調は全部で30種類、同音異名(調の名前は違っても音階が同じ音で構成される)の調を除いても24種類もあります。
それぞれの調には、関係が近く転調しやすいもの、逆に関係が遠いものなどがあり、それぞれの関係性は異なります。
そして、ある調と別の調との関係性には、いくつかの名称がつけられています。
たとえば、関係の近い調同士のことを近親調、または、関係調と呼びます。そして、近親調にはさらに細かい分類が存在します。
このページでは、調の相互関係を表す言葉(近親調・遠隔調・平行調・同主調・属調・下属調)について、1つずつ解説していきます。
調の関係性を知り、転調や移調などにも対応できる知識を身につけましょう。
なお、調に関する詳しい説明は、以下のページをご参照ください。
調の相互関係の全体図
まず、調の相互関係の全体像について、図で確認しておきましょう。
ある調とその他の調との関係を見たときに、着目したある調のことを「主調」と言います。
そして、主調と関係の近い調を「近親調」、それ以外の主調と関係の遠い調を「遠隔調」と言います。
近親調には、主に「平行調」「同主調」「属調」「下属調」の4種類があります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう!
近親調とは?平行調・同主調/属調・下属調の総称
音楽の「調」は、20種類以上あります。これらの調のうち、ある調に注目した時に、その調のことを「主調」と呼びます。
そして、調はそれぞれ固有の音階を持ちますが、主調の持つ音階と共通の音が多い音階を持つ調のことを主調に対する「近親調」と呼びます。
※音階とは、ド~シ(♯や♭がついたものを含む)の12種類の音のうち、主音(=楽曲のメインとなる音)と関係の深いいくつかの音を並べたもの。
近親調は、具体的には「平行調」「同主調」「属調」「下属調」の4つを指します。
これは、狭義の近親調です。これら4つの調については、次節以降で確認していきましょう。
楽曲の途中で、ある調から別の調へと移行することを「転調」といいますが、多くの場合、転調は近親調の範囲内で行われます。
また、近親調には、上の狭義の近親調に限らない、広義の近親調と呼ばれるものがあります。
広義の近親調は、狭義の近親調に「属調の同主調=同主調の属調」「属調の平行調=平行調の属調」「同主調の下属調=下属調の同主調」「平行調の下属調=下属調の平行調」の4つを加えたものです。
平行調とは?
調の中には、異なる調でありながらも音階に含まれる音の種類が全く同じものがあります。
このような、ある調(=主調)と同じ構成音の音階を持つ調のことを、「平行調」と呼びます。
たとえば、ハ長調の音階は「ドレミファソラシ」という♯や♭のつかない音で構成されますが、イ短調も同様に「ラシドレミファソ」という音からなります。
それぞれの調に含まれる音は全く同じであるため、ハ長調とイ短調は平行調という関係にあります
同様に、ト長調は「ソラシドレミファ♯」という音階であるのに対して、ホ短調は「ミファ♯ソラシドレ」という音階です。
これらも同じ音で構成されているので平行調です。
以下に、平行調の関係にある調をまとめておきます。
- ト長調 と イ短調(調号なし)
- ト長調 と ホ短調(♯が1つ)
- ニ長調 と ハ短調(♯が2つ)
- イ長調 と 嬰へ短調(♯が3つ)
- ホ長調 と 嬰ハ短調(♯が4つ)
- ロ長調 と 嬰ト短調(♯が5つ)
- 嬰へ長調 と 嬰ニ短調(♯が6つ)
- 嬰ハ長調 と 嬰イ短調(♯が7つ)
- へ長調 と ニ短調(♭が1つ)
- 変ロ長調 と ト短調(♭が2つ)
- 変ホ長調 と ハ短調(♭が3つ)
- 変イ長調 と ヘ短調(♭が4つ)
- 変ニ長調 と 変ロ短調(♭が5つ)
- 変ト長調 と 変ホ短調(♭が6つ)
- 変ハ長調 と 変イ短調(♭が7つ)
同主調とは?
ハ長調とハ短調は、調が持つ音階が長音階か短音階かという違いこそありますが、同じ「ド」という主音を持つ調です。
このように、主音が同じである長調と短調の関係を、「同主調」と呼びます。
同主調の特徴は、主音だけでなく、音階の中で主要な役割を果たす属音や下属音も共通であるということです。
加えて、短音階が和声短音階や旋律短音階になれば、導音も同じ音になります。
以下に、同主調の関係にある調をまとめておきます。
- ハ長調 と ハ短調
- ニ長調 と ニ短調
- ホ長調 と ホ短調
- へ長調 と へ短調
- ト長調 と ト短調
- イ長調 と イ短調
- ロ長調 と ロ短調
- 嬰ト長調 と 嬰ト短調
- 変ホ長調 と 変ホ短調
- 嬰へ長調 と 嬰へ短調
- 変イ長調 と 変イ短調
- 変ロ長調 と 変ロ短調
属調とは?
続いては、属調についてです。ある調(=主調)の主音に対する属音を主音とする同じ種類の調(長調か短調かが一致している)のことを、「属調」と呼びます。
たとえば、「ド」を主音とした場合、属音は「ソ」です。
この時、ドを主音とするハ長調に対して、その属音であるソを主音とするト長調は、属調という関係にあります。(ト短調は、長調と短調の違いがあるため、属調ではありません)
同様に、「シ」を主音とした場合、属音は「ファ♯」です。
この時、シを主音とするロ短調に対して、その属音であるファ♯を主音とする嬰へ短調は、属調という関係にあります。(嬰へ長調は、長調と短調の違いがあるため、属調ではありません)
属音は、主音から半音7つ分高い方に進んだ音です。
つまり、主音から半音7つ分上行した音を主音とすれば、その調は属調になります。
以下に、主調と属調の関係にある調をまとめておきます。
- 変ハ長調 の属調は 変ト長調
- 変ト長調 の属調は 変ニ長調
- 変ニ長調 の属調は 変イ長調
- 変イ長調 の属調は 変ホ長調
- 変ホ長調 の属調は 変ロ長調
- 変ロ長調 の属調は へ長調
- へ長調 の属調は ハ長調
- ハ長調 の属調は ト長調
- ト長調 の属調は ニ長調
- ニ長調 の属調は イ長調
- イ長調 の属調は ホ長調
- ホ長調 の属調は ロ長調
- ロ長調 の属調は 嬰ト長調
- 嬰ト長調 の属調は 嬰ハ長調
- 変イ短調 の属調は 変ホ短調
- 変ホ短調 の属調は 変ロ短調
- 変ロ短調 の属調は へ短調
- へ短調 の属調は ハ短調
- ハ短調 の属調は ト短調
- ト短調 の属調は ニ短調
- ニ短調 の属調は イ短調
- イ短調 の属調は ホ短調
- ホ短調 の属調は ロ短調
- ロ短調 の属調は 嬰へ短調
- 嬰へ短調 の属調は 嬰ハ短調
- 嬰ハ短調 の属調は 嬰ト短調
- 嬰ト短調 の属調は 嬰ニ短調
- 嬰ニ短調 の属調は 嬰イ短調
下属調とは?
続いては、下属調についてです。ある調(=主調)の主音に対する下属音を主音とする同じ種類の調(長調か短調かが一致している)のことを、「下属調」と呼びます。
たとえば、「ド」を主音とした場合、下属音は「ファ」です。
この時、ドを主音とするハ長調に対して、その下属音であるハを主音とするへ長調は、下属調という関係にあります。(へ短調は、長調と短調の違いがあるため、下属調ではありません)
同様に、「ファ」を主音とした場合、下属音は「シ♭」です。
この時、ファを主音とするへ短調に対して、その下属音であるシ♭を主音とする変ロ短調は、下属調という関係にあります。(変ロ長調は、長調と短調の違いがあるため、下属調ではありません)
下属音は、主音から半音7つ分低い方に進んだ音です。
つまり、主音から半音7つ分下行した音を主音とすれば、その調は下属調になります。
以下に、主調と下属調の関係にある調をまとめておきます。
- 変ト長調 の下属調は 変ハ長調
- 変ニ長調 の下属調は 変ト長調
- 変イ長調 の下属調は 変ニ長調
- 変ホ長調 の下属調は 変イ長調
- 変ロ長調 の属調は 変ホ長調
- へ長調 の下属調は 変ロ長調
- ハ長調 の下属調は へ長調
- ト長調 の下属調は ハ長調
- ニ長調 の下属調は ト長調
- イ長調 の下属調は ニ長調
- ホ長調 の下属調は イ長調
- ロ長調 の下属調は ホ長調
- 嬰ト長調 の下属調は ロ長調
- 嬰ハ長調 の下属調は 嬰ト長調
- 変ホ短調 の下属調は 変イ短調
- 変ロ短調 の下属調は 変ホ短調
- へ短調 の下属調は 変ロ短調
- ハ短調 の下属調は へ短調
- ト短調 の下属調は ハ短調
- ニ短調 の下属調は ト短調
- イ短調 の下属調は ニ短調
- ホ短調 の下属調は イ短調
- ロ短調 の下属調は ホ短調
- 嬰へ短調 の下属調は ロ短調
- 嬰ハ短調 の下属調は 嬰へ短調
- 嬰ト短調 の下属調は 嬰ハ短調
- 嬰ニ短調 の下属調は 嬰ト短調
- 嬰イ短調 の下属調は 嬰ニ短調
遠隔調とは?
最後に、遠隔調について確認しておきましょう。
一般的に、主調と近親調の関係にある調以外の調のことを、「遠隔調」と呼びます。
遠隔調はたくさんあるため、主調との距離が遠くないものもあれば、非常に遠いものもあります。
そのため、近親調に準ずるような調もあれば、主調と全く関係のない調もあるのです。
五度圏とは?属調と下属調の確認ツール
上の 属調とは? 下属調とは? の箇所では、属調や下属調の意味や、主調と属調・下属調の関係にある調の一覧を確認してきました。
しかしながら、この関係を全部おぼえるのは、とても大変です。
そこで、「五度圏」と呼ばれる、属調と下属調の関係にある調同士を確認するためのツールをご紹介します。
五度圏とは、以下のような各調の属調・下属調の関係を図でわかりやすく示したものです。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Godoken.png
五度圏には、各調が属調・下属調ととなり合うようにと並べられています。
五度圏は、主調から見て右側に属調、左側に下属調という配置になっています。この図では、外側に長調、内側に短調が配置されています。
たとえば、ニ長調を見ると、右側にあるイ長調が属調、左側にあるト長調が下属調であることがわかります。
同様に、ハ短調を見ると、右側にあるト短調が属調、左側にあるヘ短調が下属調であることがわかります。
ぜひ五度圏の見方をおさえて、調同士の関係を確認できるようにしておきましょう。
なぜ調の関係性を理解する必要があるのか?
まとめとして、それぞれの調の関係性を知っておくことの意義について触れておきたいと思います。
たとえば、前半でも述べましたが、多くの場合、転調は近親調同士で行われます。
そのため、調同士の関係を知っておけば、転調した時に何の調から何の調に移ったのかを素早く把握することができます。
また、作曲などの場面でも、主調から親和性の高い調へ転調させる、といったことがスムーズに行えるようになります。
ただ楽譜を見て演奏するだけであれば、調同士の関係を知らなくてもできなくはありません。
しかしながら、それぞれの調の関係を理解しておくことで、解釈や表現の豊かさが生まれるのは間違いないでしょう。
ぜひ、それぞれの調の関係性を理解して、転調や移調などのテクニックを使いこなせるようになってください!
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