拍とは、継続的かつ一定間隔の複数の音(=音楽)を聴いているときに、聴き手が感じる音楽の鼓動のこと。
拍子とは、音楽の強弱の周期を表す、ある一定の数の拍のまとまりのことであり、四分音符・八分音符などの単純音符を音の長さの単位とする。
リズムとは、様々な長さの音と休止の組合せのこと。楽譜上では、音は音符によって、休止は休符によって表現される。
テンポとは、楽曲の速さのことであり、拍と拍の間隔によって決定される。単位はBPM。
音楽の横軸(=音の長さ)に関する言葉として、「拍」「拍子」「リズム」「テンポ」といった言葉があります。
これらの言葉はそれぞれどのような意味なのでしょうか?
そして、「拍」と「拍子」と「リズム」にはどのような違いがあるのでしょうか?
このページでは、これらの概念について、画像などをたくさん用いてわかりやすく解説していきます!
拍とは?
拍とは、継続的かつ一定間隔の複数の音(=音楽)を聴いているときに、聴き手が感じる音楽の鼓動のことです。
まず前提として、ほぼ全ての音楽は、複数の音を組み合わせてつくられます。
そして、一定の間隔で複数の音を聴いていると、人は音楽に心臓の鼓動に似たような音楽の鼓動を感じます。これが、「拍」の正体です。
拍というものをより詳しく理解するために、音の長さについて考えてみましょう。
今回は誰もが知っている「きらきら星」を取り上げます。
以下は「きらきら星」のメロディを少し演奏したものです。
「ドードーソーソーラーラーソーー ファ―ファーミーミーレーレードー」と、それぞれの音の長さが一定になっています。
では、それぞれの音の長さがバラバラであった場合には、どのように感じるでしょうか?試しに次のメロディを聴いてみてください。
どうでしたか?先に聴いた音の長さのそろったメロディと比べると、心地の良い音楽とは言えませんよね。
音楽は、それぞれの音の長さがそろった規則的なメロディによってつくられるのです。
そして、人は音楽を聴くと、一定の間隔で音の脈拍のようなものを感じます。「ドッドッドッドッ」と規則的に脈打っているイメージです。
このように、音楽を聴いたときに人間が心理的に感じ取る音楽の鼓動のことを、「拍」と呼びます。
拍は、以下の画像のようなイメージです。
画像からもわかる通り、拍は、音楽から感じ取れる一定の間隔で脈打つ心臓の鼓動のようなものです。
逆に言えば、音楽をつくる上では、規則的に脈打つ拍があることを前提にして、それぞれの音の長さを何拍分にするかを考えながら組み立てていくことになります。
つまり、拍は音楽の土台となるものなのです。この後にご紹介するテンポや拍子、リズムといったものも、一定の間隔で脈打つ拍の存在を前提としています。
テンポとは
では、続いて「テンポ」の意味を確認していきましょう。
テンポとは、音楽・楽曲の速さのことです。
では、曲の速さは一体どのようにして決まるのでしょうか?
その答えを見る前に、テンポを測るときの単位をご存知でしょうか?
テンポの単位としてよく用いられるのが、「BPM」というものです。
BPMは、英語のBeats Per Minuteの略です。BPMの意味は、「1分あたりの拍の数」です。
たとえば、BPMが60の場合には、1分間に60回の拍があるということです。もしBPMが120であれば、1分間の拍の数は120回になります。
BPMが多くなるほど、拍と拍の間隔が短くなります。
つまり、曲の速さ(=テンポ)を決めるのは拍と拍の間隔なのです。
「ドッドッドッドッ」と脈打つ間隔が短くなればなるほど、テンポが速くなる、ということです。
拍とテンポの関係は、以下の画像のようなイメージです。
テンポについても、実際の音楽で考えてみましょう。
まずは、「きらきら星」を(約)BPM 60(1分間に60拍)で演奏したものです。
続いては、同じ「きらきら星」を(約)BPM120(1分間に120拍)で演奏したものです。
いかがでしたか?拍の間隔が長いとテンポが遅くなり、拍の間隔が短いとテンポが速くなることがおわかりいただけたと思います。
拍子とは
では続いて、「拍子」という言葉の意味について理解を深めていきましょう。
拍子とは、音楽の強弱の周期を表す、ある一定の数の拍のまとまりのことです。
歌をうたう場合を考えてみましょう。
あるメロディを歌うときには、一音ずつ音を区切って歌うのではなく、いくつかの音をつなげて歌うのが普通です。
また、歌う際には、各まとまりの最初の音に力点が置かれます。
再び「きらきら星」の例で考えてみましょう。一般的には、以下のような部分に分かれ、その最初の音に少し強勢が置かれます。
きーらーきーらー
ひーかーるーー
よーぞーらーのー
ほーしーよーー
このように、音楽には一定の拍ごとにまとまりがあり、その最初の音に強勢が置かれます。
このような複数の拍のまとまりや強弱を明確に表したものが、「拍子」です。
拍子を画像で表すと、以下の画像のようなイメージになります。
拍子記号とは?
では、拍子のイメージをつかんだところで、拍子の表記方法について見ていきましょう。
拍子は、「拍子記号」という記号で表されます。
拍子記号とは、以下の画像のような上下に並んだ2つの数字のことです。
拍子記号は、「〇分の〇拍子」という読み方をします。
上の画像の例で言えば、上の数字が3で下の数字が4なので、「4分の3拍子」と言います。
これが、たとえば上の数字が6で下の数字が8になれば「8分の6拍子」、といった具合です。
このように、拍子は上下2つの数字から成りますが、これらの上下に並んだ2つの数字はいったい何を意味するのでしょうか?
まず、上の数字は、その楽曲において強弱の周期が現れる拍のまとまりはいくつか、を表しています。
たとえば、上の数字が3であれば、3つの拍ごとにひとつのまとまりとしてとらえるということがわかります。
もし上の数字が4になると、今度は4つの拍でひとつのまとまりとみなします。
上の数字のイメージを画像で表すと以下のようになります。
では、下の数字にはどのような意味があるのでしょうか?
下の数字は、1拍の単位となる音符の種類を表しています。
たとえば、下の数字が4である場合、「四分音符」が1拍の単位であることを表します。
もし下の数字が8であった場合には、1拍の単位は「八分音符」になります。
基本的に、拍子の単位としては、二分音符・四分音符・八分音符などの単純音符が用いられます。
以上をふまえると、「〇分の〇拍子」とは、下の数字の音符を単位とし、上の数字の個数分の拍で1つのまとまりと見なす、ということがわかります。
たとえば、4分の4拍子とは、四分音符4つ分で1つのまとまりと見なすことを表します。以下の画像のようなイメージです。
別の例では、8分の3拍子であれば、八分音符3つで1つのかたまりと見なします。こちらも画像をご参照ください。
強拍と弱拍とは?
拍子に関する説明の箇所で、拍のまとまりの最初の音に強勢が置かれると述べましたが、このような拍のことを「強拍」と呼びます。
一方で、それ以外の拍は「弱拍」と呼ばれ、強拍とは区別されます。
通常は、拍のまとまりの最初の拍が強拍に当たります。
たとえば、2拍子であれば、2つの拍のまとまりの1つ目の拍が強拍、2つ目の拍が弱拍になります。
これが3拍子になった場合、3つの拍のまとまりのうち最初の拍が強拍で、2・3番目の拍が弱拍です。
4拍子になった場合はどうでしょうか?
4拍子の場合、最初の拍は強拍で、2・4番目の音が弱拍です。
3番目の音は、強拍ほどではありませんが、2・4番目の拍よりは強さが感じられる拍になります。
拍子の意義は?
では、拍子は何のためにあるのでしょうか?言い換えれば、拍子の意義とは何なのでしょうか?
拍子には、以下の2つの意義があると考えられます。
- 音楽のまとまりや切れ目を明確にする
- 音楽の強弱(=抑揚)を示す
まず、「音のまとまりや切れ目を明確にする」についてです。
音楽は、切れ目なくずっと同じようにつながっているわけではありません。
ある程度のまとまりがあり、その間には切れ目が感じられるものです。
また、歌の例で見てみましょう。有名な合唱曲「遠き山に日は落ちて」のケースを考えてみます。
とーおきーやーまにーひーはおーちてー
上のように、一本調子で続けて歌う人はほとんどいないでしょう。
一般的には、以下のようなまとまりごとに歌われます。
とーおきー
やーまにー
ひーはおーち てー
この時、音楽の大まかな切れ目を表すのが、拍子の役目です。
具体的には、「遠き山に日は落ちて」は、4分の4拍子です。
つまり、「とーおきー」や「やーまにー」は、それぞれ四分音符4つ分の長さなのです。
このように、拍子は音楽の大まかな切れ目を示す役割を果たしています。
また、拍子は音楽の強弱、すなわち抑揚を示す役割をも果たしています。
先ほどのきらきら星と同じような話になりますが、音楽は強弱のない平坦なものではなく、抑揚の感じられるものです。
再び「遠き山に日は落ちて」の例で見ると、
とーおきー
やーまにー
ひーはおーち てー
のように平坦に歌われる(演奏される)わけではありません。
とーおきー
やーまにー
ひーはおーち てー
のように、強弱をつけて歌われる(演奏される)のが普通です。
そして、拍子はこのような強弱をも明確に示してくれる存在です。
具体的には、拍子の最初の音が強拍=強い音であることを示します。
このように、拍子には音楽のまとまりや抑揚を示す効果があることをおさえておけば、より人の心に訴える拍感のある演奏ができるようになるのです。
リズムとは
ここまで確認してきた「拍」や「拍子」といった言葉は、楽譜の横軸(=時間の経過・音の長さ)を表現し理解するための重要な概念です。
また、「拍」や「拍子」と似たような言葉に、「リズム」があります。
「リズム」は音楽においてとてもよく使われる言葉ですが、具体的にはどのような意味で用いられるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
先に結論を述べておくと、リズムとは、様々な長さの音および休止の組合せのことです。
音楽では、様々な長さの音や休止が複数組み合わさって、1つの曲をつくります。
※楽譜上では、音は音符、休止は休符で表現されます。
そして、音楽の音の長さに着目し、音もしくは休止の長さを組み合わせたパターンのことを、リズムと呼ぶのです。
ここでは例として、3つのパターンのリズムを見比べてみましょう。
1つ目のパターンでは、ターーターターという、長い音(=二分音符)と短い音(=四分音符)の組合せで1つのリズムが形成されています。
2つ目のパターンでは、ターウンターターというリズムができました。
1つ目のパターンと比べて、音のない箇所(=休符)が登場していることが特徴です。
3つ目のパターンは、タータタ ンタタタというリズムです。
さらに短い音(=八分音符)や短い休止(=八分休符)が登場し、より複雑なリズムになっています。
このように、リズムは音と休止の組合せ方次第で、膨大な数のパターンが考えられます。
そして、全く同じ音の高さが並んでいても、リズム次第で全然違う曲に聞こえるのです。
リズムが違えば全然違う音楽になることを、実際に聴いて確かめてみましょう。
このように、同じ「ドミソミド」という音の並びでも、リズムが異なれば全然違う曲になるのです。
音楽を構成する2つの大きな要素は、「音の高さ」と「リズム」です。
ぜひ、たくさんの曲に触れることとで、様々なリズムを表現できる力を身につけていってください。
拍と拍子とリズムの違い
では最後に、間違えやすい「拍」と「拍子」と「リズム」の違いを確認しておきましょう。
まず、拍は、継続的かつ一定間隔の複数の音(=音楽)を聴いているときに、聴き手が感じる音楽の鼓動のことです。
続いて、拍子とは、楽曲における拍の強弱の周期と、一拍の長さを表す音符の種類を表す言葉です。
例えば、4分の3拍子であれば、四分音符3つ分の時間が経過するごとに相対的に強い拍(=強拍)が現れます。
最後に、リズムとは、音と休止の長さの組合せのことです。リズムは音符と休符によって表現され、非常にたくさんのパターンがあります。
同じ音の高さの音符が並んでいても、リズムが違えば全然違うように聞こえるため、リズムは音楽に無限のバリエーションをもたらします。
そして、拍と拍子とリズムの違いをイメージで表したものが、以下の画像です。
※わかりやすいように●ではなく線で表しています。
つまり、拍は一定間隔の鼓動であり、拍子は拍の強弱やまとまりを表し、リズムは(基本的に)拍子の範囲内での音と休止の組合せのことなのです。
音楽の横軸(=音の長さ)に関するこれらの概念の意味や違いをしっかりと認識しておきましょう!
「拍」や「拍子」などの概念を理解したところで、次は楽譜上で拍子の流れを追いやすくする役割を担う「小節線」について学んでいきましょう!
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