【アルベルティ・バスの意味】
アルベルティ・バスとは、ピアノなどの鍵盤楽器の楽曲の左手部分に見られる分散和音の一種で、3つの音からなる和音を「低音→高音→中音→高音」の順で演奏すること。
イタリア人音楽家のドメニコ・アルベルティが低音部(=バス)にこの種の分散和音を頻繁に用いていたことから、アルベルティ・バスと呼ばれるようになった。
このページでは、音楽用語「アルベルティ・バス」の意味や楽譜上の表記、演奏した時の響き、そして、名前の起源になった人物、演奏のポイントや練習方法についてまとめています!
アルベルティ・バスとは?意味をわかりやすく
アルベルティ・バス(アルベルティバス)は、分散和音の1つです。
分散和音とは、和音(調和する複数の音を同時に演奏したもの)を同時に弾くのではなく、いくつかに分けて弾く表現方法です。
分散和音の演奏方法は、下から上へ(時には上から下へ)順次演奏するアルペジオなど、複数の種類があります。
そして、アルベルティ・バスは、3つの音からなる和音を「低音→高音→中音→高音」の順に分けて弾く演奏法のことを指します。
特に、ピアノなどの鍵盤楽器で良く見られる音型で、基本的には、右手が主旋律、左手がアルベルティ・バスという形をとります。
アルベルティ・バスの名前の由来|ドメニコ・アルベルティ
アルベルティ・バスは、イタリア人音楽家の、ドメニコ・アルベルティ(Domenico Alberti)の名前を冠した名称です。
アルベルティは、1710年にイタリアのベネチアで生まれ、1740年でその生涯を閉じました。
アルベルティは、作曲家のアントニオ・ロッティ(Antonio Lotti)に師事し、歌手やチェンバロ奏者、作曲家として活躍しました。当時は、自らチェンバロで伴奏しながら、歌を歌っていたとされています。
アルベルティは作曲活動も行っていましたが、彼の作ったチェンバロ楽曲には、「低音→高音→中音→高音」の形が多用されていました。
アルベルティの楽曲のほとんどに同じ形の伴奏が用いられていたため、やがて「低音→高音→中音→高音」の形はアルベルティ・バスと呼ばれるようになったのです。
アルベルティ・バスは楽譜上でどのように表記される?
アルベルティ・バスは、和音を「低音→高音→中音→高音」の順に演奏する形です。
楽譜上では、以下の画像ように表記されます。
「ドソミソ」「ドソミソ」「ドラファラ」「ドラファラ」のそれぞれがアルベルティ・バスです。
楽譜上でも、音の高さが下→上→間→上と進んでいっていることがわかります。
アルベルティ・バスの響きは?
アルベルティ・バスは、高さの異なる音を上下に行ったり来たりします。
そのため、上下の抑揚を感じるようなメロディをつくりあげます。
以下に動画を貼っていますので、アルベルティ・バスの響きを感じてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=3ekUYek2uf0
アルベルティ・バスの演奏のポイントは?
続いて、アルベルティ・バスを演奏する際の大事なポイントについて確認しておきましょう。
アルベルティバスは、基本的に4つの音で1セットです。
そして、強拍の位置(=1番目の音)に低音があり、弱拍の位置(=2番目と4番目の音)に高音がきます。
楽曲を演奏する上では強拍を一番力強く演奏するのが基本ですから、当然1番目の最低音を(相対的に)強く演奏します。
しかしながら、このアルベルティ・バスの強弱は、ある問題点をはらんでいます。以下は、スコットランドのピアノ講師Scott Barronの説明を引用したものです。
Looking at the figuration of an Alberti bass group, a note tends to be repeated. These repeated notes also tend to land on the weakest beats but played by the strongest finger – the thumb. It is very important that these notes don’t stand out from the other, more harmonically important notes. The bass line ‘melody’, as in the following example, is C – E – C – E, not C – G – E – G – C – G – E - G:
【 日本語訳 】
アルベルティ・バスの形を見てみると、繰り返し登場する高さの音があることがわかります。これらの繰り返される音は、最も弱い拍でありながらも、音を出すのは最も強い指―親指―です。これらの音はその他の音―より和声的に重要な音―より目立たないようにすることがとても重要です。下の画像の低音部のメロディラインは「ド-ミ-ド-ミ」であり、「ド-ソ-ミ-ソ-ド-ソ-ミ-ソ」ではないのです。
アルベルティ・バスで最も重要な音は、1番目の低音です。その次に重要なのは、3番目の中音です。
それに比べると、2番目と4番目に繰り返し登場する高音は、弱拍部分であり重要度は高くないのです。
そのため、最高音は、他の音と比較して目立たないように演奏するのが基本です。
しかしながら、ほとんどの場合に、アルベルティ・バスを演奏するのは左手であり、最高音は最も強い指である親指で演奏することになります。
そのため、アルベルティ・バスの演奏においては、最も弱い音を最も強い指で演奏しなければならないのです。
ここに、アルベルティ・バスのむずかしさがあります。
アルベルティ・バスを自然な美しい響きにするためには、最低音を強く、そして、最高音を弱く演奏する練習が必要になります。
良く音を聴きながら、どのように手や指の重心をコントロールすれば正しい強弱をつけることができるかを考えて練習するようにしましょう!
アルベルティ・バスの練習方法は?
では、最後にアルベルティ・バスの効果的な練習方法について確認しておきましょう。
アルベルティ・バスを強弱をつけてうまく演奏するためには、一般的に以下のような手順で練習します。
●和音の手の形を先に覚える
●まずはゆっくり強弱を感じながら演奏する
まずは和音で手の形を覚えよう
アルベルティ・バスは、あくまでも和音を分散して演奏する分散和音の一種です。
そして、和音は種類によって手や指の形が異なります。
そのため、いきなりやみくもにアルベルティ・バスを弾いても、音が安定せず、ミスも多くなってしまいます。
そこで、先に和音を同時に演奏して、それぞれの和音の手の形を確認して覚えるのが効果的です。
たとえば、モーツァルトの「トルコ行進曲」のコーダの部分には「ラミド♯ミ」と「ラファ♯レファ♯」の2つのアルベルティ・バスが登場しますが、以下の画像はそれぞれの和音の形を比較したものです。
画像から、一言で和音と言っても、手の形が全然違うことがわかります。
そして、アルベルティ・バスは、それぞれの和音の形を知らないままやみくもに練習しても、音が途切れたりうまく強弱がつけられなかったりします。
そこで、先に和音の形を覚え、分散せずに同時に弾く→次の音も同時に弾く→・・・という練習をしておくと、アルベルティ・バスとして分散させたときにも、きれいに演奏することができます。
ゆっくり強弱を聴きながら弾くことから始めよう
和音で手の形を覚えたら、いよいよアルベルティ・バスの練習に移りますが、まずはゆっくりと演奏することから始めましょう。
というのも、上の「アルベルティ・バスの演奏のポイント」の部分でも述べたように、アルベルティ・バスは低音を強く&高音を弱く弾く必要があるからです。
ところが、いきなり早く弾いても、普通は強弱をうまくつけることができません。
強い指である親指で高音を、弱い指である小指で低音を弾くことになるため、強弱があべこべになってしまいがちです。
そのため、まずは小指を強く、親指を弱く、アルベルティ・バスのあるべき強弱の姿を意識し感じながらゆっくり演奏する必要があるのです。
ゆっくりできちんと強弱をつけることができるようになったら、演奏したいスピードでも同じような強弱で演奏できるよう、徐々にスピードを上げていきましょう。
簡単なようで奥が深いアルベルティ・バスですが、このように和音の手の形を覚える→強弱をを意識しながらゆっくりから徐々に早くするという地道な練習をしておくことで、表現力が全然違ってきます。
最初は大変かもしれませんが、一度できるようになれば他の曲のアルベルティ・バスでも短期間で綺麗に弾けるようになるので、ぜひ一度納得できるまで反復して練習してみてください!
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