マウスピースのお手入れ

クラリネット・マウスピースのお手入れの方法と問題点

クラリネット・マウスピースのお手入れイメージ画像

ようやく手に入れたお気に入りのマウスピース。

せっかくならきちんとお手入れをして、長持ちさせたいですよね。

また、直接口が触れるパーツでもありますから、衛生面も気になるところだと思います。

でも、クラリネット・マウスピースのお手入れ方法の説明を受ける機会はあまりないので、どうしたらいいのか困っている方も多いでしょう。

マウスピースの取扱方法には諸説ありますが、ここでは広く知られている方法について、やり方やその根拠を説明していきます。

また、ぜひお知り置きいただきたい一部ブランドのマウスピースを原因としたある問題についても、原因と対策についてご紹介します。

クラリネット・マウスピースのお手入れに関する問題点

クラリネットのマウスピースのお手入れについて考える際には、たとえば以下のような点が問題点としてあげられます。

  • スワブを通すか通さないか?
  • 水洗いをしてもいいのか?
  • マウスピースによる変色

まずはこれらの問題点についてひとつずつ見ていきましょう。

スワブを通すか通さないか問題

スワブとは、楽器の中を通して水分や汚れを拭き取る紐付きの布(掃除布)のことです。スムーズに通せるように、紐の先端には重りがついています。

マウスピースはコンマ数ミリにこだわって設計されているものなので、スワブを毎回通していると、内径が少しずつ削られて、知らないうちに音色や吹き心地が変わってしまうと言われています。

また紐の先端に付けられた重りがぶつかることで、とりわけ薄くできているティップ(先端)やサイドレール(リードを置く部分の縁)に傷がつく危険性もあります。

そのため「マウスピースにはスワブを通さない」という奏者も多いのです。

では、溜まった水分はどうするかと言うと、「自然乾燥で良い」という人もいれば「ティッシュなど柔らかいものをコルク側から入れて優しく拭き取る」「スワブを途中まで通して戻す」という人もいます。

しかし「マウスピース用スワブ」という商品がわざわざ発売されている以上、マウスピースにスワブを通す派の人がいないわけではありません。

マウスピースの中には、唾液に含まれるカルシウム分などの汚れも入ってしまうので、水分を含んだ柔らかいうちに拭き取っておかないと固まってしまい、演奏に悪影響が出るでしょう。

つまり、マウスピースにスワブを通すにしても通さないにしても、マウスピース内の掃除は必要であると言えます。

水洗いをしてもいいの?

布による摩擦がダメなら、水洗いするのはどうでしょうか。じゃぶじゃぶ洗ってしまえば、衛生的な気もしますよね。

一部ブランドのマウスピースにはエボナイト(硬質ゴム)が使われています。硬質ゴムは水道水に含まれる塩素に弱いので、水は通す程度にとどめ、つけ置きは避けたほうが良さそうです。

では、煮沸して塩素を飛ばした蒸留水ならいいのかというと、硬質ゴムは50度以上のお湯でも変色、変形するので、しっかり冷ましてから使う必要があるでしょう。ちょっと手間ですね。

アクリル製やABS樹脂製のマウスピースであれば、水洗いしても大丈夫そうですが、紫外線により変色するものもあるので、洗った後、乾かすために日に当てることは避けましょう。

マウスピース「が」変色させてしまう問題

前述したようにマウスピースは、塩素やお湯や紫外線によって変色してしまう可能性があります。

一方で、一部のブランドのマウスピースには、銀メッキされたキィやリガチャーを変色させてしまうという性質を持つものがあります。

具体的にどんな状況になるかと言うと、買ったばかりのマウスピースを楽器ケースの中に納め、蓋をして一晩置くだけで、翌朝にはキィが黒く変色してしまうのです。

また、常にマウスピースに接した状態で使うリガチャーの裏側も茶黒く変色していきます。

いずれの場合もポリッシュ(銀磨きの薬剤)で磨けば綺麗にはなりますが、大変な手間ですね。

手の届かないところまで変色してしまったキィについては、楽器を一度バラしてからキィを磨く必要があり、時間も費用もかかってしまうことになるのです。

それではなぜ、銀メッキされたキィやリガチャーが変色してしまうのでしょうか。その理由をご説明します。

理由1:硫黄の成分が含まれているから

一部ブランドのマウスピースの材料であるエボナイトは、製造工程で硫黄を大量に使うため、製造後一定期間はその硫黄成分が放出されています。

放出されたこの硫黄成分が銀メッキと化学反応を起こし、変色を引き起こしているのです。

温泉の案内板に「銀製品は変色しますのでご注意ください」と書かれているのを見たことはありませんか?硫黄泉でネックレスや指輪が変色してしまうのと同じことが起こっていると言えるでしょう。

理由2:製造後すぐに出荷されるから

昔は製造後しばらく倉庫内に置いていたため、その間に硫黄成分が抜けていたようですが、今はすぐに出荷してしまうので、硫黄成分が残ったままユーザーの手に渡ってしまっている状況です。

製造から出荷までの日数が短いほど鮮度が良さそうですが、このマウスピースに関しては、なるべく長く工場にいてくれた方がありがたいようですね。

では、こうした変色を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか。対策をご説明しましょう。

楽器とは別の場所に収納する

硫黄成分が放出されている間は、銀メッキ製品と一緒にしておくことは避けましょう。

マウスピースが傷つかないようクロスに包んだりポーチに入れるなどしてから、ケース内ではなく、例えばケースカバーのポケットに収納するのです。別途小物袋を用意してもいいでしょう。

一定期間経てば、徐々に硫黄成分が抜けてくる

使用する環境や頻度にもよりますが、半年を過ぎた頃から硫黄成分の放出は少なくなってきます。

そろそろかなと思ったら、ジップロックなどのチャック付き袋にマウスピースを入れ、しっかり空気を抜いてから一晩置いてみましょう。

購入直後は、数時間でパンパンになります(破裂には注意してください)。一晩置いても袋の中に変化がないようでしたら、変色の危険性が低くなってきていると言えるでしょう。

とは言え、キィやリガチャーの変色は高温多湿な環境やケースの接着剤のせいでも起こるものです。

変色が起きたら、楽器店スタッフなどにも相談しながら原因を突き止め、対策を講じるといいでしょう。

マウスピースの掃除の仕方は?

では、マウスピースを傷つけたり、変色させたりしないように掃除をするにはどうしたら良いのでしょうか?以下にポイントをまとめました!

【スワブ使用の場合】
・スワブを通すなら、マウスピース用の小さいサイズのものを使用する(管体用だと大きすぎて、摩擦が強くなるので)。
・コルク部分から、スワブの重りがマウスピースに当たらないようにスワブを入れ、ゆっくり通す。通し切らずに途中で戻すとベター。

【スワブを使用しない場合】
・ティッシュやガーゼなど吸水性が良く、柔らかいものを指に巻きつけて、マウスピースのコルク部分から入れ、内部を優しく拭く。
・内部をのぞいたとき汚れが見える場合には、綿棒などで優しくこそぎ落とす。
・お湯洗いは不可、水は通す程度にする。コルクの劣化が気になるなら、ラップを巻いておくと良い。

【マウスピース表面のお手入れ】
・楽器用マウスピースクリーナーを、柔らかい布に染み込ませて優しく拭く。
・ノンアルコールタイプのウェットティッシュを使用しても良い(変色する可能性があるのでアルコールタイプは使わない)。

いずれの場合も刺激を与えないように、力を入れずそっと掃除をするよう心がけてください。

マウスピースのお手入れ方法をきちんと知ったうえで取捨選択しよう

マウスピースのお手入れ方法について、「きちんと教わったことがない」「先生や先輩から教えられたことをそれほど深く考えずに、ただ受け継ぎ実行していた」という方は多いはず。

このページでご紹介の通り、人により掃除方法が違ったり、「掃除すらしない」という人もいたりして、様々な考え方があることを感じていただけたのではないでしょうか。

お手入れ方法に限らず、楽器にまつわることは正解が一つではないことが多いです。

しかしながら、ご愛用のマウスピースをできるだけ良い状態で長く使っていくために、自分なりのお手入れ方法を確立しておくのがおすすめです。

マウスピースを原因とした変色問題については、知っているのと知らないのとでは結果が全く変わってきます。

余計な手間暇や費用をかけず、キィやリガチャーを綺麗な状態にキープしておくために、マウスピースを楽器とは別に保管することをぜひ覚えておいてくださいね。

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