2020年6月11日に、日本を代表する作曲家である服部克久さんが亡くなられたという一報に驚き、ショックを受けた方も多いのではないでしょうか?私もその一人です。
服部克久さんはパリ国立高等音楽院修了後、帰国してからは創成期のテレビ放送に関わり、他にもラジオ番組、ドラマ、アニメ、映画の音楽など、数多く担当されています。
多い時には年間3000曲を手がけ、これまで書いたスコアは6万曲とか?!
フジテレビ「ミュージックフェア」やTBS「日本レコード大賞」にも携わっていらっしゃいました。
父である服部良一さんも「別れのブルース」「蘇州夜曲」「湖畔の宿」「東京ブギウギ」「青い山脈」などで有名な作曲家ですが、克久さん自身は流行歌よりもサウンドの追求に魅力を感じていたそうで、1983年からライフワークとなるオリジナルアルバム「音楽畑」シリーズをスタート。
また、プロのスタジオ・ミュージシャンによるオーケストラ「東京ポップスオーケストラ」を結成し、活動を行っています。
ここには書ききれないほど幅広く活躍された服部克久さん。
服部克久さんを偲び、絶対に聴いておきたいおすすめの曲を3つピックアップしてご紹介します。
ル・ローヌ(1986年作品)
まず最初にご紹介する服部克久さんのおすすめ曲は、「ル・ローヌ」です。
「音楽畑3」に収録されたピアノ+ストリングス編成の曲ですが、ピアノソロにアレンジされた楽譜もたくさん出版されています。
3分半ほどの長さで、ピアノアレンジはバイエル終了程度のテクニックがあれば弾けるくらいの難易度です。
「音楽畑オーサーズベストvol.1」(2004年リリース)、「音楽畑オーサーズベストプレミアム」(2014年リリース)にも収録されており、人気の代表作として、この選曲に異存はないと思います!
スイスの蒼き氷河に源を発するローヌの流れは、プロヴァンス地方を潤しながら中世の聖都アヴィニヨンを緩やかに流れ下り、その豊かな恵みを地中海に注ぐ。
ある時はおだやかに、ある時は陽光のきらめきをまき散らしながら、渓流となり、滝となって砕け散る様は、人の一生にも似て、美しくも又あわれ。
ライナーノーツには、以上のような記述がありますが、フランス留学時代に見た情景も投影されているのでしょうか。
そういえば、インタビューの中で、フランスの下宿先のおばあさんが言っていたという格言「tout passe, tout casse, tout lasse(すべて過ぎ去り、すべて壊れ、すべて流れ去る)」を挙げていましたが、そんな思いも込められているのかもしれません。
A-B-Aという典型的な三部形式の曲ですが、後半に転調して繰り返されるAメロでは一気に視点が上昇し、空から地上を俯瞰するような、そんな壮大さがあります。
いろいろな心配事、気になる事も、大きなスパンでとらえれば一瞬のこと。今、このような時期だからこそ聴きたい一曲です。
YouTubeには服部克久さん自身がピアノを演奏するル・ローヌがアップされています。
また、2019年にリリースされたばかりの「音楽畑22-Final?-」では、息子の服部隆之さんが編曲を担当し、孫にあたる服部百音さんがヴァイオリンで参加するという親子三世代の共演が新録音として収められています。
この親子三世代の共演も、YouTubeで聴くことができます。
「Final?」とハテナが付いていたのに、本当にファイナルになってしまったのが悲しい・・・。
アニメ《トム・ソーヤーの冒険》(1980年放映)オープニング主題歌&エンディング主題歌
毎週日曜日19:30~20:00に「世界名作劇場」として放映されていたアニメのシリーズです。
オープニング主題歌「誰よりも遠くへ」、エンディング主題歌「ぼくのミシシッピー」の作編曲が服部克久さんだったとは、後に知りました。
オープニングはカントリー&ウェスタンでいかにもアメリカン!なんですよ。元気が出ます。
そして、エンディングが特に好きでしたねぇ。しんみりとした曲調で、蒸気船を追いかけてミシシッピー川沿いを走り続けるトムとハックの映像と相まって、胸がぎゅーっとつかまれるんですよ。
元気ないたずらっ子というトムの一面をオープニングで表しているとしたら、エンディングではその中に秘めたトムのさみしさがにじみ出ているようで、本当にいい曲だなぁって思います。
また、歌詞がいいんですよ!どちらも山川啓介さんの作詞です。
この《トム・ソーヤーの冒険》は服部克久さんの初めて手がけたTVアニメ作品だそうで、そういう意味でも記念すべき作品です。
記念樹(1992年発表)
この作品について、取り上げるかどうか迷ったのですが・・・。「記念樹」という曲についても触れておきたいと思います。
フジテレビ《あっぱれさんま大先生》(明石家さんまを先生役として、子どもたちと繰り広げるトークバラエティ番組)のエンディングテーマとして流れていた合唱曲です。
ところが、小林亜星氏が、自分の作曲したブリヂストンタイヤのCMソング「どこまでも行こう」と酷似していて盗作であると訴え、それを服部さんが認めなかったことから裁判沙汰に。
一審では「盗作ではない」という判決だったものの、最高裁で「編曲権を侵害した」と認められ、最終的に著作権違法に当たるとされたのです。
確かに、比べてみると出だしの音の動きとかリズムは一緒だけど…個人的な見解は、「似てるかなぁ?」と疑問符。印象が違うし、言われてみればそうかもって程度です。
最高裁の判決を受けて、小林氏の要請により「記念樹」の公の場での歌唱・演奏は事実上不可能となっています。それまでは卒業式などでよく歌われていて、好きな曲だっただけにとても残念です。
服部克久さんのその他のおすすめの曲は?
あとは、代表曲としてTBS系ドキュメンタリー番組《新世界紀行》のテーマ曲「自由の大地」を挙げる人が多いかもしれませんね。
こちらも、「音楽畑オーサーズベストvol.2」や「音楽畑オーサーズベストプレミアム」に収録されています。
これからの時期だったら、「夏は緑」もぴったりです。
TBS系《ふるさと讃歌》メインテーマ曲だそうですが、NHK教育で放送されていた《ピアノでポップスを》の課題の一つが「夏は緑」だったので、こちらの印象が強いかもしれません。
服部克久さんは、5月中旬に公式ページで、
桜も散り、ゴールデンウィークも終わり、季節は雨のシーズンへと。
僕はこの頃になると、音楽畑9に収録されている「緑の詩(うた)」が脳内でプレイされるんですよね。
皆さんも古い音楽畑を掘り返して、聴いてみてください。
というメッセージを掲載されていたそうです。服部さんの脳内で繰り返し再生されていたこの曲も、服部さんを偲びつつ聴いてみたいと思います。
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