このページでは、ブルグミュラー25の練習曲より第3曲「パストラル(牧歌)」について、曲のイメージや表現方法などをご紹介します♪
「パストラル」の全体像や解釈について学び、演奏のコツを知っておくことで、よりブルグミュラーさんが楽譜に込めた思いを表現することができるようになります。
ぜひこのページで「パストラル」のイメージをつかんでいってください♪
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ブルグミュラー「パストラル(牧歌)」の楽曲解説|曲の概要は?
ブルグミュラー「パストラル」は、ブルグミュラー25の練習曲の3番目に掲載されている楽曲です。
「パストラル」は、ブルグミュラー25の練習曲の前の曲「アラベスク」と同様、A-B-Aの三部形式で書かれています。
楽曲の調はト長調、拍子は8分の6拍子です。速度表示はAndantino(アンダンティーノ)。
Andanteは「歩く速さで」という意味ですが、これはせかせかと歩くのではなく、ゆったりと歩くイメージです。
ですから、実際は「ほどよくゆっくり」といったところでしょう。
~inoという語尾変化は元々の意味を弱めますので、Andanteよりは少し速く、前に進む感じになります。
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「パストラル(牧歌)」の解釈のポイントは?
ブルグミュラー25の練習曲の3曲目は、「パストラル」(牧歌)という名前がつけられています。
「パストラル」というのは、羊飼いのライフスタイルや牧畜、つまり水や食糧を入手するために季節によって広大な陸地を家畜を移動する様子を表しますが、実際のところ、田舎の平和でのどかな雰囲気、一種の理想郷として描かれることが多いですね。
イタリアやドイツのバロック後期の音楽ではクリスマスと関連付けられ、バスのドローン(単音で変化の無い長い音、バグパイプの低音のイメージで、完全5度の複音のロングトーンなど)や8分の6拍子あるいは8分の12拍子、といった特徴があります。
なぜパストラルがクリスマスと結び付けられるのかと言うと、羊飼いたちが天使から「救い主が誕生する」というお告げを受けて赤ん坊のイエス・キリストの元を訪れる、というシーンがあるからなんですね。
ちなみに、「パストラル」の名前を持つ曲は、ブルグミュラーさんの作品だけではありません。
他にも複数の「パストラル」と名づけられた曲が存在するのです。
たとえば、、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は、作曲家自身によって「Pastorale」と標題が付けられています。
ドイツ語では「パストラーレ」と読みますが、「パストラル」と同じ言葉なんですよ。
ベートーヴェンにはめずらしく(?)、楽章ごとにも描写的なタイトルが付いています。
ベートーヴェンのピアノソナタ第15番(op.28)にも「田園」の通称がありますが、こちらは出版社が付けた名前で、ベートーヴェンは関与していないようです。
他にも、音楽だけでなく関連する美術や文学の「パストラル(牧歌)」作品があります。
ブルグミュラーのパストラルに限らず、そのような幅広いパストラル作品に触れるようにすれば、「パストラル」のイメージがより具体的に描けるはずですよ!
「パストラル(牧歌)」の弾き方のコツと練習方法は?
ここまででブルグミュラー「パストラル(牧歌)」の全体像やイメージについて確認してきました。
そしてここからは、「パストラル」のイメージをふまえて、弾き方のコツについて練習方法と共に学んで行きましょう!
イントロ(1~2小節目):《アルプスの少女ハイジ》のイメージ
パストラル(牧歌)の前半の特徴は、右手のみのメロディーで曲が始まることです。
右手のみでの演奏のため、単調になりやすいのが気を付けるべきポイントです。
意識して音の上下に合わせて抑揚をつけるようにすることが、パストラルの前半を音楽的に演奏するためのコツです。
イメージとしては、「《アルプスの少女ハイジ》のオープニング」を思い描くとよいでしょう(笑)。
具体的に言うと、2小節目2拍目の高いソの音に向かってcresc.(だんだん強く)、そして3小節目に向かってdim.(だんだん弱く)、というふうに山をつくるようにましょう。
楽譜には「dolce cantabile」と書いてあります。「やわらかく、歌うように」ですよ!
主題(3~10小節目):平穏な日常の始まり
3~10小節目は主題に入ります。ここからようやく左手の和音が入ります。
この部分は三和音(3つの音を重ねたもの)ですが、低い音と高い音はソとレです。
これはつまり、完全5度のドローン(単音で変化の無い長い音)であることを意味します。
上の「パストラル(牧歌)」の解釈のポイントの部分でも触れましたが、パストラルには完全5度の長めの和音が良く用いられます。
そして、その特徴がブルグミュラーの「パストラル」にも踏襲されているのです。
和音を演奏する際の注意点ですが、メロディと比較してうるさくならないようにしましょう。
右手には装飾音が入ります。装飾音を入れようとすると、力が入って音が大きくなりがちです。
しかし、装飾音はあくまでも飾り。メインの音を邪魔してはいけません。
最初は装飾音を入れずに弾いてみるとよいでしょう。
そして、装飾音を入れたときもその雰囲気が変わらないようにしましょう。
メインの音の鍵盤にしっかり指を置いて、装飾音は軽く引っ掛けるようなイメージ。装飾音は音がかすれてもいいくらいの感覚で弾くと、バランスとしてはちょうどよくなります。
9~10小節目から左手はドローン音型を離れ、音域も高くなります(ト音記号に変わるので注意!)。
ここでは二重唱のように、右手のメロディと一緒に絡んで、歌い上げましょう。
中間部(11~18小節目):変化の予兆…?!
続いては、11小節目からの中間部の弾き方のコツです。
冒頭のp(ピアノ)に対し、中間部(11~18小節目)はmf(メゾフォルテ)で始まります。
しかも、この曲のこれまでの中で最高音のラの音から始まります。
左手の和音と合わせてしっかりと音を響かせ、その前までの小節とのコントラストをつけましょう。
12小節目の1拍目に向かって音が下がるので自然にdim.(だんだん弱く)に。そして、また次の小節の高音のラに向かってcresc.(だんだん強く)というふうに、谷型の抑揚を2回繰り返すようなイメージです。
続く15小節目は、これまでとガラッと変わった雰囲気に。
左手は再びト音記号の高音域に上がり、右手の♯ドと左手の♭シで増2度(半音3つ分離れた音)の音程ができます。
増2度の音程は、ある種の緊張感を生み出す音程です。
天気が急変したのか、オオカミが姿を現したのか…ちょっと不穏な空気が流れませんか?
この曲に限らず、増2度(あるいは転回音程の減7度)というのは特別な意味を持つので意識しましょうね。
17小節目では、不穏な雰囲気から再び元の平和な世界に戻ってきます。めでたしめでたし(笑)。
再現からCodaへ(19~29小節目):平穏な日常からの視点の広がり
19~29小節目は曲の後半部分に入り、再び主題が登場します。
しかし、23小節目から左手の和音に変化が表れ、それに伴い、右手のメロディーも変化していきます。
ここで「左手の和音がわからなくなる!」という人は、ベースラインに注目しましょう。
最初のソから、23小節目でファ、24小節目でミ、25小節目でレ、と一音ずつ音が下がっていくことに意識を向ければ音が取りやすくなります。
23小節目から25小節目にかけてcresc.(だんだん強く)していきますが、26小節目ではp(ピアノ)の指示が・・・。
p(ピアノ)は弱い音を表現する箇所なので、ドスンと大きい音を出してしまわないように注意しましょう。
その後には、Coda(終結部)に入ります。
dim.e poco rall.(だんだん弱く、そしてだんだん遅く)の指示があります。
特に、最終小節の右手の上行形アルペジオ(分散和音)のスタッカートは、鍵盤から指が離れすぎてしまうと音が大きくなってしまう傾向にあります。
ソシレの和音に指を乗せた状態のまま、スタッカートをするとよいでしょう。最初はレガートで弾く練習をしましょう。
左手の最後の音も低音域のため、無防備に弾くとびっくりするくらい大きな音が出てしまいます。(ピアノは低音の方が大きい音が出るようにできているため!)
ゆっくりと時間をかけて鍵盤を押すようにすると、静かな音が出せます。
私のイメージでは、この曲の終わりは視点(カメラ)が上空に行き、どんどんズームアウトしていって全景を映し、地上の人物が小さな点になって消えていく…という情景が浮かんできます!
まとめ:自分で映像イメージやストーリーを描くことの大切さ
「パストラル(牧歌)」は全体的に穏やかな曲なので、平坦な演奏になってしまいがちです。
また、音の出し方によっては乱暴な演奏に聞こえてしまうことも…。
「パストラル」の雰囲気を大切に、表情豊かな演奏をするためには、自分でプロモーションビデオを作るつもりで、音楽に合わせてカメラワークやストーリーを考えるのもひとつの方法かもしれません。
大事なのは、自分なりに曲のイメージを描いてその曲を再現できるように練習することです。
楽譜から曲をイメージする→それを再現する、を繰り返すことで、自分ならではの音楽を創り出せるようにしていきましょう!
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