やさしい花

ブルグミュラー「やさしい花」を解説!解釈・弾き方のコツ・練習方法

ブルグミュラー「やさしい花」楽曲解説イメージ画像

このページは、ブルグミュラー25の練習曲の「やさしい花」に関する楽曲解説です。

楽曲の特徴や解釈のポイント、弾き方のコツ、練習方法などについて詳しく見ていきましょう!

 

ブルグミュラー「やさしい花」の概要を解説

「やさしい花」は、ブルグミュラー25の練習曲の10番目に掲載されている曲です。

原題は「Tendre fleur」です。「Tendre」には「やわらかい」「やさしい」という意味があります。

英語だと「tender」になりますね。「憐みぶかい」「献身的な」「扱いに注意を要する」「敏感な」「傷つきやすい」といったニュアンスもある言葉です。

拍子は4分の4拍子、調はニ長調。テンポ表示は「Moderato」です。

「無邪気」「優美」もModeratoでしたね。この曲も女性的な感じがします。

楽曲の形式は、オーソドックスなA-B-Aの三部形式です。

ブルグミュラー25の練習曲の前の曲「狩り」で曲が長かった分、「やさしい花」では曲が短くなったことで少し負担を軽くなったと思いきや、とんでもありません。

以下のようなポイントに気をつけて演奏する必要があります。

【 学習のポイント 】
・アーティキュレーション
・5~8小節目及び21~24小節目の対位法的な動き
・装飾音の弾き方

「やさしい花」は、題名の通り細やかな表現が求められる曲なのです。

「やさしい花」の参考動画を以下に貼っておきますので、イメージをつかみたい方はぜひご参照ください!

 

「やさしい花」をどう解釈する?

続いて、「やさしい花」をどのように解釈したらいいのでしょうか?楽曲の背景について考察していきましょう。

まず、1~8小節と17~24小節のAの部分。ここはソプラノとアルトの部分に分かれていると考えられます。

まるで、風と花がたわむれているかのようです。

9小節目からは、右手と左手が対話をしているようなイメージです。

ここでは、右手と左手を主旋律と副旋律のように分けて弾くのではなく、対等な2つのメロディを弾く気持ちで演奏します。

花と花が対話している、もしくは花と風がお話しているような情景を思い浮かべましょう。

その後に現れる装飾音の部分は、花が風に揺られているような情景が浮かんできますね。

ところで、この曲は左手に対して右手の動く範囲が広いのが特徴です。

近づいたと思ったら遠ざかる、遠ざかったと思ったら寄り添う…。

目を離したらどこかに行ってしまいそうな、そんな儚げな花=女性を暗示しているのかもしれませんね。

「やさしい花」の弾き方のコツ・練習方法は?

楽曲の概要や解釈について確認したところで、いよいよ「やさしい花」をピアノで演奏するための弾き方のコツを、練習方法を交えて確認していきましょう。

風とたわむれる花(A:1~8小節目/17~24小節目)

まずはA-B-AのAの部分についてです。

Aには、1~8小節目と、途中でBに移った後の17~24小節目が該当します。

出だしには「p(ピアノ)」、そして「delicato(デリカート)」と表記されています。

「繊細な」「優美な」「上品な」「か弱い」「きゃしゃな」「慎重に扱うべき」という意味があります。

フランス語の「tendre」と呼応していますね。

1小節目は、左手は休み。右手でレ♯ファ、♯ファラ、ラレ…とニ長調の主和音を2音ずつつなぎながら上行します。

2小節目で♯ファミ♯ドラとニ長調の属和音(♯ファは倚音)で下降した後、一気にオクターブ上のラまで長いレガート。1小節目の細かいアーティキュレーションとは対照的です。

そして、それを追いかけるように、左手がニ長調の属七の和音を下行形で出てきます。

3小節目はさらにラ♯ファと音域を上げてから、♯ファレ、レラ、ラ♯ファと2音ずつのアーティキュレーションで下行。4小節目は2小節目とまったく同じです。

この出だしのアーティキュレーションが印象的で、delicatoな雰囲気を出してますね。

さて、5~8小節目は右手の動きに2拍遅れて、左手も八分音符で動きます。

どちらもメロディーとして動き、しかも右手の動きを単純に左手が追いかけているというわけでもないので、この部分を弾くのに苦労する人も多いのでは。

まずは片手ずつ、この4小節間をレガートで迷いなく弾けるように、指使いをしっかりマスターしましょう。

適当に弾いているとこの4小節間をレガートで弾き切ることができないので、指使いは重要です。

最初はテンポを落としてゆっくりと。ゆっくりできちんと弾けて慣れていけば、テンポは自然に上がってきますよ。

また、このA部分は左手が高音部譜表で書かれています。音域でいうと、アルト(女声低音部)。

だから、よけいにやさしい雰囲気なのかもしれません。ソプラノとアルトの音域で絡み合い、まるで風に吹かれて花がゆらゆらと揺れているようです。

A部分の最後には、「dimin. e poco riten.」と書いてあります。

dimin.=diminuendo(ディミヌエンド)だんだん弱く
e(エ)そして
poco(ポコ)少し
riten.=ritenuto(リテヌート)それまでより遅く ※一音一音を長めに演奏してブレーキをかけるようなイメージ

ちなみに、rit.(リット)というのもありますが、これはritardando(リダルダンド)の略で「だんだん遅く」という意味です。意味がちょっと異なるのでご注意を。

対話あるいは駆け引き(B:9~16小節目)

9小節目からはA-B-AのBの部分に移ります。イ長調に転調です。

左手はバス譜表になるので、気をつけてくださいね。

音域としてはテノール(男声高音部)でしょうか。左手から問いかけ、それに右手が応える、というような動きです。

左手が上行形で迫っていくのに対し、1回目の右手は上行形で逃げていく感じ。しかし、2回目の右手では下行形で近づいてきます。

この動きを繰り返すのが、男性の誘いに乗りそうで乗らない、思わせぶりな女性の態度のようで、これは意図的なものなのか、無意識のものなのか…。

13~14小節目の右手の装飾音のリズムも崩れやすいので、要注意。

まずは、装飾音を入れずにメインのメロディーを弾いてみましょう。そして、装飾音を入れても、そのメロディーが崩れていないか、よく聴きながら弾きましょう。

装飾音の後の音が短く(三連符のように)なりがちなので、装飾音の後の音は音価(長さ)を保って弾いてくださいね。

左手の和音はⅠ→Ⅳ(第一転回形)→Ⅰ(第二転回形)→Ⅴ7(属七)→Ⅰという、典型的なカデンツ(終止形)です。

Bの部分の最後、15~16小節目には、「dimin. e poco rall.」の表示です。

「rall.」は「rallentando(ラレンタンド)」の略で、「だんだん遅く」の意味です。

ところで、先ほどちょっと触れた「ritardando」との違いは?

ritardandoのほうは、「時間が遅れる」といったニュアンスで、電車が遅れた場合などに使われるそうです。

rallentandoは「緩める」といったニュアンスで、高速道路のカーブの手前などに書いてあるそうです。

つまり、rallentandoのほうが意志を持って行うというニュアンスがありそうですね。

 
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