このページでは、ソナチネ・アルバムになどで多くのピアノ学習者に親しまれている「ソナチネ第5番 ト長調」(atrrib.ベートーヴェン)について、わかりやすく解説していきます。(以下の曲です)
楽曲の構成や演奏のポイント、練習方法などについて、詳しく見ていきましょう!
ソナチネ第5番 ト長調はベートーヴェンの作品ではない?
古典派を代表する作曲家・ベートーヴェンは、生前に実にたくさんの作品を残してきました。
そんな膨大なベートーヴェン作品群を、作品集としてまとめたもののひとつが、ゲオルグ・キンスキーとハンス・ハルムという人物が作った、作品目録です。
キンスキー=ハルム作品目録には、「2つのソナチネ」という作品が収録されており、その2つのソナチネのひとつが、今回の「ソナチネ第5番 ト長調」という楽曲です。(もうひとつは、ヘ長調)
ベートーヴェンの作品目録に載っていることから、この2つのソナチネはベートーヴェン作であると伝統的には言われてきました。
しかしながら、現在では、ベートーヴェンの作風と特徴が一致しないため、ベートーヴェンの作品である可能性は高くないと考えられています。
作曲者がベートーヴェンかどうかは定かではありませんが、それでも日本のピアノ学習者に広く使用されている「ソナチネ・アルバム」にも掲載されており、たくさんの人に愛されている作品であると言えます。
ソナチネ第5番 ト長調の楽曲の形式は?
ソナチネに厳密な定義があるわけではありませんが、2~3程度の楽章から成る、ソナタと呼ぶほどの大曲ではない楽曲は、しばしば作曲家によってソナチネと名づけられてきました。
ソナチネ第5番 ト長調も同様で、2つの楽章から成る4分程度の小規模な楽曲です。それぞれの楽章の概要は以下の通りです。
どちらも、Aで最初のテーマが提示された後、Bという別のテーマが登場し、Bのすぐ後にAが再び登場します(BA)。
そして、BAが2回繰り返された後に、新たなCという部分が登場し、楽曲を締めくくります。
第1楽章と第2楽章の構成はほとんど同じですが、唯一の違いは、第2楽章の最初に出てくるAは2回繰り返されてからBに移る、という点です。
ソナチネ第5番 ト長調の難易度は?
ソナチネ第5番の難易度についてですが、演奏の技術的には、そこまでむずかしいものが要求されるわけではありません。
ブルグミュラー25の練習曲などと同レベルの表現技法で演奏できるレベルです。
ただ、楽曲の構成としては、ソナチネはソナタに準ずるものなので、楽章も2つにまたがり、通して弾くと少し長めです。
複数の楽章や部分(A B Cなど)から成り、全体の構成をどう展開していくのかが問われるという点では、ブルグミュラーなどの単一の楽章の曲と比べてむずかしい面もあると言えます。
ソナチネ第5番 ト長調の楽曲解説
楽曲の形式などについて理解したところで、いよいよソナチネ第5番 ト長調の楽曲をどのように解釈していけばよいのか、解説していきます。
楽曲の見方に必ずしも正解があるわけではありませんが、参考としてお読みいただければと思います。
第1楽章
第1楽章は、上で確認した通り、A-BA-BA-C という形式になっています。
まず、Aの部分についてですが、大きく分けて以下の5つの部分から成っています。
そして、Aの部分は、①・③・⑤という3つのテーマがあり、それぞれに②・④という経過句がはさまれていると考えてみてください。
そうすると、それぞれの部分を上手く弾き分けることができるはずです。
また、①・③・⑤の最後の音は、それぞれのフレーズの終止(Ⅰの和音に解決している)なので、次のフレーズへ移ろうとして反動で強くなってしまわないように気をつけ、きちんと終わった感じを出しましょう。
続くBの部分は、大きく分けて以下の5つの部分に分かれています。
①はラードシラシレド ラソファミレドシ、②はシーレドシドミレ シラソファミレドの部分を切り取って考えると、以下のような見方ができます。
それぞれをかたまりで見ると、①から②にかけてラ~ → シ~と音程が上がり、②から④にかけてシ~ → ラ~ → ソ~と音程が下がっていくことがわかります。
以上を踏まえると、①から②に向かって高くなり、②から④に向かって低くなっていくイメージを持って演奏すると、きちんと抑揚のある印象をつけることができます。(以下の画像のようなイメージです)
また、それぞれ①~④はそれぞれ ラソファミレドシ↓ ソファミレドシラ↓ と音程が下がっていくので、最後の語尾の音を抑えめにしたいところです。
ただ、①→②、②→③、③→④と移るときに少し跳躍するので、反動でフレーズの最後の音が大きくなってしまわないように注意を払い、きちんと語尾にフレーズの終止感を持たせるようにしましょう。
そして、最後の⑤レミファソ~ は、BとAをつなぐ経過的な部分なので、雰囲気を変えて抑えてに弾くと良いでしょう。
最後は、第1楽章を締めくくるCの部分です。似た形のフレーズが2回繰り返されるので、1回目と2回目を 強→弱 もしくは 弱→強 のように強弱をつけて演奏すると、同じ音型が繰り返されていることがよく伝わります。(本ページに掲載している動画では、2回目をエコーのように弱めに演奏しています)
第2楽章
まず、ソナチネ第5番 ト長調の第2楽章の特徴である、8分の6拍子の拍子感をきちんと感じられる演奏にすることがとても大切です。
8分の6拍子は、2拍子系の拍子です。2拍子の2つの拍が、それぞれ3つずつの八分音符のかたまりに分割されているイメージです。
8分の6拍子の2拍子感を出すためには、いくつかのポイントがあります。3つの八分音符の1つ目の特にバスを強みに弾いたり、ある程度の速めのスピードを保ったりすると良いでしょう。
第2楽章は、AA-BA-BA-C という形式です。
Aの部分は大きく分けて以下の3つの部分に分かれていると考えられます。
①は長調で明るい感じの和音であるのに対して、②は短調の和音になるので、性格が全然違います。
2つの音の響きの違いをきちんと感じて、雰囲気の違いを弾き分けるようにしましょう。
③は①と同じ系統ですが、①の倍の長さがあります。
さらに、ドーミソミドの部分は音程が高くなるので、Aの中で最もエネルギーが高い部分であることを感じながら演奏しましょう。
続くBの部分は、以下の4つの部分に分けて考えると良いでしょう。
①の箇所は、クレッシェンドになっています。最初から音量を上げすぎると漸増感が出しずらいので、最初の(ラ)ソファソを小さめに弾くことを心がけましょう。
②は、レレレシーソで人かたまりと考えられます。そしてそれが3回繰り返されます。
3回とも同じトーンで演奏してしまうと平坦な印象を与えてしまうので、強 → 弱 → 強のように変化をつけて演奏するのが一般的です。
③の部分は、ファミレ… → ラソファ… → ドシラ…と音程が上がり、エネルギーが高まっていくのをうまく表現できるようにしましょう。
③の最後のフェルマータは、伸ばすとはいえ、楽曲の最後を飾る重要な部分等ではなく、あくまで経過的な部分に過ぎないので、長くしすぎると不自然です。ちょうどよい長さを研究してみましょう。
④は、BからAへとつながる経過的な部分なので、ゆったりと軽めに演奏しましょう。
最後のCの部分は、ソナチネ第5番 ト長調の最後を飾る、フィナーレの部分です。
2回出てくる ラシド の装飾音を確実にきれいに決められるように繰り返し練習しましょう。
最後の ソーミレーシラーレ… という部分も、」同じ音型が2回繰り返されています。それぞれの強弱を変えて対比させる等、弾き分けて異なる印象にすることを意識しましょう。
ソナチネ第5番 ト長調の練習方法
では最後に、ソナチネ第5番ト長調を弾くために必要な技術の練習方法について確認しておきましょう。
装飾音について
第1楽章の最初の ソーシラソラシソ や、第2楽章のシドレソーソシラソラシーソの箇所のように、ソナチネ第5番には、たくさんの装飾音が登場します。
この装飾音をきれいに演奏するためには、指と腕の重心移動を意識することが重要です。
まず、装飾音と装飾音によって装飾される音の両方に、きちんと指をセットしておきます。
そして、装飾音から装飾される音に向かって指だけでなく腕の重心ごと移動するイメージを持って弾いてみてください。
この腕の重心移動になれれば、滑らかに演奏できるようになるはずです。
逆に、指だけをバタバタと動かしても、音を外してしまったり、きつい音になってしまったりするので注が必要です。
第1楽章のAの後半のスラーについて
第1楽章のAの部分の後半、ソレミドシレドララーソーの部分について。
この部分では、ソレ と ミド と シレ と ドラ にそれぞれスラーがついています。
なので、ソレミドシレドラとワンフレーズで弾くのではんばく、ソレ ミド シレ ドラ とそれぞれの部分に分かれている感じをきちんと出すようにしましょう。
このようなスラーの時には、2番目の音を短く切るというよりは、2番目の音の時に指の重みを抜いてあげるイメージで弾くと、フレーズの終わりが自然な感じになります。
8分の6拍子の伴奏について
第2楽章の最初の部分では、左手が ソ シレシレ → ファ# ドレドレ などの、8分の6拍子らしい伴奏が登場します。
このような伴奏の時には、最初の音を強く弾き、2・3番目の音を弱めに演奏します。
ただ、普通に演奏すると2・3番目の音も強くなってしまいがちなので、少しコツが必要です。
そのコツとは、1番目の音にしっかり重心をのせる意識を持つことです。左手を気持ち反時計回りに回した形で弾くと、重心が乗りやすいので試してみてください。
第2楽章のCの部分の装飾音について
第2楽章の後半、Cの部分、シドレラーララシドーシラ にも、装飾音が登場します。
この部分の装飾音は、他の装飾音が1つだけついている音より、さらにきれいに弾くのがむずかしい部分です。
ここも、きちんと最初の音から最後の音まで、指にのせた腕の重心がきちんと移動しているイメージを持って弾きましょう。
この時、装飾音の最初の音が抜けやすくなるので、きちんと先に鍵盤に指を触れておくようにしましょう。
イメージでは、ラシドの時に、右斜め下に力のベクトルが移っていくようなイメージで指を動かすと、きれいに入りやすくなります。
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