ソナタ形式

ソナタ形式とは?転調と主題に着目すれば音楽のストーリーがわかる

ソナタ形式のイメージ画像

提示部?展開部?主題?転調?だから何?そんな方向けに【ソナタ形式とは?】を映画や小説に例えてわかりやすく解説!

【 ソナタ形式の意味 】

ソナタ形式とは、歌詞のないソナタ(=楽器のみで演奏される曲)にストーリーを生み出すために用いられる、楽曲の構成の「型」のこと

楽曲にドラマティックな物語を生み出すために、音楽における"登場人物"に当たる「主題」が変化し、また、"ターニングポイント"に当たる「転調」が用いられるのが特徴である。

ベートーヴェンの「運命」やチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」など、クラシックコンサートで定番の曲の多くには、「ソナタ形式」という作曲技法が使われています。

ただ、ソナタ形式の意味を調べても、「提示部・展開部・再現部からなる…」などと説明されていて、それに何の意味があるのか なかなか理解できないものです。

結論だけを端的に述べるとすれば、ソナタ形式とは、歌詞のないソナタ(=楽器のみで演奏される曲)にストーリーを生み出すために用いられる、楽曲の構成の「型」のことです。

映像作品や小説などに様々なストーリーがあるように、西洋音楽にも元気の出るもの、宗教的なもの、悲惨なものなど、様々な音によるストーリーがあります。

実は、これらのドラマは、物語の登場人物に当たる「主題」の変化と、物語のターニングポイントに当たる「転調」によって生み出されているのです。

ぜひこのページでソナタ形式のイメージをつかみ、これまで以上にクラシック音楽を楽しめるようになっていただければ本望です!

ソナタ形式とは?意味をわかりやすく解説

ドレミ
ドレミ
まずは、ソナタ形式とはどのようなもので、何のためにあるのかを確認するよ♪

ソナタ形式は楽式のひとつ

ソナタ形式は、「楽式」のひとつです。

「楽式」とは、楽曲の形式のことで、「楽曲形式」「音楽形式」などと呼ばれることもあります。

楽式には、「二部形式」「三部形式」「ロンド形式」「フーガ形式」などの種類があります。

たとえば、「二部形式」は大きく分けてA-Bという2つの部分から成るのに対して、「三部形式」はA-B-Aの3つの部分から成るのが特徴です。

そして、ソナタ形式もこのような「楽式」のひとつです。

なぜ「ソナタ形式」と呼ばれるのかと言えば、ソナタ形式が「ソナタ」と呼ばれる類の楽曲に良く見られる形式だからです。

というわけで、続いては「ソナタ」について見ていくことで、「ソナタ形式」についての理解を深めていきましょう。

ソナタ形式は「ソナタ」に共通して見られる楽曲形式

クラシックの歴史において、歌が主役の楽曲は「カンタータ」と呼ばれてきました。

それに対して、楽器によって演奏される楽曲は「ソナタ」と呼ばれ、カンタータとは区別されてきました。

ソナタのイメージ画像

ソナタは、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンなどの作曲家たちによって、その楽曲の形式が確立されていきます。

そして、これらのソナタを分析すると、ある共通の構成方法が見つかったのです。

このソナタに共通して見られる構成方法こそが、「ソナタ形式」(英:Sonata Form)と呼ばれるものなのです。

最初に「ソナタ形式」を発見したのは、ドイツの作曲家・音楽理論家のマルクスという人物です。

以後、ソナタに共通して見られる楽曲形式の呼び名は、「ソナタ形式」で定着することとなりました。

ソナタ形式の基本の構造は?

ドイツの作曲家であり音楽理論家のマルクスという人物は、ハイドン・ベートーヴェン・モーツァルトなどのソナタ(=器楽曲)の第1楽章に、共通の構成方法があることを指摘しました。

そして、このソナタの第1楽章に共通する構成方法は、「ソナタ形式」と呼ばれるようになりました。

ソナタとソナタ形式

ソナタ形式の構造は、大きく分けて3つの部分から成ることがわかりました。

これらの3つの部分は、それぞれ「提示部」「展開部」「再現部」と呼ばれます。

ソナタ形式の一般的な構造

ここまでは、ソナタ形式に関する説明で必ずと言っていいほど触れられている部分です。

しかしながら、ソナタ形式が3つの部分に分かれているからと言って、それにどのような意味があるのでしょうか?

ソナタ形式の目的は「ストーリー」づくり

ソナタ形式が3部構成になっている理由は、「音楽にストーリーをつくり出すため」です。

小説や映画の例で考えてみましょう。

たとえば、小説などの文章によく使われる、「起承転結」という構成方法は、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?以下は、「桃太郎」の起承転結の例です。

起 桃から桃太郎が生まれた
承 鬼が島で鬼が暴れているので、仲間を集めて
転 鬼が島に乗り込み、退治する
結 金銀財宝をもって村へ帰還する
――StoryMaker「起承転結の例 よくわかる例文10個」より抜粋

同じように、映画には「三幕構成」と呼ばれる構成方法があります。

三幕構成とは、「設定」「対立」「解決」という3つの部分で構成することによって、物語にドラマを生み出す方法です。以下は、「アナと雪の女王」の三幕構成の例です。

1) 姉のエルサ(声:イディナ・メンゼル)と妹のアナ(声:クリステン・ベル)は、王家の美しい姉妹で、仲が良かったが、エルサの魔法でアナが危険な目に遭い、エルサはアナを避けることとなった。
2) エルサは戴冠式で、アナの婚約に反対したことで、アナと口論になる。そのことで人々に自分の魔力を知られてしまったため、ショックを受けたエルサは雪深い山奥に閉じこもってしまう。その一件で、王国は雪深い冬に閉ざされた。
3) アナは、クリストフと雪だるまのオラフに助けてもらいながら、エルサとのわだかまりを解き、王国には再び平和が戻った。
――1分でわかるネタバレ『「アナと雪の女王」あらすじ・ネタバレ』より抜粋

「起承転結」や「三幕構成」に共通するのは、文章や映画のストーリーを盛り上げるための手段である、ということです。

そして、ソナタ形式は、起承転結や三幕構成のように、音楽にストーリーを生み出すための手段なのです。以下のようなイメージです。

ソナタ形式とストーリー構成の画像

ところで、小説や映画には、主人公やセリフなど様々な要素が組み合わさってストーリーをつくり出します。

ところが、ソナタには楽器しか使われないため、「音」のみでストーリーを表現しなければなりません。

この「音のストーリー」をつくり出す役割を果たすのが、ソナタ形式なのです。

ストーリーをつくるのは「主題」と「転調」

では、キャラクターや言葉などが登場しないソナタ形式では、具体的にどのようにしてストーリーを生み出しているのでしょうか?

実は、ソナタ形式にストーリーを生み出す要素は2つあります。

それは、「主題」転調と呼ばれるものです。

「主題」とは、簡単に言うと、まとまったメロディのことであり、物語の「登場人物」に当たるものです

また、「転調」とは楽曲の「調」が変化することです。

「調」についてはのちほどより詳しく説明しますが、カラオケで「キーを上げる」などという時のあのキーのことです。

ここでは、楽曲のベースとなる高さの音、くらいで捉えてください。

調が変わる(=転調)と雰囲気(=調性)が変わります。

そして、この「転調」は、物語で言うところの「ターニングポイント」に当たるものです

つまり、ソナタ形式とは、登場人物に当たる「主題」と、ターニングポイントに当たる「転調」の2つの要素によって、音楽にストーリーを生み出すための方法のことなのです。

したがって、「主題」の変化と「転調」の流れを追えるようになれば、有名なソナタ、ひいてはクラシック音楽を何十倍も楽しむことができるようになります。

後半では、ソナタ形式の構造や「主題」「転調」などについてもっと詳しく、そして、できるだけわかりやすく簡単に説明していきます。

ソナタ形式のストーリーは「主題」の変化と「転調」によってつくられる

ドレミ
ドレミ
このページでは、ソナタ形式の重要な構成要素「主題」「転調」の意味や役割について詳しく見ていきます♪

前半では、ソナタ形式は音楽にストーリーをつくり出すための型であることを確認しました。

続いて、このページでは、ソナタ形式という物語の「登場人物」と「ターニングポイント」に当たるものをご紹介します。

登場人物に当たるのが「主題」、ターニングポイントに当たるのが「転調」と呼ばれるものです。

この章では、「主題」や「調」とはどのようなもので、それらがソナタ形式の中で一般的にどのように変化しているのかをできるだけわかりやすく解説していきます!

「主題」はソナタ形式の登場人物

ソナタ形式の構成要素の1つは、「主題」の変化です。

では、主題とはいったいどのようなものなのでしょうか?

以下はArtopium's Music Dictionaryという英語の音楽辞典からの引用です。

楽曲や楽曲の一部分の土台となる旋律の形態もしくは旋律のまとまり。
――Artopium's Music Dictionary "Music Term: Theme"より抜粋・翻訳

旋律とは、メロディのことであり、つまるところ、主題とはまとまったメロディのことを指しているのです。

ソナタ形式=物語をつくる型 において、主題(=メロディ)は登場人物のようなものです。

最初に主人公が登場し、その後に主人公とは異なった登場人物が登場することにより、物語に変化をつけているのです。

この主題の変化については、オンラインミュージックスクールのLIBERTY PARK MUSICの説明が良くまとまっているのでご紹介します。

ソナタ形式の楽章は、少なくとも2つの対比的な主題を含んでいるために、ドラマティックである。聴衆は、第1・第2の(あるいは主・副の)2つの主題に耳を傾けるが、提示部においては導入の主題提示が、展開部においては主題の変形が、再現部では主題の再提示が行われる。一方では、ソナタ形式の3つの大規模な構造的領域には、典型的には主題の対立という要素が含まれており、その対立が、バロック時代の複雑的な対位法的技法よりわかりやすい物語をつくり出しているのである。
――LIBERTY PARK MUSIC "What is Sonata form?"より抜粋・翻訳

つまり、ソナタ形式においては、性格の異なる2つの主題(=メロディ)が登場し、提示部で2つの主題が提示され、展開部では主題の変形が行われ、再現部で再び主題が元の形を取り戻すのです。

基本的に、第1主題と第2主題は、男性と女性、正義と悪のように、正反対の性格を持ちます。

主人公とヒロイン、もしくは、主人公と悪役のようなイメージです。

提示部で2つの主題が提示された後に、展開部では2つの主題に様々な変化が見られます。

様々な姿に変身したり、時に相互に影響を及ぼし合いながら、ドラマが生まれます。

物語で言えば、ロボットに乗ったり、主人公とヒロインが合体したり、といったところでしょうか。

2つの主題は、展開部で様々に変化したのち、再現部では再び元の姿に戻り、エンディングを迎えます。

物語においては、登場人物が1人だけではドラマが生まれません。

複数の登場人物が登場し、化学反応を起こすことではじめて観客が惹きつけられる物語が生まれます。

ソナタ形式においても、複数の主題が登場し相互に作用することで、音楽にストーリーが生まれているのです。

「転調」はソナタ形式のターニングポイント

ソナタ形式のもう1つの構成要素は、「転調」です。

転調とは、楽曲の「調」が途中で変化することです。

調とは、英語ではkeyと呼ばれるものです。そうです、カラオケなどで「キーを上げる」などという時の、あのキーのことです。

調について詳しくは別の記事で説明しますが、単純化して言うと以下の①・②の組み合わせによって決定されます。

  1. 「ド・ド♯(レ♭)・レ・レ♯(ミ♭)・ミ・ファ・ファ♯(ソ♭)・ソ・ソ♯(ラ♭)・ラ・ラ♯(シ♭)・シ」の12種類の音のうちどれが主役の音(=主音)か
  2. 「長調」(明るい感じ)か「短調」(悲しい感じ)か
調とは?イメージ画像
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ソナタ形式では調が変化しますが、調が変化することでいったい何が起こるのでしょうか?

実は、調は楽曲の「雰囲気」をつくっています。

調が変わることで、陽気な感じになったり、厳かなイメージになったり、物悲しげな雰囲気になったりするのです。

そして、ソナタ形式では、調が変化する「転調」が頻繁に行われます。

この「転調」が、物語における「ターニングポイント」に当たるものであり、転調によって音楽の雰囲気が変化します。

転調についても、オンラインミュージックスクールのLIBERTY PARK MUSICの説明が良くまとまっているのでご紹介します。

しかしながら他方で、ソナタ形式には緊張の緩和による和声の物語という側面もある。和声学的には、提示部の目指すところは、ホームのキー(主調)から離れることにあり、典型的には、長調では属調を、短調ではこれもまた近親調である平行調へと向かう。提示部は、2つ以上の独立した旋律的主題が登場するがゆえに、2つ以上の調にまたがることとなる。
――LIBERTY PARK MUSIC "What is Sonata form?"より抜粋・翻訳

上述の和声とは、ここでは調の変化に関するルールくらいの意味で捉えてください。

そもそも、音楽の調には複数の種類があり、ある調と関係の近い調もあれば、関係の遠い調もあります。

ソナタ形式においては、最初に提示された調がホームの調となります。

そして、そこから最も近い調へ、そしてだんだん遠い調へ行き、最終的にまたホームの調へと戻っていきます。

実は、調はホームの調から離れるほど、緊張状態が生まれます。

小説などでも、主人公が強敵に出会いピンチに陥ったりしますよね?

ソナタ形式では、そのような緊張状態を、ホームから遠い調へと移動することによって生み出しているのです。

つまり、「転調」というターニングポイントがあることで、ソナタ形式に緊張が生まれ、それが物語をつくるスパイスとなっている、ということです。

「主題」と「転調」という観点を踏まてソナタ形式の構造を知ろう

以上のように、ソナタ形式においては、旋律のまとまりである「主題」が物語の登場人物、調が変化する「転調」が物語のターニングポイントの役割を果たしています。

登場人物が複数登場し、緊張が高まり、最終的に緊張が緩和されることで、歌詞のないソナタ(=器楽曲)にもストーリーが生まれているのです。

したがって、ソナタ形式を理解する上では、提示部・展開部・再現部で「主題」と「調」がそれぞれどのように変化しているのかを追っていくこと重要です。

ぜひ、オーケストラなどのソナタを聴く際には、ソナタ形式の構造と一緒に主題と調の変化にも着目してみてください!

動画で理解!ソナタ形式のわかりやすい解説動画3選

ドレミ
ドレミ
ソナタ形式を動画で理解できる、わかりやすい解説動画をいくつかご紹介します♪

ソナタ形式の説明を文字で理解しても、実際に楽曲を聴いてみないとなかなかイメージが湧きづらいものです。

そこで、ここではソナタ形式に関する3つのわかりやすい解説動画を3つピックアップしてみました。

楽曲は、ベートーヴェンの「運命」「月光ソナタ」と、モーツァルトの「K.545」です。

ぜひ、実際の音楽を聴きながら解説を読み、ソナタ形式に関する理解を深めていってください♪

ベートーヴェン「交響曲第5番 運命」の解説動画

まずは、誰でも一度は耳にしたことがあるであろう有名な曲、ベートーヴェンの「運命」の解説動画です。

ジャジャジャジャーン♪というメロディをこれでもかというくらい駆使しながら繰り広げられるストーリーがつくり出す、何度聴いても飽きることのない名曲です。

モーツァルト「ピアノソナタ K.545」の解説動画

続いてご紹介するソナタ形式の解説動画は、モーツァルトの「ピアノソナタ K.545」です。

「ソナチネアルバム」に収められている楽曲であり、ピアノ演奏者ならほとんどの人が通る有名なピアノ楽曲です。

シンプルなメロディで、聴いていて非常に心地の良い楽曲です。

ベートーヴェン「月光」第3楽章の解説動画

もう1つ、私のおすすめの楽曲の解説動画をご紹介します。

これもクラシック音楽の中ではたいへん有名な楽曲ですが、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」です。

名探偵コナンに登場するのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
月光は穏やかな第1楽章が有名ですが、第3楽章もアップテンポで非常に印象に残るメロディです。

何度も聴きたくなる楽曲なので、ぜひ聴いてみてください♪

参考文献・サイト
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