大人になってピアノを始めた方や、大人になってピアノを再開した方で、「コンクールを受けてみたい」と思う方は少なくないはず・・・
このページでは、そんな大人のコンクールに興味がある方向けに、大人のためのピアノコンクール「エリーゼ音楽祭」について、何度か出場している立場の目線からその魅力を余すところなくお伝えしていきたいと思います。
大人のためのピアノコンクール「エリーゼ音楽祭」とは?
エリーゼ音楽祭とは、一言で言えば「大人のためのピアノコンクール」です。
音楽を専門に学んできた方や、ピアノを学ぶ子ども などを対象としたコンクールとは一線を画す、大人のアマチュア向けに特化したコンクールであることが特徴です。
実際、出場している方のほとんどがすでに社会に出ている大人の方で、高校生くらいの方からシニアの方まで幅広い年齢層の方が参加していることが特徴です。
コースも、レベル別に分かれているのはもちろんのこと、クラシック・ピアノ部門とポピュラー・ピアノ部門に分かれているほか、レベルに関係なく「エリーゼのために」をいかに美しく弾けるかを競う「エリーゼ部門」や、他の奏者と合わせて演奏する「アンサンブル部門」など、バラエティに富んだ部門構成になっています。
エリーゼ音楽祭の参加資格は?
エリーゼ音楽祭の参加資格は、以下の2つを満たしてさえいればOKです。
上記の参加資格から、大人のアマチュアピアノ愛好家であれば、誰でも出場可能であることがわかります。
部門とコースの種類について
エリーゼ音楽祭のコンクールの内容についてですが、カテゴリ別にいくつかの部門に分かれています。
内訳をみると、「クラシックピアノ部門」、「ポピュラー・ジャズピアノ部門」などのジャンル別のほか、エリーゼのためにの美しさを競う「エリーゼ部門」、「連弾ピアノ部門」、ピアノと他の楽器でアンサンブル演奏する「アンサンブル部門」、65歳以上向けの「プラチナ部門」、音楽を専攻している方やプロを目指している方向けの「マスター部門」に分かれています。
さらに、それぞれの部門が、全くの初心者向けから音楽を専門に学んできた方向けまで、レベル別のコースに分かれています。
一般的には、Aコース→Fコースとアルファベットが進むにつれてレベルが高くなりますが、たとえばクラシックやポピュラーのAコースとBコースはともに初心者向けであり、異なるのは演奏時間である、という場合もあります。
部門ごとのコース・難易度について、詳しくは以下のページをご参照ください。
https://www.elise-music.com/festival
予選と全国大会の2部構成
エリーゼ音楽祭は、例年5月~9月の間に開催される地方予選と、地方予選を通過者のみが参加できる11月の全国大会の2部構成になっています。
予選エリアは、東京、横浜、茨木、名古屋、神戸、広島、福岡の各都市で開催されます。そして、予選を勝ち抜いた参加者は、東京で行われる全国大会に出場することができます。
コンクールの後には懇親会やレセプションもある
そして、全国大会終了後には、参加者同士円卓を囲んで行われる「レセプション」に参加できます。レセプションでは、結果発表が行われるほか、他の参加者との交流ができるので、音楽仲間の輪を広げることができるのが大きな特徴です。
以前は、予選の後にも懇親会が行われていたようですが、2020年・2021年はコロナ禍であることもあり、予選後の懇親会は開催されていません。
もし状況が許せば、2022年度は予選後の懇親会も復活するとうれしいですね!
予選を突破するのはどのくらいむずかしいの?
ところで、これからエリーゼ音楽祭に参加を検討している方にとって気になるポイントは、「予選を突破するのはどのくらいの難易度なのか」という点なのではないかと思います。
私が2年間で合計3つの予選に参加した体感ですが、予選突破については、そんなに難しくないと考えられます。
というのも、予選の会場によっては参加者の7~8割くらいが呼ばれているのではないか?と思うくらい、たくさんの人が予選を突破できているからです。
大まかな目安ですが、指導者にきちんと習っていて、きちんと耳で聴いているのがわかる自然な演奏ができていれば、予選は突破できているのではないかと私は思います。
自分で録音して上手い人の演奏と聴き比べたりといった方法でもいいですが、とにかく「自分の演奏を客観的に評価される」という経験を積んでおくのが肝要です。(私見ですが)
もちろん、ある程度「人前で弾く」という経験を積んでおく必要もあると思います…。
と言うのも、人前で弾くと、頭が真っ白になったり、手足が震えたりするのはよくあることなので、そういった非日常の中でもある程度自分なりの演奏ができるよう対策をしておくかどうかで、本番の出来が全然違ったりするからです。
あと、個人的な体感ではありますが、会場によって審査員も異なるため、審査員によって若干通過のしやすさが異なる気がします笑。
エリーゼ音楽祭の参加申し込み方法は?
参加申込みの方法ですが、まず、主催団体のEMSの「エリーゼ音楽祭」のWebサイトにアクセスします。
続いて、ページ右側の「エリーゼ音楽祭お申込み」のアイコンをクリックします。
そして、その先に表示される申込みフォームに必要な情報を入力し、仮申込みが完了となります。
その後に、指定の振込先への参加費の振込みを以って、申込み手続きがすべて完了となります。
申込み時には、参加する日程・会場や部門などを選択する必要があるので、先に会場や部門について決めておくようにしましょう。
また、申込み時には演奏する楽曲の曲名や作曲者名を入力する個所もあるので(未定も選択可能なはず)、申込みの時点で先に決めておくに越したことはないと思います。
課題曲はあるの?選曲について
続いて、コンクール本番で演奏する曲について確認しておきましょう。
課題曲についてですが、エリーゼのためにの美しさを競う「エリーゼ部門」といった一部の部門を除き、自由です。自分が弾きたい曲でエントリーすることが可能です。
部門ごとに制限時間が設定されているので、その時間内(前後)に演奏が終わる曲を選ぶことが多いです。
ただ、時間が来たらベルが鳴って演奏を止めることになるので、それでもかまわないのであれば、長めの曲でエントリーして、制限時間内で曲の途中まで演奏するという選曲の仕方も可能です。(たとえば、初心者部門に演奏時間が長めのきらきら星変奏曲などでエントリーしている方もいらっしゃいました)
指定された曲の完成度で勝負できるので、自分の好きな曲をとことん究めたいという気持ちを満たしながら他の参加者の方々と競えるのは、うれしい点です。
個人的に選曲について思うのは、必ずしも難しい曲を弾けたから入賞できる、というわけでもないので、自分の技術できちんと表現できて、出場する部門の難易度から逸脱しないくらいのレベルで、かつ、自分がとことん究めたいと思えるくらい好きな曲を選ぶのがベストだと思います。
というのも、むずかしすぎる曲を選んで、緊張感が極限まで高まる本番で自爆してしまう方も少なくないからです。
たとえば初心者部門で言えば、ソナタやショパンなど、簡単ではない曲を選ぶ方もたくさんいますが、ソナチネくらいのレベルの曲でも金賞以上を取ることも可能なので、自分の実力を出し切れるレベルの楽曲を選ぶことは、思っている以上に重要だったりします。
「参加目標」と「前奏文」
また、参加に際しては、「参加目標」(30文字以内)と、「前奏文」(250文字以内)をそれぞれ文章で提出します。
この「参加目標」と「前奏文」は、それぞれコンクール本番で配布されるパンフレットに掲出されると共に、演奏の直前に主催者の方によって読み上げられる文章で、自分の演奏の印象を多少なりとも左右する重要なものです。
ぜひ、自分が楽曲やエリーゼ音楽祭等に対して抱く思いが伝わるような、熱意のある文章を考えてみましょう。
エリーゼ音楽祭の魅力は?
ではいよいよ、エリーゼ音楽祭の魅力について見ていきましょう!
私もこれまでに2年間エリーゼ音楽祭に出場してきましたが、たとえば、以下のような魅力が詰まっているコンクールだと私は思います。
・ピアノの専門家からのフィードバックを受けられること
・大人のピアノ仲間ができること
・1曲をきちんと仕上げる機会になること
・多くの人の前で演奏する経験を積めること
・スタッフさんの思いが詰まっていること
ピアノの専門家からのフィードバックを受けられること
エリーゼ音楽祭の大きな魅力のひとつは、参加者一人ひとりが、審査員を務めるピアノの専門家の先生方からのフィードバックを受けられる点です。
エリーゼ音楽祭では、予選でも決勝でも、複数のピアニストの方が審査員を務めてくださいます。
そして、審査員の全員の先生が、それぞれの参加者一人ひとりに良かった点や悪かった点などについてのコメントを書いてくださいます。
演奏時間は数分しかないにもかかわらず、自分の演奏に客観的に足りない部分などをとても的確に指摘してもらえます。
そのため、今後その楽曲に向き合う時や、これから別の楽曲に挑む際に、どのような点に気をつければいいのか、自分だけでは気づけないポイントに気づくことができます。
私も審査員の先生方からのフィードバックを受けたことで、ペダルの使い方や和声感など、実に様々なことに新たに目を向けることができるようになりました。
コンクールで入賞などの結果を手にすることはもちろん大切です。 ですが、それ以上に、コンクールの本番までに曲を仕上げる過程や、客観的なフィードバックなどを受けることなどによって、楽曲と向き合ってピアノ演奏の技術や考え方を向上させられることが、ピアノを継続していく上では大きな財産になるはずです!
大人のピアノ仲間ができること
エリーゼ音楽祭の醍醐味のひとつは、なんと言っても「大人のピアノ仲間ができる」という点にあります。
エリーゼ音楽祭は、大人のためのピアノコンクールで、様々なレベルのアマチュアの方々が、ピアノの腕や表現を競い合います。
ピアノという同じ土俵で戦ったライバルたちは、コンクールが終わった頃には良き仲間になることができます。
エリーゼ音楽祭では、コンクールのプログラムが終了した後に、円卓を囲って宴が行われます。
そこで、自分と同じように、大人になってからピアノを続けてきた人たちと様々にお話しすることができます。
同じピアノという活動に打ち込んでいる者同士、盛り上がらないはずがありません。
私も、レセプションでできた仲間たちとは、今でも連絡を取り合っています。
次の年のエリーゼ音楽祭で再開しても、とても気軽に音楽などについて語り合うことができます。
同じ志を持つ仲間とのつながりは、SNSなどでもつくることはできますが、やはりリアルなコンクールの場でできた仲間というのは、関係性も一味違うものです。
1曲をきちんと仕上げる機会になること
これはコンクール全般に言えることではありますが、エリーゼ音楽祭も、自分の大好きな一曲と向き合い納得するまで仕上げる良い機会となります。
私が初めて出場した年には、ベートーヴェンの「悲愴 第二楽章」を選曲していました。
予選でフィードバックを受け、また習っている先生に様々なご指摘をいただき、また、ご縁のあった先生方にもどうすればもっと良くなるか診ていただく中で、「これが自分の悲愴だ!」と自信をもって言える演奏に仕上げることができました。(コンクール後までかかりましたが・・・笑)
その後に音大生の知人も私の発表会の演奏を聴きに来てくれましたが、やはり「悲愴」がいちばん良かった、ハーモニーが素晴らしかった!と言ってもらえました。
エリーゼ音楽祭を通じて一曲を納得いくまで仕上げようと追求し続けた成果だと私は思っています。
多くの人の前で演奏する経験を積めること
この点もすべてのコンクールに共通していることかもしれませんが、人前で演奏する経験を積めることも大きなメリットです。
エリーゼ音楽祭では、予選でまず一回演奏し、全国大会に進めれば、全国大会でも多くのピアノ愛好家の前でピアノを演奏することになります。
人前でピアノを演奏したことがある方なら経験したことがあるかもしれませんが、人前でピアノを弾こうとすると、様々なトラブルに見舞われます。
姿勢が悪くて体に力が入らない、呼吸が乱れてしまう、頭が真っ白になる、手足の震えが止まらないetc.
以上のような本番特有の緊張感がもたらす様々な影響により、本番では、練習の時よりも全然うまく演奏できない場合がほとんどです。
私も、良い時で90%くらい演奏できることもありますが、平均で60~70%、悪い時で30%くらいしか自分の力を出せなかった時もあります。
このような本番での緊張については、実は様々な対処法があるのですが、本番で気分の力を発揮するためには、自分に合った対処法をいろいろと試してみるしかありません。
ストレッチしてみたり、自分なりのリラックス方法を試してみたり、呼吸を整えたりetc.
そういった試行錯誤の末に、だんだんと本番で自分の力を発揮できるようになっていくのです。
エリーゼ音楽祭は、予選と全国大会の2回の演奏の機会があり、ピアノ愛好家だけでなく審査員である専門家の方々も聴いていることもあり、人前で演奏する経験を積むには絶好の機会であると言えます。
スタッフさんの思いが詰まっていること
エリーゼ音楽祭のもうひとつの大きな魅力は、なんと言っても運営するスタッフさんの温かさにあります。
エリーゼ音楽祭は、実はLACOMS(ラコムス)という英語専門スクールが運営しています。
本業は音楽と全然関係のない英語というドメインであるにもかかわらず、音楽という(言い方が悪いですが)儲からない分野の事業を運営してくださっています。
そんな(ある意味)情熱だけで運営されていると言っても過言ではないエリーゼ音楽祭は、スタッフさんがとても親身に接してくださいます。
代表の水野社長をはじめ、みなさんとてもフレンドリーです。
一人ひとりのピアノ愛好家の方々が参加しやすいような雰囲気をつくってくださっています。
レセプションも、様々な賞を設けるなど大いに盛り上げてくださいます。
そんなに儲けも出ないはずなのに、こんなコロナ禍にもかかわらず、一生懸命最後までコンクールを開催してくださいました。
そんな、ピアノ愛好家への愛情が詰まったLACOMSさんの運営があるからこそ、10年以上続く長く愛されるピアノコンクールとして続いていっているのですね!
エリーゼ音楽祭で入賞することで何が得られるの?
そんな魅力がたくさん詰まったエリーゼ音楽祭ですが、入賞することで何が得られるのでしょうか?
まず、特典について言えば、マスター部門(エリーゼ音楽祭最高峰のコース)の全国大会で優勝すれば、翌年のエリーゼ音楽祭のコンサートステージで、自分だけのプログラムを演奏する機会を得ることができます!
ただ、よくある勘違いなのですが、コンクールで優勝すれば有名になる、演奏家として認められる、というわけではありません。(ショパンコンクールやPTNA特級などの超有名コンクールでの入賞なら別ですが)
(特に)アマチュアのコンクールで入賞しても、演奏機会が増えたり、SNSのフォロワーが劇的に増えたり、YouTubeでたくさんの人が自分の演奏を見てくれたりするわけでもありません。
それでも残るのは、ピアノの演奏家の客観的な評価を受けて入賞できた、そこまでの練習の過程で身についたピアノの技術や表現力に他なりません。
それらの技術・表現力や、コンクールで入賞したという実績をどう生かすかは、すべてあなた次第なのです。
以前、SNSで「コンクール入賞者への対価が少なすぎる」という趣旨の発言を目にしたことがあります。
確かに、コンクールで入賞してちょっと有名になって、(コンクールによっては)報酬を受け取ったとしても、それは一時的なものに過ぎません。
毎年、様々なコンクールの入賞者が世界で生まれ続けているからです。
大事なのは、コンクールで入賞した実績や、その過程で身につけた技術・表現力を、世の中に「どう売り込んでいくか」です。
芸術の世界だと忘れがちになりますが、企業活動などではどうやって社会からの認知を得て、どうやって自分のサービスを利用してもらうかという「マーケティング」の視点が、事業の発展には不可欠です。
ピアノの演奏も本質は同じで、自分のピアノ演奏という無形の商品を、どのようにピアノを聴きたい人に届けていくか、それは自分のアイディアと工夫次第なのです。
ぜひ、コンクールという機会を「利用して」、あなただけのピアノ・マーケティング戦略を練り上げていっていただきたいと思います。
エリーゼ音楽祭に今後期待したいこと
ここまでエリーゼ音楽祭の魅力をご紹介してきましたが、最後に、今後エリーゼ音楽祭に期待したいことについても少し触れておきたいと思います。要するに、こうすればもっと良いコンクールになるのでは?と思われる点です。
まず第一に、初心者部門の参加資格についてです。
初心者部門については、以下のような注記による記載があります
※各部門のA・Bコース(初心者)は、ピアノ学習歴5年未満、又はそれに該当される方が対象になります。
――大人のためのピアノコンクールエリーゼ音楽祭「開催日時・受験の流れ」より引用
ただ、実際には5年以上何年もピアノをやっている方や、明らかに子どものころに長年ピアノを学んでいた方も出場しているのが現状です。
このように明らかに初中級以上くらいの経験を持っている方も出場し続けていると、純粋なピアノ学習初心者の方にとっては、コンクールのハードルが高く感じ、モチベーションも保てない可能性が高いです。
ただ、2020年のクラシック・ピアノ初心者部門では、完全未経験の方がエリーゼ大賞(1位)を取っているので、経験年数なんて関係ない、実力をつければ問題ないと言われればそれまでかもしれませんが・・・。
もし可能であれば、申込みの時点で「A・Bコースは初心者部門で、ピアノ学習歴が子供のころも含めて通算で5年以下程度の人が対象です」といった注意書き等が用意されていると、良いのかもしれません。
第二に、出場者の新陳代謝もある程度促進された方が良いなと個人的には思っています。
たとえば、金賞を何回もとっていたり、エリーゼ大賞を取ったりしているのに、翌年以降もまた同じ下のレベルに出場し続けている人も少なからずいらっしゃいます。
コンクールでは、下のクラスで入賞したら、次回以降は上のクラスに挑戦するのが当たり前になっていると思いますが、エリーゼ音楽祭でも、そのような新陳代謝が促進されると、初心者の方のモチベーションもより向上すると私は思います。
私も、エリーゼ大賞を取ることはできませんでしたが、前回はクラシック・ピアノの初心者部門で金賞をとれたので、新陳代謝のためにも次回からは初中級でエントリーしようと思っています。
最後に、入場後はどうしたらいいか、待機場所はどこか、など、初めて出場した方にとってはどうしていいかわかりづらい場面もあります。
ただ、この点に関しては、運営元のラコムスさんも、そんなに儲けが出るわけではない音楽事業に対して、限られた人員と時間の中で運営してくださっているので、限界があると思われます。
なので、エリーゼ音楽祭に出場したことある方が初心者の方を案内する等、共助の精神で運営をサポートし合っていけるといいですね!
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