バラード

ブルグミュラー「バラード」の楽曲解説!解釈・弾き方のコツ・練習方法

ブルグミュラー「バラード」楽曲解説のイメージ画像

このページでは、ブルグミュラー25の練習曲の中でも人気の曲、「バラード」について解説します。

なんとなく「アラベスク」と共通点を感じる「バラード」、弾き方のコツや練習方法を学んでいきましょう!

 

ブルグミュラー「バラード」を解説!背景や特徴は?

「バラード」は、ブルグミュラー25の練習曲の15番目に載っている曲です。発表会でも人気の曲です。

ピアノ曲でバラードと言えば、ショパンのバラードを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

バラードは中世の詩の形式として始まり、詩に音楽を付けた声楽曲から、ショパンによって器楽曲として確立されました。

器楽曲としてのバラードに決まった様式はなく、多種多様な楽想が物語風に展開されます。幻想曲、即興曲の延長にあると言えるでしょう。

ブルグミュラーの25の練習曲の出版は1851年。その前に、すでにショパンのバラードが出版されているので、おそらくショパンのバラードのことも知った上で、作曲したと考えられます。

拍子は8分の3拍子、調はハ短調です。

テンポ表示は、「Allegro con brio」(アレグロ・コン・ブリオ)。

ハ短調で「Allegro con brio」と言えば、ベートヴェンの交響曲第5番「運命」の第1楽章を連想せずにはいられません。

ちなみに「con brio」は、「con」が「~で(英語のwithに当たります)」、「brio」が「活力」「活気」「生気」、合わせて「生き生きと」「生気に満ちて」といった意味になります。

楽曲の形式はA-B-A-Codaの三部形式です。

以下に参考動画も載せておきますので、ぜひイメージをつかんでください。

 

「バラード」の弾き方のコツ・練習方法は?

ブルグミュラー「バラード」の概要や背景を確認したところで、続いては弾き方のコツや練習方法を詳しく見ていきましょう!

右手の和音の連打、続く左手の不穏なメロディ(A:1~30小節目/57~86小節目)

1小節目からは、A-B-AのAの部分です。

この出だし、なにかに似ている気がします・・・。

そうだ、2曲目の「アラベスク」です!ただし、右手と左手の役目が入れ替わっています。

というわけで、アラベスクと注意する点も同じです。

左手のメロディが入った途端、右手の和音の刻みが遅くなりがちなので、あくまでもテンポキープ。

左手のメロディはテンポを変えずに、「ド」シ「ド」ソ「ラ」シ…と、右手の和音と重なる音(拍の頭の音)だけ弾いてみましょう。

その感覚がつかめたら、間の音を入れていきます。間の音は、拍の頭の音よりも軽めに、少し抜き気味に弾くと、力まずに弾けます。

7小節目(9・15・17・63・65・71・73小節目も同じ)の左手のsfのラは躊躇なく、鋭く。

この音によって、右手の和音にプラスして付加六の和音(マイナーシックスコード)の響きを作っているとも言えるし、次の小節で変化する右手の和音の減七の和音(ディミニッシュセブンス)の響きを先取りしているとも言えるし…。

まさに、「misterioso」(ミステリオーソ/神秘的に)。そうそう、この「バラード」の出だし、シューベルトの歌曲「魔王」の前奏にも似ていませんか。

そうなると、sfのラの音は、嵐の夜の闇を切り裂く雷光のイメージです。

19~23(75~79)小節目は、1小節ごとにテラス式クレッシェンドしてくださいね。

テラス式クレッシェンドとは、バロック時代によく使われた表現技法で、かたまりごとに階段のように音を大きくしていくcresc.のやり方です。

今回は、1小節目→2小節目・・・と、小節ごとにかたまりとして捉えて、クレッシェンドしていくようにしましょう。

テラス式クレッシェンドをする際のポイントは、最初のかたまりの音量を抑えめにしておくことです。

抑えめの音量から、かたまりごとに意識的に音を大きくしていくことで、はっきりとした抑揚を表現することができます。

また、ここの3拍目の八分休符、非常に大事です。単なる空白にせず、息をのむような緊張感がほしいです。

この曲に限らずですが、「休符は休みなのではなく、音のない音楽」と師匠に言われましたね~。

24~27(80~83)小節目は主和音の分散和音の下行形ですが、ここは4小節ひとまとまりでいきたいものです。

意識していないと適当な指使いでバラバラに弾いてしまいがちなので、まずはこの4小節間をスラーでつなげて弾いてみてください。

その指使いのまま、鍵盤の近くで指先だけ離してスタッカート。レガートで弾いても、スタッカートで弾いても、指の使い方が変わらないようにしましょう。

fをキープして、下行音型で音がだんだん小さくなってしまわないように。

28~30(84~86)小節目の和音の跳躍、このパターンも「アラベスク」で出てきました。

次に移動する鍵盤の位置を先に目で確認しておき、最短距離を最速で移動。すぐ音を出すのではなく、鍵盤の上に指を乗せた状態で一瞬待つ、でしたね。

30小節目3拍目の八分休符にはフェルマータが付いているので、充分に間を取って、ガラッと雰囲気の変わる中間部に向けて、気持ちを作りましょう。

対する83小節目3拍目の八分休符には、フェルマータが付いていません。間延びしないよう(もちろん、短すぎてもダメ)、すぐにCodaへ突入です。

甘い追憶あるいは幻想(B:31~56小節目)

31小節目からは、Bの部分です。ここではハ長調に転調します。

そして、右手にメロディが現れます。dolceです。甘く伸びやかに聴かせたいですね。

出だしのソ→ド→シ→ソの動きは、「アラベスク」の中間部の右手、ミ→シ→ド→ラと反進行になっていて、偶然かもしれませんが、呼応しています。

41~42小節目にかけては、「poco riten.」の表示。

その後のテンポを戻す表示としては、通常「a tempo」や「in tempo」が使われるのですが、ここでは45小節目に「animato」(アニマート)と書かれていることに注目。

動詞の「animare」(アニマーレ/~に生命を与える)から派生した言葉で、訳すれば「生き生きと」という意味になりますが、命を吹き込まれて動き出す…というようなイメージが喚起されます。

47小節目から繰り返し出てくる♭ラの音は、平和な日々に不穏な影が忍び寄り、どこかで悪魔が「ふっふっふっ…」とほくそ笑んでいるようです。

47・48・51・52小節目の右手のメロディ(♭ラーソ)に付いている松葉のdim.(ディミヌエンド)記号は重要。♭ラの音は強く、そしてソの音はうんと抜いて、弱く。

右手の♭ラの後、左手のシレファの和音が入ることでまず減七の和音の緊張感が生まれ、さらに右手がソに変化することで今度は属七の和音の響きになり、和らぎます。

その緊張→緩和を感じながら弾きたいところです。

53小節目からは両手のユニゾンですが、sfの♭ラの後、次のソの音をどのくらいの音量にしたらよいのか、迷う人が多いです。

うっかりすると強く出過ぎになるので、♭ラの音の減衰をよく聴いて、自然につながるような音量にしましょう。

4小節にわたってdimin.(だんだん弱く)してA部分のp(弱く)につなげていかなくてはいけませんから、最初のsfは強く出しておかないと、そこまでもちませんよ。

また、右手のスラーは56小節目で終わっていますが、左手は57小節目までつながっています。右手と一緒に切れてしまわないように、注意しましょう。

去って行ったと思わせて…(Coda:87~96小節目)

87小節目からはCodaに突入します。

Aメロ冒頭「ドシドソラシ」を4回、両手のユニゾンで繰り返します。fからdimin.の指示もあります。

両手のユニゾンでは弾けているつもりでも、いざ左手だけで弾いてみると、指が動いていないということがありがちです。

そのため、左手だけできちんと弾けているか、確認することが大切です。

両手で弾くときも、左手が主導権を握って右手はそれに添うように弾くと、ちょうどよい感じでクリアに聴こえますよ。

92~94小節にかけては主和音が1オクターブずつ上昇しながら、pからさらにdimin.…しかし、突如、中音域で主和音がsfで鳴り響き、打ち止め。

不吉な影は遠ざかり、これで一安心…と振り返ったらヤツがいた!みたいな。サスペンス(あるいはホラー)が感じられます。

ブルグミュラー「バラード」の魅力

「アラベスク」と似た要素を持ちながら、もっと妖しく、毒のある黒いロマンを垣間見せる「バラード」。

右手の和音に乗って左手のメロディが十六分音符で動く、という始まりがカッコイイし、「すごいことをやってる!」という気になります。

子どもが弾く前に「難しそう」と尻込みするのもこの部分なのですが、コツをつかんでしまえば意外とむずかしくありません。

そして、このモチーフが繰り返し出てくるので、ここができればほとんどできたも同然です。

というのは大げさですが、心理的に難関クリア!って感じで、他の部分も乗り切れます。

それに、この曲は非常に弾き映え(聴き映え)がするのが大きな魅力です。

練習が停滞してダレてしまいがちな時期に、こんな魅力的な曲をここに配置しているブルグミュラーさん。曲集の構成までよくわかっていらっしゃいます!

 
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