすることを徹底するようにしましょう。

Bパート(Trio・中間部)の前半

続いては、Trio(中間部)です。

中間部は大きく分けて、「レド#レ シレ ソシレシ・・・」の前半部分と、「レド#レミドラ・・・」の後半部分に分けられます。

Trioの前半部分は、大きく分けてスラーがかかった部分と、スタッカートの部分とに分かれています。 長いスラーがあれば短いスラーもあり、さらに、スラーのすぐ後にスタッカートが現れる箇所もあるので、きちんとアーティキュレーションを覚えて弾き分けられるようになるまで反復して練習しましょう。

Trio(中間部)の後半

続くTrio(中間部)の後半は、クレッシェンドしたかと思ったらすぐにデクレッシェンドする、という恩恵が繰り返されるのが特徴です。

この部分は、短いフレーズの中でクレッシェンド&でクレッシェンドを繰り返すので、音がでこぼこしてしまいやすいのが特徴です。

短い間でも自然な強弱に聴こえるようなフレーズを奏でられるように練習しましょう。

Aパート(再)

中間部が終わると、再びAパートに戻ります。

最初のAパートとの違いは、繰り返しがないことです。

Trioの中間部が終わってほっとしたところで、重音の強弱や3:1のリズムが崩れてしまわないよう、最後まで集中して演奏するようにしましょう。

 

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ト調のメヌエットの練習方法

では最後に、ト調のメヌエットのつまずきやすい部分をピックアップして、効果的な練習方法について確認しておきましょう。

三度や六度の重音の練習

上の楽曲解説の部分でも触れましたが、ト調のメヌエットの特徴は、三度や六度の重音が繰り返し登場することです。

三度であれ六度であれ、共通して気をつけたいのは、2つの音のうち、高い方の音をきちんとメロディーとして強調することです。

もしこれが、高い音と低い音を同じような強さで演奏してしまうと、濁って重たい印象の演奏になってしまいます。

そのため、重音が主役のト調のメヌエットにおいては、重音のメロディ(高い音)を他の音ときちんと区別して弾けるかどうかが、最も重要な要素のひとつであると言えます。

三度や六度の音のメロディラインを強調するためのポイントは、重心を高い音の方(ピアノの右側)に傾けることです。

実は、2つ以上の音が重なるとき、複数の音に同じように手や指の体重をかけると、高い方の音だけ強く打鍵したつもりでも、複数の音の強さにあまり差が生まれません。

ところが、重心を右側に傾けて弾いてみると、うまくメロディーの部分だけ強調して演奏することが容易になるのです。

右側に重心をかけるためのポイントは、気持ち 右手を時計回りに傾けることです。

試しに右手を少しだけ時計回りに傾けて重音を弾いてみてください。なんとなく右側の指を強く打鍵しようと意識するだけの場合よりも、簡単に高い方の音を強く演奏できることがわかるはずです。

この時、いちばんむずかしいのは、小指がメロディーを演奏する場合です。

なぜなら、小指(や薬指)は、他の指よりも指の長さが短いからです。

なので、小指で重音のメロディーを弾くときは、「小指は特に指の長さが他の指よりも短い」ということを意識して、手の重心をより大きめに右側にかけるようにしましょう。

付点の3:1のリズム

ト調のメヌエットの演奏を聴いていて、最も差が出るもう一つの部分は、付点のリズムです。

「シードレードレードレードレー」や「ソーラシーラシーラシーラシー」などの部分は、付点がついていて、3:1のリズムになっています。

多くの人が、この3の長い部分のタメが少なく前のめりな演奏になってしまいます。

このようなリズムの乱れを防ぎ、正確なリズムで演奏するためのポイントは、小刻みに4分割したリズムをたたきながらゆっくり練習することです。

たとえば、「シードレードレードレードレー」の部分であれば、以下のようなイメージで、3:1のリズムを4拍に分けてたたいたり唱えたりしながら練習します。(タタタタは均等な4拍のリズムを表します)

シーード レーード レーード レーード
タタタタ タタタタ タタタタ タタタタ

以上のような練習で、3:1のリズムを体で覚えて自然にできるようになるまで反復して練習するようにしましょう。

ただ、これは楽曲の本来の拍子である3/4拍子よりさらに細かい単位であるため、いつまでもこのような細かなカウントをしていては音楽的な演奏はできません。

なので、3:1のリズムを身につけたら、本来の3/4拍子の拍を感じながらの練習に切り替えるように注意しましょう。

Trio(中間部)後半の強弱のつけ方

Trio(中間部)の後半は短い間にクレッシェンドとでクレッシェンドが交互に繰り返されます。

この箇所は、短い間に強弱をつけようとして、知らず知らずのうちに音の強弱がでこぼこになってしまいやすい部分でもあります。

そのため、自然に流れるような強弱がついているかどうか、意識してコントロールしてあげる必要があります。

音の強弱があっても自然に流れるようなフレーズになるようにするためのポイントは、当たり前のことかもしれませんが「耳」をよく使うことです。

ある音だけ急に強くなったり、反対にある音だけ急激に弱くなったり、音の流れが強弱の流れがいびつになってしまっていないか、最初はゆっくりと、よく聴きながら強弱をつける練習をしてみましょう。

また、録音してみることも、自然な強弱がついているかを確認するための有効な方法です。

演奏しながら聴いている時には自然に聴こえていても、録音して聴いてみると、意外と不自然だったりいびつだったりする場合に、よくわかります。

このようなクレッシェンド&デクレッシェンドの繰り返しに初めて出会った方は、余裕があれば自分の演奏を録音して、自然な強弱がつけられているかぜひチェックしてみてください。

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