【 ギャラント様式 】
ギャラント様式(英:Galant Style)とは、明るくて明快な、バロックの伝統に縛られないホモフォニー(主旋律とそれ以外から成る複数声部の音楽のこと)による音楽様式のことである。
バロック後期~古典派初期頃にフランスで見られた様式であり、代表的な作曲家としては、ヨハン・クリスティアン・バッハなどが挙げられる。
【 多感様式 】
多感様式とは、緻密なニュアンスもしくは濃淡や様々な感情の表現に重きが置かれる、1楽章内で次々と変化の現れる音楽の様式である。
バロック後期~古典派初期頃にドイツで発展した様式であり代表的な作曲家としては、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハが挙げられる。
このページでは、「ギャラント様式」と「多感様式」のいみや代表的な作曲家、そして、2つの違いなどについて解説していきます。
ギャラント様式とは?
ギャラント様式について理解を深めるために、まずはギャラント様式の意味を確認し、その後に代表的な作曲家について見ていきましょう。
ギャラント様式はバロック後期のフランスで発展した音楽様式
ギャラントという言葉はもともとフランス語であり、英語で言うところの”good taste”です。
これを日本語に訳すと、「センスの良い・洗練された」といった意味を表します。
ギャラント様式は、ルイ14世を彷彿とさせる精緻で重々しく華美で規則的な楽式です。
そして、ギャラント様式には随所に装飾が施されているにもかかわらず、全体としてつり合いの取れた形であることが特徴です。
ギャラント様式の音楽が目指したものは、応用美術や建築におけるピクチャレスク(絵画という観点から事象をとらえる方法)が追及したものと同じであり、音楽は自然の秩序に則りながらも、芸術による装飾がほどこされます。
また、ギャラントという言葉は、「現代的な・最新の・流行の18世紀の最先端の」といったニュアンスを表すために用いられていました。
何と対比して最新だったかと言えば、ギャラント様式の前に全盛であったバロック音楽に対してです。
バロック音楽は発展するとともに、その複雑さを増していきました。
そして、バロック音楽の複雑なポリフォニー(多声音楽)に対する新たな音楽の形として、ギャラント様式は発展したのです。
ギャラント様式の特徴として、アルベルティ・バスの使用やカンタービレのメロディ、規則的な楽句構成、などがあげられます。
また、ギャラント様式の作曲家たちは、下属音のハーモニーを強調することを好み、多くの場合、主和音に下属和音を重ねる形式が採られました。
そして、音楽の流れにおいて重要な休止を明確に示すために、半終止も頻繁に用いられました。
さらに、ギャラント様式においては、作曲家たちの間で増六の和音の使用が広まっていきました。
一方で、バロック時代までに見られたポリフォニー(対位法・複数の主要な声部を持つ音楽)は、ギャラント様式においては使用されませんでした。
その代わりに、ギャラント様式においてはホモフォニー(メインとなる声部と伴奏の声部に分かれる多声音楽)の形式が用いられました。
最後に、楽式については、ギャラント様式の作曲家たちによって三部形式の協奏曲と、比較的新たなジャンルである鍵盤ソナタと交響曲が発展しました。
ここまで見てきたギャラント様式の特徴をまとめると、以下のようになります。
・アルベルティ・バスの使用
・カンタービレのメロディ
・規則的な楽句構成
・下属和音が強調されることが多い
・半終止がしばしば用いられる
・ホモフォニー形式の採用
・三部形式の協奏曲、鍵盤ソナタ、交響曲の発展
ギャラント様式を代表する作曲家としては、ヨハン・クリスティアン・バッハの他、バルダッサーレ・ガルッピ、ジョヴァンニ・マルコ・ルティーニなどが名を連ねています。
ギャラント様式の作曲家|ヨハン・クリスティアン・バッハ
ギャラント様式の作曲家として有名なのが、J.S.バッハの子どもである、ヨハン・クリスティアン・バッハです。
たとえば、ヨハン・クリスティアン・バッハの”Sonata Op.5 No.2”には終止が見られますが、テーマの反復を妨げないように練られています。
この終止の存在感の大きさが、ギャラント様式の形式であることの強い証左であると言えます。
楽曲の展開は、まず、協奏曲でのオーケストラの前奏にはじまり、両手で和音が繰り返されます。そのすぐ後に、ギャラント様式の特徴であるホモフォニーに移行し、右手の和音による装飾が低音部のメロディによって支えられます。
このような二元構造の効果により、展開部がより強く印象づけられています。
また、メロディーのパートは、新たなテーマを提示することで自由な幻想曲的側面を強調しています。
ヨハン・クリスティアン・バッハは、再現部において新たな旋律のテーマを提示することを楽しんでいたように思えます。
多感様式とは?
続いては、「多感様式」についてです。
多感様式とは具体的にどのような意味を表す言葉かを見た後に、多感様式の代表的な作曲家についてご紹介します。
多感様式はバロック後期のドイツで発展した音楽様式
多感様式は、もともとは"Empfindsamer Stil"というドイツ語の言葉です。
英語では、"Sensitive Style"と訳されることが多いです。直訳すると、「感情豊かな様式」といった意味ですが、歴史的に「多感様式」と訳されるようになりました。
多感様式とは、具体的には、緻密なニュアンスもしくは濃淡や様々な感情の表現に重きが置かれる、1楽章内で次々と変化の現れる音楽の様式のことを指します。
このような変化を持たせるために、各フレーズの長さは短くなる傾向にあります。
多感様式とカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
多感様式を代表する作曲家と言えば、J.S.バッハの子どもの1人である「カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ」です。
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作品には、多感様式の様相が色濃く出ています。
エマヌエル・バッハは、一連の楽曲の中でたくさんの異なった様相の感情をもたらすいくつかの作品で、多感様式をその極致へと高めました。
また、エマヌエル・バッハは、バロック時代の鍵盤楽器であるクラヴィコードを特に好んでいたと言われていますが、多感様式は、そのクラヴィコードの音色と相性が良かったとされています。
ところで、多感様式の作曲家たちは、歌うような表現様式を追求していました。
エマヌエル・バッハは、「人間の声こそがすべての種類の音楽創作の模範であり、過度な装飾をほどこさなくても常に純粋な美しさが存在感を持つものである」と述べています。
エマヌエル・バッハの声楽的性質へのこだわりは、彼のソナタや幻想曲が叙唱的な部分を含んでいることからも読み取ることができます。
ギャラント様式と多感様式の違いは?
最後に、ギャラント様式と多感様式の違いについて見ておきましょう。
ギャラント様式とは、明るくて明快な、バロックの伝統に縛られないホモフォニー(主旋律とそれ以外から成る複数声部の音楽のこと)による音楽様式のことです。
一方で、多感様式とは、緻密なニュアンスもしくは濃淡や様々な感情の表現に重きが置かれる、1楽章内で次々と変化の現れる音楽の様式をさします。
多感様式は、バロック時代のポリフォニック(多声音楽的な)な楽曲からホモフォニック(和声的な)な楽曲への移り変わりというギャラント様式の影響を受けて発展しました。
ギャラント様式と多感様式は、ほぼ同様のものとして扱われることが少なくありません。
ギャラント様式と多感様式の最も大きな違いを挙げるとすれば、ギャラント様式がフランスで発展し普及したものであるのに対して、多感様式はドイツで発展したという点でしょう。
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