♯や♭などの変化記号記号は「変化記号」と呼ばれます。そして、変化記号は「調号」と「臨時記号」に分かれます。
【 調号 】
調号とは、ある調で継続的に表れる♯や♭などを、対象の音に毎回書き込むのではなく、楽譜の最初にまとめて書いた変化記号のことです。
【 臨時記号 】
臨時記号とは、一時的に音の高さを上下させるために用いられる変化記号のことで、音符の左横に隣接して書きます。
調号は、転調などで新たに明示されない限りは小節線(=五線を区切る縦線)を越えても効果が続くのに対して、臨時記号は、原則としてその記号から次の小節線までで効果が終わります。
前のページでは、変化記号と派生音について確認してきました。
そして、変化記号は使われる状況によって、さらに2種類の記号に分かれます。
その2種類の変化記号とは、「調号」と「臨時記号」と呼ばれるものです。
それぞれ、音の高さを上下させるという意味では効果は同じですが、楽譜上での役割が異なります。
ここからは、「調号」と「臨時記号」それぞれ意味と使い方の違いについて見ていきましょう。
調号とは?
調号とは、ある調で継続的に表れる♯や♭などを、対象の音に都度記載するのではなく、楽譜の最初にまとめて書いたもののことです。
このことを理解するために、まずは「調」について確認しておきましょう。
西洋音楽の楽曲や楽章などの音楽的なまとまりには、主役となる音があります。この、楽曲や楽章の主役となる音のことを、「主音」と呼びます。
また、西洋音楽では12種類の音が用いられることはすでに述べたとおりです。
しかしながら、楽曲や楽章では、全ての種類の音が均等に用いられるわけではなく、主音とよく調和する音を中心として曲が構成されます。
基本的には、主音と、主音と親和性の高い6つの音の合計7つの音がよく用いられ、それらを低い順に並べたものを「音階」と呼びます。
音階には、明るい雰囲気を持つ並びである「長音階」と、悲しい雰囲気を持つ並びである「短音階」の2種類があります。
そして、調とは、楽曲や楽章などの主音が何の音であり、長音階と短音階のどちらが用いられているのかを表す言葉です。
たとえば、「ハ長調」という調の、「ハ」は日本語音名で「ド」が主音であることをあらわし、また、「長」が長音階であることを表しています。
調とは何かを確認したところで、いよいよ調号に話を戻します。
各調の音階には、変化記号のつかない幹音だけでなく、♯や♭などの変化記号のついた音が含まれることがあります。
そして、各調ごとに継続して用いられる変化記号のことを「調号」と呼びます。
調号の具体例として、「ト長調」の例を見てみましょう。ト長調は、ソを主音とする長音階がその音楽の中心であることを表します。
ソから長音階の並びである「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」ずつ進んでいくと、ト長調の音階は「ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ」という並びになります。図でも確認しておきましょう。
※青い◡は全音を、赤い◡は半音を表す。
ここで注目すべきは、ト長調の音階では、ファに♯(=半音上げる)がついていることです。つまり、ト長調の音楽では、特に指定がない限り、ファの音は半音上げたものを終始使用するのです。
このように、ある調の中の特定の音に継続的につく変化記号(=♯や♭)のことを、「調号」と呼びます。
ところで、ファの音が登場するたびに毎回♯を楽譜に書き込んでいては、たいへん手間がかかります。また、変化記号だらけで見た目もイマイチです。
このような事態を避けるために、ある調に継続的に表れる変化記号(=調号)は、楽譜の始めにまとめて記載されます。
たとえば、次の画像の♯は、調号です。調号はこのように、楽譜の左側、音部記号(=ト音記号・ヘ音記号など)の右側に書かれます。
今回はト長調の例を確認しましたが、調号の種類や数は、調の種類によって異なることも合わせておさえておきましょう。
臨時記号とは?
もう1つの変化記号は、「臨時記号」です。
臨時記号は、その名の通り一時的に音の高さを上下させるために用いられるものです。
そのため、「臨時記号」は、継続的な音の変化を示す「調号」とは区別されます。
さらに詳しく説明すると、「臨時記号」とは、調の音階(=7つの主要な音を並べたもの)に含まれない音に、一時的につける♯や♭、♮などの記号ことです。
臨時記号を書くときは、音の高さを上下させる音符の左横に書き込みます。
つまり、「調号」は調の持つ音階次第で継続的に音の高さを変化させるために用いるのに対して、「臨時記号」は一時的に音の高さを上下させるために用いられる変化記号であるということです。
調号・臨時記号の五線上の位置と音の高さの関係
ところで、調号と臨時記号は、それぞれ五線上の置かれる場所によって、どの音の高さを変化させるのかが異なります。
調号・臨時記号が変化させる音の高さと、五線との位置関係を理解しておきましょう。
♯の位置と音の高さ
まず、♯の場合は、五線の線または間のうち、上の線と下の線にはさまれた空間のある個所の音の高さが上がります。画像で確認してみましょう。
画像の、上の♯の2つの線の空間が一番上の線の上にあります(青い矢印)。したがって、一番上の線上の音が半音上がります。
同様に、下の♯は2つの線の空間が上から二番目の間の上にあります(赤い矢印)。したがって、二番目の間上の音が半音上がります。
♭の位置と音の高さ
では、♭の場合はどうでしょうか。
♭の場合は、五線の線または間のうち、右に弧を描いた部分(⊃のような形の部分)のある個所の音が下がります。これも画像で確認してみましょう。
画像の、上の♭の右に弧を描いた部分は、一番上の間のところにあります(青い矢印)。したがって、一番上の間上の音が半音下がります。
同様に、下の♭は右に弧を描いた部分が真ん中の線上にあります(赤い矢印)。したがって、真ん中の線上の音が半音下がります。
♮の場合
では、♮の場合はどうでしょうか。
♮は想像がつきやすいと思いますが、五線の線または間のうち、真ん中の□に囲まれた箇所の音の高さを元に戻します。以下の画像を見てください。
3番目の音に♮がついていますが、♮の□は一番上の線のところにあります。したがって、一番上の線上の音の高さが元に戻ります。
この時、4番目の音は♮のついた音とは別の音であるため、3番目の音と違って元の高さの音には戻りません。
調号と臨時記号の違いを楽譜上で確認する
調号と臨時記号の意味や五線と記号の高さの関係を確認したところで、続いてはそれぞれの違いを実際の楽譜上のフレーズで見ていきましょう。
以下は、調号と臨時記号が含まれた楽譜の例です。
まず、4/4という記号(=拍子記号)の左側に書かれた♯がありますね。
この音部記号のすぐ横に書かれた変化記号が、調号です。
画像のように、調号は音符が書かれる以前の、最初の部分で提示されます。
今回の調号の♯は、一番上の線上の「ファ」の音を半音上げています。
そのため、基本的に♮が書かれていなければ、ファの音は半音上げたファ♯の音を用います。
したがって、今回は図の②の音がファではなくファ♯になります。
続いて、④の音には変化記号の♮がついています。
♮は、上下させた音の高さを元に戻す記号でしたね。
この時の♮は、調号ではなく音符の横についているため、臨時記号です。
そして、④の音にはナチュラルがついているので、調号で半音上がったファ♯が元に戻り、ファの音になります。
同様に、⑥の音は、レに変化記号の♯がついています。
⑥の音も音符の横についているので変化記号であり、レが半音上がったレ♯になります。
調号と臨時記号の効果の及ぶ範囲
調号と臨時記号の違いを実例で確認しましたが、もう1点おさえておきたいポイントがあります。
それは、調号と臨時記号、それぞれの効力が及ぶ範囲です。
同じ変化記号でも、それぞれ効果のある範囲が異なるため、違いを理解しておきましょう。
調号が有効な範囲
まず、調号の範囲は、途中で転調するなどして新たな調号が明示されない限り、基本的に楽曲全体に及びます。
これはつまり、小節(=縦線で区切られたエリア)が変わっても、調号の効力は有効であるということです。
そして、調号が途中で変わる場合には、以下のような形で新たな調号が示されます。
臨時記号が有効な範囲
では、臨時記号の効果はどこまで及ぶのでしょうか?
臨時記号の有効範囲は、臨時記号のついた音からその小節の終わりまでです。
小節とは、五線の途中に区切りとして入っている縦線のことです。
臨時記号の範囲を、以下の画像で確認してみましょう。
図からわかるように、臨時記号がついた音からその効果が始まり、小節線で区切られた箇所で効果が終わります。
この図の例で言えば、♯のついたドの音は半音上がったド♯の音ですが、次の小節の音には効果が及ばないため、次のドはド♯ではなくドに戻ります。
以上のように、調号と臨時記号は、その役割だけでなく効果が及ぶ範囲にも違いがありますので、きちんとおさえておきましょう!
●五線の縦軸から横軸へ
楽譜とは何か?楽譜の2つの構成要素と最も基本的なルールについてのページでも説明しましたが、五線の縦軸は音の高さ、五線の横軸は時間経過を表します。
そして、ここまでのページで、五線の縦軸=音の高さについて順番に説明してきましたが、次のページからは、いよいよ五線の横軸=時間の経過に関するトピックを扱っていきます。
まずは、音や休止の長さを表す「音符」と「休符」の基本系の種類についてです!
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