クラリネットのマウスピースにリードを固定する道具のことを「リガチャー」と呼びます。
リガチャーには素材や仕上げ、リードやマウスピースに接する部分の形状などの違いでたくさんの種類があり、値段も様々です。
このページでは、クラリネットのマウスピースではなくリガチャーの買い替えをおすすめする理由と、リガチャーが違うと音色や吹奏感がどのように異なるのか解説していきます。
クラリネットはリガチャーの買い替えがお手軽なのに効果大!
クラリネットはリード、マウスピース、リガチャーの組み合わせで音色を作ります。
この3点を「仕掛け」「セッティング」とも言いますね。
クラリネットの仕掛けのうち、最も簡単に、かつ効果的に音を変えられるのはリガチャーです。
その理由を説明していきましょう。
マウスピースを変えるのは勇気がいるから
マウスピースは、音色、吹奏感、音量、音程とすべてを決める、クラリネットの最重要アイテムです。
定期的、継続的に演奏している人(いわゆる現役の人)が、これを他のものに変えるのは一大事と言えるでしょう。
マウスピースを変えるとリードもそれに合ったものが必要で、必ずしも今までと同じリードが使えるとも限りません。
マウスピースもリードも買い直すとなれば、仕掛けがガラリと変わってしまうので、アンブシュア(口の形)も変わる可能性があります。
その点リガチャーは、マウスピースやリードのように主体的に働くのではなく、その働きを補佐するアイテムです。
合わなかったときのリスクがゼロとは言いませんが、マウスピースを変えるよりもずいぶん気楽に考えられるでしょう。
逆に言うと「現状のすべてが不満」という方は、まず自分に合ったマウスピースを探すといいかもしれませんね。
リガチャーを変えるだけで、まったく異なる音色に変わるから
一般的な樹脂製マウスピースの場合、違うモデルに変えると音色、吹奏感、音量、音程などすべての要素が少しずつ変わります。
特に割合が大きいのは吹奏感(息を入れた感じ)の変化でしょうか。
これは自分自身が感じる違いで、周囲の人には気づかれないことも多いようです。
そして、リガチャーを変えた場合には、主に音色が変わります。
今まで使っていたものと素材や形状が違えば違うほど、劇的な変化を実感できるでしょう。
音色の違いは具体的には、明るい/暗い、軽い/重い、硬い/柔らかい、などと表現されます。
つまり、マウスピースは1本でも複数のリガチャーを使い分ければ、それぞれにまったく違うサウンドを楽しむことができるということです。
曲によってマウスピースを使い分ける人もいますが、リードを新たに選ばなくてもいい分リガチャーを変える方が手軽です。
気軽に、しかも効果的に音色を変えられるなら、リガチャーを変えない手はないでしょう。
リガチャーは気分も変えるから
楽器店に並ぶリガチャーは見ているだけでも楽しいものです。
例えば金属製なら定番のゴールド、シルバーはもちろん、ピンクゴールドやヴィンテージ風の色合いのものまで、まるで装飾品のように美しい仕上げのリガチャーがそこにはあります。
大半のクラリネットマウスピースは黒一色で個性的ではありませんし、リードは奏者側に向いているので他の人には見えません。
しかしながら、リガチャーであれば、まず見た目で変化をつけることができます。
したがって、選ぶ楽しみがありますし、リガチャーを新しくしたらこんなことできるかな、こんなことしてみたいな、という気持ちが生まれてくるでしょう。
新しい服や靴を買ったら出かけたくなるように、リガチャーを新調すれば気持ちにも変化が生じるものです。
「なんとなく気が乗らない」とマンネリ状態に陥っている時には、調子を落とすことなく雰囲気を変えられるリガチャーの買い替えがおすすめです。
リガチャーの種類による違いは?クラリネット・リガチャーの選び方
では、クラリネットのリガチャーにはどんな種類があり、どれを選べばいいか考えてみましょう。
リガチャーは主に3つの要素の組み合わせで構成されています。
- 素材…金属製、革製、木製、樹脂製など
- リードの留め方…表締め、逆締め
- ネジの本数…0本、1本、2本
例えば、楽器に標準付属のリガチャーの多くは金属製で表締め、2本ネジのリガチャーです。
これは安定した吹き心地のセッティングですが、同じ金属製でも逆締め、1本ネジのリガチャーにすれば、息が入りやすく良く響く音になりやすいです。
また、逆締め、1本ネジのままで素材を革製に変えれば、柔らかいサウンドになります。
このように、3つの要素の組み合わせで音色に驚くほどの違いが生まれるのです。それぞれの要素についてチェックしていきましょう。
素材の違い
クラリネットリガチャーの第1の要素は、「素材」です。
最もバリエーションが豊富な金属製、マウスピースを柔らかく包み込む革製や合皮製の他、新素材のリガチャーも多数発売されています。
金属製のリガチャー
金属製のリガチャーは、吹き方を間違えると音が細く鋭くなり過ぎるものもありますが、響きが多く、ピアニシモからフォルテシモまで幅広いダイナミック・レンジを体感できます。歯切れの良い音を出しやすいことも特徴です。
金属製のリガチャーには、複数の仕上げ方があります。
主に、「金メッキ仕上げ」「ピンクゴールド仕上げ」「銀メッキ仕上げ」があり、仕上げによって音色も変化します。
- 金メッキ仕上げ…華やかで芯のある音
- ピンクゴールド仕上げ…金メッキよりも少し柔らかく深みのある音
- 銀メッキ仕上げ…しっとりと落ち着いた音
このように、仕上げによってそれぞれ個性のあるサウンドが楽しめます。
革製、合皮製のリガチャー
革製、合皮製のリガチャーは、息を入れた感じがやや重く、音の切れ目がぼやけやすいのですが、クラリネット吹きなら誰もが目指す「柔らかく木管的な音」を出すことができます。
合皮製は、初心者など息の量が少ない奏者ですと音量を出すことが難しいリガチャーです。
一方で、ボリュームが出すぎてしまうパワープレイヤーが他の奏者とアンサンブルする場合に使うと、バランスが取りやすくなるでしょう。
その他素材(木製、樹脂製など)
その他素材とは具体的に、木製や樹脂製のほか、麻や綿糸をより合わせたり金属ワイヤーに布を巻くなどした紐状のリガチャーもあります。
木製や樹脂製は、金属製に比べるとおとなしい印象になることが多いのですが、音があちこちに飛んでいかない分、コントロールがしやすいリガチャーです。
紐状のリガチャーは、麻や綿など自然素材のものですと、余計なものを付け加えないシンプルでまとまった音色になります。
一方で、金属ワイヤーが入っていると、金属製リガチャーのように輪郭がありボリュームのある音色が出ます。
リードの留め方による違い
続いてのクラリネットリガチャーの違いを生む要素は、「リードの留め方」です。
リガチャーはリードをマウスピースに固定する道具ですが、その固定の仕方で2種類に大別されます。
その2種類の留め方とは、リード側に留めネジが来る「表締め」、リードの反対側(マウスピースの背中側)に留めネジが来る「逆締め」です。
前提として、リガチャーは右利き用にできています。リガチャーの向きがわからなくなったら、右側にネジの頭が来るようにセットするのが正解です。
表締め
表締めは、リードの上にネジという重さのあるパーツが乗っかっているという構造です。
そのため、リードの振動を抑え、かっちりした安定感のある音を出すことができるリガチャーです。
また、表締めは、ネジの締め具合が音色に大きな影響を与えるリガチャーでもあります。
逆締め
逆締めは、表締めのようにリードに負担がかからない構造になっています。
したがって、息に対する反応が良く、開放的な音を出すことができるリガチャーです。
最近は逆締めタイプのリガチャーが多く出回っています。
留めネジの本数の違い
リガチャーは「留めネジの本数」でも音色が変わります。
1本であれば軽いので、息が入りやすく明るく軽快な音色になります。これが2本になると、重さが出るので吹き心地がやや重くなり、暗い音色になります。
また、ネジが1本であれば付け外し時の調整が簡単ですが、マウスピースの形状によっては歪みが出てしまう可能性があります。
2本タイプは1本に比べ手間は倍ですが、ネジの締め具合を上下で変えるなどすればセッティングや音色の微調整をすることができます。
ネジがないタイプは、リング状でシームレスなので、マウスピースやリードの振動を逃すことなく伝えることができます。
マウスピースやリードの形状によってはフィットしない場合もありますが、形がうまく合えば、息が太く入り音量を出すことができるリガチャーです。
リガチャーの役割の変化とバリエーション
その昔、クラリネットのリードは紐でぐるぐる巻きにしてマウスピースに固定していました。
これがリガチャーの原型で、現在でも紐を使用してリードをマウスピースに取り付けているクラリネット奏者はいます。
紐式リガチャーも慣れれば素早く巻けるらしいのですが、誰にでも簡単に確実にリードが固定できるよう、様々な素材、形状のリガチャーが生み出されてきたのでしょう。
近年「リードを固定する」というリガチャー本来の目的のみならず「重さのバランスを変えて音色に変化を持たせる」「形状や色などで見た目にも楽しめる」など、新しい機能が求められるようになりました。
そのため、リガチャーのバリエーションはより一層豊かになってきています。
次の休日には楽器店へお気に入りのクラリネットリガチャーを見つけに行きませんか?
選ぶのに迷ってしまいそうですが、サウンドはもちろん、気分もきっと変わるのでおすすめです。
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