クラリネットを吹く人にとって、リードは常に悩みのタネですね。良いリードが手元にないと不安ですし、練習もままなりません。
リードに寿命があるのは仕方ないとしても、お気に入りのリードはなるべく長持ちさせたいもの。
今回は、クラリネットリードの変化の仕方や寿命を延ばす保管方法についてご案内します。
クラリネットのリードは種類が同じでもバラつきがある
まず前提として、クラリネットリードを同じブランド、同じ硬さのものを複数枚比較してみると、1枚1枚吹き心地や音色に違いがあります。なぜそのようなバラつきがあるのか、考えてみましょう。
天然素材を原料としているから
クラリネットリードは葦(あし)という植物を原料としています。
各リードメーカーは、フランスやアルゼンチン、中国などに広大なリード畑を持っていて、厳重な管理のもとで葦を栽培しています。
しかしながら、その品質を完全にコントロールするのは非常に難しいと言えます。
天然素材ですから、色や繊維の走り方などがリード1枚1枚で異なります。また、採取する年の気候などにより、良質な材料が取れる年とそうでない年があります。
このような素材の植物としての特性が、吹き心地や音色に影響することがあるのです。
仕上がりが違うから
次に考えられることは、仕上がりの違いです。
クラリネットリードを成型する際、切ったり削ったりする機械を使います。この刃の切れ味が1枚目と100枚目、1000枚目とでは違うことは想像できるでしょう。
つまり、切ったり削ったりする工程があることによって、機械の消耗による微妙な仕上がりの違いが生じるのです。
微妙ではなく、見てわかるほどの違いがあるケースもそれほどめずらしくありません。
合成樹脂製リードは、天然素材に比べて材料の質が安定しているため、バラつきが少ないと言われます、その反面、カットする工程がある以上、やはり個体差が生じるのは避けられません。
また樹脂製リードの中にはカットではなく、鋳型に原料を流し込んで成型するものもあります。しかしながら、この方法でも個体差は生じてしまいます。
たい焼き屋さんを思い浮かべるとわかりやすいのですが、例えば焼く(リードの場合は固める)温度にムラがあると均一には仕上がりません。バラつきなくリードを作るのは、現代の技術をもってしても とても難しい作業なのです。
「使える」リードは宝物
もちろん、リードメーカーも個体差をなるべく出さないように開発、研究を進めています。
しかしながら、1箱10枚入りのクラリネットリードを購入した場合に「使える」リードが、1枚か2枚程度であるという現実は、数十年前から変わっていない気がします。
そのため、その1枚か2枚の宝物のリードをいかに長持ちさせるか、クラリネット奏者は悩み、さまざまな方法を講じるのです。
リードは使用中も常に変化している
続いて、リードの変化の仕方をチェックしていきましょう。
「吹き始めは良い音のような気がしていたけど、数時間吹くとなんだか音がまとまらなくなってきた」「昨日は鳴りにくかったのに、今日は調子がいいみたい」などなど、クラリネットリードの状態は、とても気まぐれです。
なぜこのような違いが出るのか、考えてみましょう。
吹くことで変化するから
天然素材のクラリネットリードは湿らせてから使います。リードは水を含んだり、乾いたりを繰り返すことでコンディションが変わっていくものです。
数時間も吹くと、水分を含んだことにより リードの状態が変わり音色や吹き心地も変化します。
これを劣化した(へたった、コシがなくなった)と評価する人もいれば、育った(馴染んだ、落ち着いた)と感じる人もいます。
保管状況で変化するから
保管の状況によってもその後のコンディションは変わります。
吹きっ放しで放置してしまうと、湿った状態から乾く過程でリードの先端が波打ってしまい、安定して振動しなくなりますから、スムーズに音が出なくなる場合があるでしょう。
環境に影響を受けるから
温度、湿度、気圧など外的環境は、クラリネットリードに限らず木製楽器のコンディションに少なからず影響を与えます。
例えばピアノ。晴れている日にはタッチも軽く輝かしい音色に、雨の日には暗い音で響きにくくなると言われていますね。
リードも同じで、適度に乾燥した環境ですと音の伸びが良くなります。一方湿気が多い日には、リードは重く振動しにくくなり、柔軟性に欠けた音色になります。また、台風の前後ともなると、気圧が変わるので不安定になりがちです。
本番用のリードを選んでおいたのに、演奏会当日が大雨だったりしてまったく鳴らず、冷や汗をかいたことがある人もいるのではないでしょうか。
木製楽器奏者は、常に天気予報を気にしておく必要があると言えます。
樹脂製リードでも変化する
樹脂素材のリードは水分に耐性があるので、天然素材に比較すれば変化は少ないと言えます。
しかしながら、先端がかなり薄く作られているため、保管状態が悪いと、亀裂が入ったりめくれ上がってくることがあります。こうなってしまうと、良い音を出すことは困難になってしまいます。
リードを長持ちさせる秘訣はなるべく変化を与えないこと
ここまでのお話で、クラリネットリードは変化しやすいものだということがおわかりいただけたと思います。
そして、クラリネットリードを長持ちさせるための秘訣は、リードに急激な変化を与えない吹き方をすることです。具体的にはどのような点に気をつければいいのでしょうか。
複数のリードをローテーションさせて使う
クラリネットリードは、1枚を集中的に吹いてしまい過度に水分を与えると、すぐに傷んでしまいます。
そのため、お気に入りのリードをできるだけ変化させず、良い状態をキープさせたいなら、何枚かをローテーションすることがおすすめです。
「スーツは1日身につけたら最低1日は休ませ、何着かを着回すと良い」と聞いたことがある人も多いでしょう。
これは汗など水分による消耗を防ぎ、スーツを長持ちさせるためのケア方法です。リードにもまったく同じことが言えるのです。
吹き始めは少しずつ吹く
ローテーションさせて吹いていたとしても、その1回1回が長時間であれば、リードはすぐに劣化してしまいます。
リードが新しいうちは数分ずつ少しずつ吹いて水分に慣らしていき、徐々に演奏時間を長くしていきましょう。
そうすればリードの急激な変化を避けることができ、寿命を伸ばすことができます。
リードケースは保管のための必須アイテム
リードには専用の保管ケースがあり、これをリードケースといいます。
リードケースに入れておくだけでリードが長持ちする、と言っても過言ではありません。ここからは、リードケースによる保管の方法について確認していきましょう。
平らな状態にキープすることが目的
クラリネットリードは、演奏後の取り扱いを間違えると、乾くまでの間にゆがみや反りが発生し寿命が縮みます。このようなリードのゆがみや反りは、リードケースに入れてリードを平らな状態に保つことによって、低減することができます。
そのため、演奏後のリードは必ずリードケースに入れて、平らな状態を保つようにしましょう。
樹脂製のリードであっても、先端が非常に薄く加工されているため、めくれ上がってくることがありますから、天然素材製と同様リードケースでの保管をおすすめします。
水分を軽くとってから収納する
演奏後のクラリネットリードは、人差し指と中指で軽くはさみ、手を上方向に動かして軽く水分を取ってからリードケースに入れます。少し湿っている程度で問題ありません。
水分を完全に取ろうとしてタオルなどでゴシゴシこすると、リードが痛みます。
逆に水分が多く残っていると、リードケースにリードが貼りついてしまい、それを剥がすときにリードを傷つける危険性があります。優しく、適度に水分を取るようにしましょう。
長期保管にもリードケースを
リードケースに保管することは、使用中のリードを平らに保ちその変化を最小限に抑えることはもちろん、湿度を一定にしておく効果もあります。
そのため数回吹いたけれどしばらく使わない、というリードの長期保管にも役立ちます。
長期保管する場合は、クローゼットや引き出しにしまい込むよりも、リビングなど常に空気が動いている環境に置いておく方がリードが安定するでしょう。
人間が快適な場所はリードにとっても良い環境なのです。
専用ケースを用意しよう
ちなみにクラリネットリードは、ほとんどの場合、1枚1枚プラスチックや紙でできた保護キャップに入れられています。
このキャップに入れたままで使っている方も多く見かけますが、繊細なリードの先端を輸送時の衝撃から守るという役割を持つものですから、保管用に使うのは避けたほうがいいでしょう。
リードケースは¥2,000台から購入できるので、リードの寿命を延ばすためにも早めに手に入れることをおすすめします。
クラリネット・リードの保管方法まとめ
このようにクラリネットリードの状態は常に変化しています。
吹き始めは良くてもすぐに音質が落ちるリードもあれば、最初は吹きにくいと感じても次第に良い音が出るようになってくるリードもあります。
リードがどのように変化するかについては、ブランドやリードそのものの個性もありますが、吹き方や保管方法の影響も大きいと言えます。
リードの変化を極力抑えるために、
- 1枚のリードを集中的に吹き過ぎない
- 必ずリードケースに保管する
この2つの鉄則を守りましょう。
「宝物」のリードの寿命を延ばす方法を覚えて、いつでも不安なく良い演奏ができるようになるといいですね。
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