このページでは、ブルグミュラー25の練習曲より、「アヴェ・マリア」について解説していきます。
アヴェ・マリアを音楽的に演奏するためには、キリスト教の宗教的な側面と音楽の関わりについての理解が欠かせません。
楽曲の概要だけでなく、曲名の背景や宗教的な側面について、詳しく学んでいきましょう!
ブルグミュラー「アヴェ・マリア」の概要を解説
「アヴェ・マリア」は、ブルグミュラー25の練習曲の19番目に掲載されている曲です。
拍子は3/4拍子で、調はイ長調で3つの高さの音に調号の♯がつきます。
楽曲の形式は、A-B-A-Codaの三部形式です。
テンポはAndantinoで、「やや緩やかに、Andanteのテンポよりやや速く」です。
Andanteは「歩くような速さで」を表すので、歩くスピードより少し早めというスピード感です。
また、強弱記号はp(ピアノ)。
そして、religiosoの指示が・・・これは「宗教的な・敬虔な」という意味で、この曲ではとても重要な意味を持ちます。
それは、後から出てきますが、この曲が「コラール」であることと関係しています。
以下に参考動画を載せておきますので、楽曲のイメージをつかみたい方はご参照ください。
曲名の「アヴェ・マリア」とは?解釈を深めるために
ブルグミュラー25の練習曲シリーズの19曲目は、「Ave Maria」(アヴェ・マリア)。ラテン語で「おめでとう、マリア」という意味です。
キリスト教において、処女マリアが神の子を身ごもったことを天使に告げられる、いわゆる受胎告知という重要なシーンでの言葉から来ています。
「Ave」とは「aveo(健康である、幸福である)」という自動詞の命令形で、誰かに会ったときや別れるとき、「やあ」「おめでとう」「さよなら」等の意味で使うのだとか。
特に聖母マリア信仰の深いカトリックでは主の祈りと並ぶ基本的な祈りの言葉であり、数多くの曲が作られていますね。
有名なところでは、グノー作曲(J.S.バッハの平均律第1巻第1番のハ長調プレリュードを伴奏として、メロディを付けたもの)やシューベルト作曲のものがあります。
ヨーロッパ音楽はキリスト教と密接に結びついているため、どうしても曲を理解するうえでキリスト教のことを多少は知っておきたいところです。
というわけで、次の章では「アヴェ・マリア」の宗教的・キリスト教的な側面について説明していきます。
アヴェ・マリアとコラールの形式
この曲の出だしを譜面で見て、キリスト教に親しんでいる人ならば「コラールだ!」とピンと来るはずです。
コラールとは、もともとはルター派の教会で信者によって歌われるための讃美歌のことです。
キリスト教のカトリック教会の聖職位階制度を否定し、聖書に基づく信仰を重視する考え方がプロテスタント。
マルティン・ルター(1483~1546)の宗教改革がきっかけで、ルター派をはじめ、さまざまな宗派が生まれました。
聖書に基づく信仰ということで、ルターが重視したのはわかりやすさ。
聖書をドイツ語に訳したのもルターですし(それまでは一般人には理解不能のラテン語だったため、教会や聖職者を介してしか内容を知ることはなかった)、ドイツ語の歌詞と単純で歌いやすいメロディの混成四部合唱(ソプラノ、アルト、テノール、バス)による讃美歌(=コラール)を導入したのもルターです。
それまでは専任の聖歌隊がラテン語で、グレゴリオ聖歌とかミサ曲とか、一般人には簡単に歌えないような曲を歌ってたんですね~。
また、讃美歌を歌う前に、パイプ・オルガンでコラールに基づく前奏曲が演奏される、ということも行われます。
そのようなわけで、曲の冒頭に記されている「religioso(レリジオーソ)」とは「敬虔に」「宗教的に」という意味です。
以上のことを踏まえて、「アヴェ・マリア」の曲に関しては、教会の様子やパイプ・オルガンの響き、讃美歌の合唱を思い浮かべてみてください。
「アヴェ・マリア」の曲の構成は?
「アヴェ・マリア」は、A-B-A-Codaの三部形式で書かれています。
最初のA部分(1~8小節目)は典型的な四声部のコラール。
中間部(B:9~16小節目)は、音域的にバスが休みで、ソプラノ、アルト、テノールの三声部であると考えることができます。
17小節目からのA部分はヴァリエーション(変奏)。ソプラノのメロディは変わりませんが、それ以外の声部が八分音符で動きます。
響きが豊かになり、パイプ・オルガンと混成四部合唱に加えて、弦楽四重奏も重ねて演奏しているようなイメージが湧きますね。
そして、25小節目からのCodaは、Ⅰ→Ⅳ→molldurのⅣ(音階の第六音を半音下げた短三和音)→Ⅰという和声進行です。
これはコラールの最後に必ず付く、Ⅳ→Ⅰのアーメン終止を踏襲しています。
ペダルを使用するか否かについて
最後に、「アヴェ・マリア」の演奏においてペダルを使うかどうかについて考察しておきたいと思います。
「あっヴぇ・マリア」は、ソプラノのメロディが主であることはもちろんですが、その他の声部をどう聴かせるかに心を配ることで、響きの豊かさが全然違ってくると思います。
この曲でペダルを使用するか否か、判断が難しいところで、ペダルを使うことで音を保つことができ、響きを豊かにできる反面、パイプ・オルガンのまっすぐな響きから少し離れてしまうかも、という懸念も生じます。
これらを両立するためには繊細なペダルの使い方が要求されると思うのですが、いきなりこの曲でやろうとするのは意外とむずかしいもの・・・。
21曲目の「天使の合唱」でペダルの使い方に慣れてから、この曲に戻るという方法もアリかもしれません。
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