音感・読譜力アップ!?ソルフェージュとは?意味・目的・やり方・効果などが120%わかるソルフェージュの教科書です!
ソルフェージュ(英語:solfege・solfeggio)とは、メロディや和音などの音楽を聴いて楽譜に書いたり(=聴音)、楽譜を見ながら声に出してドレミ~で歌ったり(=視唱)することによって、音感や読譜力など、すべての分野の音楽に共通する基礎能力を養うためのトレーニングのこと。
ピアノや声楽、ヴァイオリンなど、音楽を学ぶのであれば「ソルフェージュ」もやった方が良い!
・・・多くの指導者がおっしゃることですが、「ソルフェージュ」という言葉を聞いてもなかなかイメージが湧かないものです。
そこで、このページでは、ソルフェージュの内容や効果、学べる場所などについてできるだけ詳しく&わかりやすく解説しました!
以下は目次ですので、ぜひご興味のあるところをクリックして(押して)ご覧になってください♪
ソルフェージュは音感や読譜力など音楽の基礎能力を育むトレーニング
ソルフェージュとは、音感や読譜力など、全ての音楽に共通する基礎能力を育むトレーニングのことです。
音感や読譜力を養うため、ソルフェージュの授業やレッスンでは、主に楽譜を見てドレミで歌ったり、音楽を聴いて楽譜に書いたりします。
このようなトレーニングの内容を具体的にイメージするため、簡単な例題を見てみましょう!
例題で理解するソルフェージュ
ソルフェージュというものを理解するために、試しに以下の楽譜を見ながら歌ってみてください!(実際に声に出さなくても心の中でもOKです)
いかがでしたか?楽譜を見て音の高さや長さを正しく思い浮かべることができましたか?(ちなみにこの曲は「ドレミの歌」です。以下の音源参照。)
また、次は以下の音を聴いて、楽譜に書き取ってみてください。(手元に五線譜がない方などは、音の高さや長さなどを当ててみてください)
なお、この曲の調は「ハ長調」で、拍子は「4分の4拍子」です。ト音記号の楽譜を書いてください。
解答は以下の通りです。どのくらい聴き取れましたか?
以上のように、ソルフェージュでは、楽譜を見ながらドレミで歌うこと(=視唱)や、演奏されたメロディや和音を楽譜に書きとること(=聴音)などの基礎トレーニングを行います。
視唱や聴音などのトレーニングを繰り返すことで、音感や読譜力など どの分野の音楽でも必要とされる基礎的な能力を伸ばすことができるのです。
ソルフェージュの起源・歴史
そんなソルフェージュの始まりは、イタリア人修道士グイード・ダレッツォという人物が、宗教音楽を効率的に覚えてもらうために、それぞれの高さの音を「ドレミファソラシ」と名づけたことでした。
それから、音楽を楽譜に記録し共有するための、音楽の記号やルールが整備されてきました。
以上のように音楽の歴史が発展する中で、以下のことが音楽の世界における共通認識となりました。
・国際的に共通に定められた12種類の高さの音(ドレミ~などと呼ばれる)が使われる
・音の高さや音の長さは「五線」の上に音符などの「音楽記号」を書くことで表現される
このように、音の高さや楽譜の書き方(=記譜法)などの共通のルールのもとに、音楽は発展してきたのです。
ところが、音楽を始めたばかりの頃には、実際の音と、ドレミ~や音楽記号が頭の中で一致しません。
そこで、音を聴いてドレミ~を聴き分けたり、正しい音程で歌ったり、楽譜を見てメロディや和音をイメージできるようになるためのトレーニングが行われるようになりました。
このような、音の高さや音楽記号などを感覚で覚えるためのトレーニングとして発達してきたのが、ソルフェージュなのです。
音楽教室?音高・音大?独学?ソルフェージュはどこで学べる?
では続いて、ソルフェージュはどこで学べるのでしょうか?
ソルフェージュは様々なところで学べますが、大まかにまとめると以下の場所で習うことができます。
- 音楽教室(大手・音大附属・個人)のレッスン
- 音大や高校の音楽科の授業
- 本・CD・アプリなどを用いた独学
音大や音楽科のある高校など音楽を専攻する学校に通っている場合には、学校のソルフェージュの授業で学ぶことができます。
それ以外の場合には、音楽教室のレッスンで音楽の専門家から学ぶのが一般的です。
しかしながら、最近は本・テキストだけでなくアプリやWebサイトなどのソルフェージュの教材も充実してきているため、独学でもある程度学習ができるようになってきています。
何歳から?大人は?ソルフェージュの対象年齢は?
続いては、ソルフェージュを学ぶのに適した年齢について見ておきましょう。
ソルフェージュは、おおむね2・3歳くらいから学ぶことができます。(中にはもっと早くから行っている教室も・・・)
しかしながら、そのくらいの年齢のお子さんは楽器などを演奏するにはまだ未成熟であるため、ソルフェージュは楽器を始めるための前準備と捉えるとよいでしょう。
4・5歳くらいになってくると、楽器の練習を始めながらソルフェージュを学ぶのに適した成長段階に達します。
諸説ありますが、絶対音感を身につけるなら6歳くらいまでと言われることもあるので、4・5歳くらいまでに学習を始めるのがおすすめです。
また、幼児向けの音楽トレーニングには、「リトミック」と呼ばれるものもあります。
リトミックも音楽的な感覚を養うものであるという点では、ソルフェージュと共通するところもあります。
しかしながら、ソルフェージュが音楽的な能力を伸ばすことを第一の目的としているのに対して、リトミックは音楽を通じたヒューマンスキルの育成を主眼しています。
中にはリトミックとソルフェージュを組み合わせた方法などもありますが、ソルフェージュとリトミックの違いをおさえた上で教室を選ぶようにしましょう。
では、大人の音楽学習者は、ソルフェージュを学んで効果があるのでしょうか?
この点に関しては、大人になってからでもソルフェージュは十分に効果があると言えます。
というのも、私も30歳になってからソルフェージュを学んでいますが、音感が身についたり、音楽記号への理解が深まったりしていくのを日々実感しているからです。
ソルフェージュ能力は、ピアノや声楽、ギター、ヴァイオリンなど、何の音楽をやる上でも必要になる力です。
音楽を継続的に学習していく方は、ぜひソルフェージュも並行して学ぶようにしましょう♪
――ここまででソルフェージュの全体像についてお話ししましたが、この後はソルフェージュの内容や効果など、それぞれの論点についてひとつずつより深く解説していきます!
聴音?視唱?ソルフェージュのやり方・内容
続いては、ソルフェージュのやり方・内容・練習方法について詳しく見ていきましょう!
ソルフェージュの中心となるトレーニングは、①聴音ソルフェージュ と②視唱ソルフェージュ と呼ばれるものです。
ここからは、聴音と視唱の詳しいやり方を確認した後に、「固定ドと移動ド」など関連する論点についても説明していきます。
聴音ソルフェージュとは?
ソルフェージュの主要な内容の1つは、「聴音」です。
聴音とは、演奏されたメロディや和音などを五線上に音符などの記号で書き表していくトレーニングです。
聴音ソルフェージュではまず、五線紙と呼ばれる、五線がたくさん書かれた紙を用意します。
以下の画像のようなもので、たいていはノート状に五線紙が束になった「五線ノート」を使用します。
この五線紙の上に、音部記号(ト音記号・ヘ音記号など)や拍子記号(例:3/4拍子など)、音符などを記入していき、楽譜を完成させていきます。
また、鉛筆(もしくはシャーペン)と消しゴムの用意も必須です。基本的に、ソルフェージュでは書くだけでなく、消して書き直すことも多々あるからです。
音の聴き取りを始める前に、まずは音部記号(ト音記号・ヘ音記号など)や拍子(4/4拍子・6/8拍子など)が指定されます。
また、8小節・16小節など小節の数も指定されるので、音部記号や拍子、小節線、終止線などを先に書き込んでおきます。
音部記号や拍子などを書き終えたら、いよいよメロディの聴き取りです。
演奏された音の高さや長さなどを自分の頭の中で記号化しながら、五線上に音符などの記号で書き表していきます。
以下は、過去に私が聴音ソルフェージュで書き上げた楽譜の見本です。
実際に五線紙に音楽記号を書いているときには、様々なことを頭の中で考えます。
たとえば、音符はドレミファソラシドの何の音か(音の高さ)、その音は何拍か(音の長さ)、臨時記号がついていそうだ、この部分は調が変わっている(音の機能)、などです。
このように、聴いた音を自分の頭というフィルターを通して楽譜にすることで、楽譜上の記号と実際の音やフレーズが頭の中で結びついていきます。これこそが、ソルフェージュの本質なのです。
楽典の本などを読んで、音の高さや長さなどを理屈で理解することは、そんなにむずかしいことではありません。
しかしながら、音楽の理論をいちいち理屈で考えずに反射的に使いこなせるようになるためには、相応の量のトレーニングする必要があります。
この、「知っている・わかる」を反射的に「できる」にするトレーニングこそが、ソルフェージュであると言えるのです。
ソルフェージュのやり方・手順に話を戻しましょう。
基本的に、ソルフェージュのメロディは、先生がピアノなどを使用して演奏します。
私が習っているソルフェージュの先生は、通奏(=曲全体を演奏)→いくつかに分けて部分演奏(複数回)→確認の通奏→自信がない部分の部分演奏→答え合わせという順で聴音を行います。
答え合わせの段階では、間違っている部分などに、楽典的な考え方などと絡めながら解説が入ります。
そして、解説を聞いて正しい楽譜が完成したら、自分が書いた楽譜を見ながら通しで歌うのが一般的です。
ここまでが聴音ソルフェージュの一般的な手順です。最後に聴音の手順を簡単にまとめておきます。
【 聴音の手順 】
①五線紙を用意する
②終止線や音部記号など与えられた条件を先に書いておく
③演奏を聴きながら音符などの記号を記入する
④わからないところがあってもまずは楽譜を完成させる
⑤模範解答と自分の楽譜を見比べながら答え合わせする
⑥間違えた個所を確認・修正する
⑦完成した楽譜を見ながら通しで歌ってみる
視唱ソルフェージュとは?
ソルフェージュには、欠かすことのできないもう一つのトレーニングがあります。
それは「視唱ソルフェージュ」と呼ばれるトレーニングです。
視唱とは、楽譜を見ながら書かれた音符を声に出してドレミで歌うことです。
まず前提として、視唱ソルフェージュでは楽譜を見ながら書かれている記号をドレミで歌います。
国や地域によって、各音には「ドレミファソラシド」「CDEFGAHC」「ハニホヘトイロハ」など、様々な呼び方があります。
しかしながら、ソルフェージュを行うにあたっては、音として口ずさみやすい「ドレミファソラシド」で歌うことが一般的です。
そして、視唱には大きく分けて以下の2つのスタイルがあります。
- 聴音で書いた楽譜を見ながら歌う
- 初めて見る(=初見の)楽譜を歌う
①の「聴音で書いた楽譜を見て歌う」は、文字通り、上述の「聴音」で聴き取ってつくりあげた楽譜を見ながらドレミで歌うことを指します。
基本的には、先生が伴奏をつけてくださるので、それに合わせて歌っていきます。
自分で書いた楽譜であるのに、楽譜を見ながら歌うというのは意外とむずかしいものです。
それぞれの音符が何拍であるかを見極めたり、先の音は何の音であるのかを先読みしたりする必要があります。
また、歌う時の楽器は自分の声ですから、自分で音符の示す音の高さに声の高さを合わせなければなりません。
となり合う音同士くらいならまだなんとかなりますが、音が飛んだり、臨時記号が入ったりすると難易度が高くなります。
歌ってみて、きちんと音の高さを合わせることができたか、正しいリズムで歌えたかといったポイントを確認し、自然にできるようになるまで繰り返し歌うようにしましょう。
【聴音で書いた楽譜を歌う手順】
①聴音で楽譜を完成させる
②答え合わせをして正しい楽譜に修正する
③書き上げた楽譜を見ながら歌う
④正しい音程やリズムで発声できているかを確認する
続いて、②の「初見の曲を歌う」は、その場で見たことのない楽譜を渡されて、それを見ながら初見で歌います。
このような方法は「新曲視唱」と呼ばれ、音大の入試科目の1つにもなっています。
新曲視唱のやり方ですが、まず、初めて見る楽譜が先生より渡されます。
受け取ったら、少しだけ確認の時間が与えられます。曲の全体像や展開を短い時間の中で確認しなければなりません。
確認の時間が終わると、いよいよ歌い始めます。聴音したものを視唱するのに比べて、メロディを聴いたことがない分、難易度が高くなります。
聴音した楽曲にせよ新曲にせよ、視唱をする際には、歌っている部分の少し先を先読みしながら歌うことが、うまく歌うための1つのポイントです。
新曲視唱の場合も、リズムや音の高さなどが正しく発生できているかを確認して、完璧にできるようになるまで繰り返し歌って覚えましょう。
【初見の楽譜を歌う手順】
①初見の楽譜を手に取る
②限られた時間の中で楽譜の展開をざっと読む
③楽譜を見ながらドレミで歌う
④正しい音程やリズムで発声できているかを確認する
ところで、視唱したものは、一度歌っただけではまだ体で覚えていないのが普通です。
そのため、スポーツで言う素振りと同じように、何度も譜面を見ながら自分で歌うことで、体に覚えさせることが大切です。
目で見て反射的に歌えるくらい反復することで、読譜力や初見力といった演奏に必要な力を効果的に高めることができます。
ソルフェージュの「固定ド」「移動ド」って何?
視唱ソルフェージュのやり方について確認しましたが、実は視唱ソルフェージュには2つのやり方があります。
それは、「固定ド」と呼ばれる方法と、「移動ド」と呼ばれる方法です。
固定ドは調が変わっても「ドレミ~」の位置が変化しない視唱の方法であるのに対して、移動ドは調や主音が変化すると「ドレミ~」の位置も変化します。
そして、移動ドと固定ドは、それぞれ育つ音感の種類が異なります。
固定ドは、音の「高さ」に対する感覚が磨かれます。このような感覚のことを「絶対音感」と呼びます。
一方で、移動ドでは、音の「役割」や「機能」に対する感覚が磨かれます。このような感覚は「相対音感」と呼ばれ、絶対音感とは区別されます。
固定ドと移動ドについては、以下のページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
ソルフェージュには聴音・視唱以外のトレーニングもある
ここまで、ソルフェージュの基本となる「聴音」と「視唱」という2つのトレーニングについてご紹介しました。
ところで、ソルフェージュの内容は、聴音・視唱だけにとどまりません。
フランスの音楽境域に端を発する「フォルマシオン・ミュジカル」という考え方の影響もあり、ソルフェージュはより幅広い内容を扱うようになったのです。
その結果、現在のソルフェージュには「聴音」「視唱」に加えて、以下のようなトレーニングが含まれます。
- 演奏された音を聴いて楽譜に書くこと(=聴音)
- 楽譜を見ながら声に出してドレミ~で歌うこと(=視唱)
- 音楽の歴史や背景を学ぶこと(=音楽史)
- 複数の音の組合せを理解すること(=和音・和声)
- リズムや拍を聴く・打つこと(=リズム練習)
- 楽曲の構造や和声進行などを分析すること(=楽曲分析)
- 鍵盤を用いて初見や移調などを行うこと(=鍵盤奏)
このように並べてみると内容がぼやけてしまうように感じますが、ソルフェージュの本質は「音感や読譜能力などの音楽の基礎的能力の向上」にあります。
聴音や視唱で音楽の基礎体力を向上させながら、レベルアップしていったらより応用的なソルフェージュのトレーニングにも挑戦していきましょう。
NEXT > ソルフェージュの効果―どんな能力が身につくのか?
ソルフェージュの効果|どんな能力が身につくの?
ソルフェージュの具体的なやり方を確認したところで、いよいよソルフェージュをすることでどんな能力が身につくのか、ソルフェージュの「効果」について見ていきましょう!
ソルフェージュのよって伸ばすことのできる能力には、大きく分けて以下の4つがあります。
●ソルフェージュで身につく力
- 演奏された音楽を「聴く」力
- 楽譜に書かれた音楽を「読む」力
- 音楽を楽譜に「書く」力
- 音楽を正確に「表現する」力
なんだか英語の4技能「読む・聴く・書く・話す」によく似ていますね。
理由は、英語もソルフェージュも、「コミュニケーション」という目的が根底にあるからです。
では、ソルフェージュで身につく4つの能力について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう!
演奏された音楽を「聴く」力
ソルフェージュの効果のひとつとして、音楽を「聴く」力が向上することが挙げられます。
音を聴き分ける力は、ただ音楽を聞くだけで伸びるものではありません。
メロディや和音などを聴いて、それが何の音であるかを判断し、合っているかの確認を繰り返すことでやっと向上するものです。
そのようなトレーニングこそ、ソルフェージュの「聴音」に他なりません。
ソルフェージュを繰り返すことで、次第にドレミ~の音の高さを聴き分けられるようになってきます。このような能力を「音感」と言います。
ソルフェージュによって聴き分けられるようになるのは、音の高さだけではありません。
音の長さを聴き分ける力(拍感やリズム感)や、複数の音を聴き分ける能力(和声感やフレーズ感)なども発達していきます。
- 音感ー音の高さ(ドレミファソラシドや変化記号♯♭など)を識別できる能力。
- 拍感やリズム感ー拍(小節の中の強い部分と弱い部分)やリズム(音の長短やその変化)を判別できる能力。
- 和声感やフレーズ感ー和声(複数の音が組み合わさってできる響き)やフレーズ(一つひとつの音ではなく意味のあるかたまり)をとらえる能力。
音楽を「聴く」力はこれだけにとどまりません。
ソルフェージュ能力を高めることによって、演奏された音楽を楽譜に書き取ったり、自分の手で演奏したりすることができるようになります。
音楽を聴き取って自分で活用する能力は、「耳コピ」などと呼ばれます。
音楽をする人ならだれもが身につけたいと思う能力のひとつではないでしょうか。
「耳コピ」のような音楽を活用する能力も、ソルフェージュなどの「音を聴き分ける」訓練を繰り返した先に獲得できる能力なのです。
楽譜に書かれた音楽を「読む」力
ソルフェージュで身につく能力の中で最も重要なもののひとつは、楽譜に書かれた音楽を「読む」力です。
このような能力は、「読譜力」「譜読み」能力などと呼ばれます。
音楽を学ぶ人であれば、誰もが身につけたいと切望する能力なのではないでしょうか。
楽譜は、音符の種類や五線のルールなどを知っている・理解しているだけで読めるようになるものではありません。
それらの記号を実際に楽譜に書いてみる、楽譜を見ながら歌う・演奏する、などのように実際に使ってみることで、少しずつ読みながら演奏ができるようになっていくものです。
そして、実際に使ってみるトレーニングとして発達してきたものこそが、ソルフェージュなのです。
ソルフェージュでは、実際に聴こえた音を、音の長さや高さなどを考えながら楽譜に書いたり(=聴音)、楽譜の記号を読み取りながら歌ったり(=視唱)します。
このような記号やルールを実際に使ってみるトレーニングこそ、読譜力を鍛えるための最短の近道なのです。
そして、楽譜を「読む」力の目指すところは、「楽譜を見て音楽をイメージできるようになる」ことです。
実は、ソルフェージュの力を高めていった先には、音楽が鳴っていなくても楽譜を見るだけで音楽をイメージできるようになってきます。
よくアニメなどで楽譜を見ながら指を動かしたり歌ったりしているキャラクターが描かれていますよね?
あのようなシーンでは、楽譜を見ながら実際の曲を頭の中でイメージトレーニングしているのです。
楽譜を見て頭の中で楽曲をイメージできるようになれば、一曲一曲を習得するのに要数る時間を短くすることができますし、たとえ演奏ができない環境でも楽譜を見ながら頭の中で練習をすることができるようになります。
楽譜に書かれた音楽を「読む」ちからは、音楽家なら絶対に身につけたい能力のひとつです。
音楽を楽譜に「書く」力
ソルフェージュの効果として、音楽を楽譜に「書く」力が養われることもおさえておきたいポイントです。
音楽は、頭の中にメロディや和音などが浮かんでも、演奏では聴覚を通してしか他者に伝えることはできません。
ところが、音楽は歌ったり演奏するだけでは、他の人も同じ曲を演奏できるようにはならないのです。
しかしながら、楽譜があれば、頭の中にある音楽を他者に伝え他の演奏家に演奏してもらうこともできるようになります。
楽譜は、他者に自分の頭の中の音楽を伝えるために欠かせないツールなのです。
そして、頭の中を音楽を楽譜にする能力も、ソルフェージュによって養うことができます。
聴音を繰り返していけば、音の長さや高さなどを楽譜に記すための方法が感覚として身についていきます。
さらに、聴音能力を高めていった先には、音楽を聴き取って楽譜に書き起こす「採譜」の能力を身につけることも可能です。
音楽を続けていくと、自ら作曲したり、楽曲をアレンジしたりする場面も次第に増えてきます。
そんな自分の生み出した音楽を他の音楽家と共有するためにも、音楽を楽譜に「書く」能力はぜひ身につけておきたいところです。
音楽を正確に「表現する」力
また、ソルフェージュによって音楽を正確に「表現する」力を伸ばすことができます。
この音楽を正確に「表現する」力とは、どのような能力を指しているのでしょうか。
たとえば、声楽などに代表される「歌う」力もそのひとつです。
ピアノなどの楽器であれば、自分で調節しなくても演奏すれば楽器が正しい高さの音を出してくれます。
しかしながら、歌う時には、自分で音程をあわせ音色を調節しなければなりません。
このような時に、補助的な音がなくても自分で正確な音を出せる力が、ここで言う「音楽を正確に表現する」力です。
ヴァイオリンなどの弦楽器でも、同じことが言えます。
ヴァイオリンなどの楽器は、弓を引けば自然に正しい音が出るわけではありません。
弦や弓を巧みに操ることで、はじめて正しい音程で演奏することができるのです。
この時、正確な音程で演奏するためには、正しい音程を頭の中でイメージできていなければなりません。
そして、正しい音程のイメージを感覚として覚えるためのトレーニングこそが、ソルフェージュなのです。
聴音で音を聴き取ったり、視唱で正しく歌う訓練を重ねることではじめて、正しい音程で演奏したり歌ったりすることが可能になります。
また、音の高さだけでなく、音の長さについても同じことが言えます。
楽譜を見て一つひとつの音符の音の長さを理解はできていても、いざ楽譜を見ながら歌うとなると、非常にむずかしいものです。
二分音符や四分音符など比較的やさしい音符だけであればそこまで苦労はないかもしれません。
しかしながら、2つの音符をつなぐタイが登場したり、符点などが登場したりすると、一気に演奏するのがむずかしくなります。
楽譜に登場する音符や記号が複雑になっても、それらを感覚で記憶しておけば、歌や演奏でも再現することが可能です。
そのような音の長さに対する感覚も、ソルフェージュで育むことができます。
ソルフェージュで音の高さや音の長さに対する感覚を鍛えて、歌や演奏を聴く人にも正確に伝わる表現力を身につけておきましょう。
NEXT > 何のためにソルフェージュをするのか?
ソルフェージュの目的は?何のためにするの?
音を聴き取って楽譜に書き起こしたり、楽譜を見ながら歌ったりするソルフェージュ・・・
いったい何のためにやるのでしょうか?音楽をするならやった方が良いのでしょうか?目的を確認していきましょう!
大きく分けて、ソルフェージュには以下の2つの目的があります。
- 音楽の記号やルールを「使いこなせる」ようにすること
- 作曲家・演奏家・聴き手などとの音楽のコミュニケーション能力を高めること
目的①:音楽の記号やルールを「使いこなせる」ようにすること
ソルフェージュの目的のひとつは、音楽の記号やルールを「知っている」「わかる」状態から「使いこなせる」状態へと高めることです。
以下の画像のようなイメージです!
では、この「知っている」「わかる」「使いこなせる」を音楽の例で考えてみましょう。
今回は、楽譜の基本中の基本である「ト音記号」の例で確認していきます!
- ト音記号を「知っている」
ト音記号があると、五線のいちばん下の線がミで、その上の線がソで、いちばん上の線がファになる。 - ト音記号が「わかる」
ト音記号は五線上にト(=ソ)の音を定める記号だから、第2線が「ソ」の音になる。そして、ドレミファソラシドの音は、五線上の線→間→線→間・・・という順序で一音ずつ高くなる。 - ト音記号を「使いこなせる」
実際にト音記号の楽譜を見ながら、実際に手や口を動かして演奏することができる。
いかがでしょうか?「知っている」「わかる」と「使いこなせる」の間には、大きな差があることがわかりますね。
そして、学んで理解した記号やルールを実際に使いこなせるようになるためには、トレーニングを繰り返すことが不可欠です。
ソルフェージュでは、聴いた音を楽譜に書き取ったり、楽譜を見ながら歌ったりすることを反復することによって、音楽の決まりごとを体の感覚として覚えていきます。
このような地道な基礎トレーニングを繰り返すことによって、音を聴き取る能力や楽譜を見て音をイメージする能力などの音楽の基礎体力が養われるのです。
●補足―ソルフェージュと楽典の関係は?
ソルフェージュについてのよくある疑問に、「ソルフェージュと楽典の違いは何か」というものがあります。
この疑問にあるようにソルフェージュと楽典は別々のものではなく、むしろ密接な関係にあるものです。
楽典は、音楽の記号やルールを体系的にまとめたものです。
そして、楽典は本を読んだり授業を受けただけで身につくものではありません。
しっかり理解して、音楽のシーンで繰り返すことによって体で覚えていくものです。
そして、楽典を「使いこなせる」ようにするトレーニングこそが、他ならぬソルフェージュなのです。
したがって、楽典とソルフェージュの関係性は、「理論と実践」「教科書と練習問題」のような関係性であると言えます!
目的②:「音楽のコミュニケーション能力」を伸ばすこと
ソルフェージュのもうひとつの目的は、「音楽のコミュニケーション能力」を高めることです。
のちほどソルフェージュの効果の箇所で詳しくまとめますが、要約すると、ソルフェージュによって以下のような能力が身につきます。
- 音楽を聴いて、音の長さや高さなどを識別できる
- 音楽を楽譜に記号として書くことができる
- 楽譜を見て曲をイメージすることができる
- 音を正しいリズムや音程で演奏したり歌ったりすることができる
これらの能力に共通するのは、音楽的な「コミュニケーション」ができるようになる、ということです。
たとえば、①の音楽を聴いて理解できる能力は、「聴き手」として「演奏者」から音楽を「聴く」力です。
同様に、②の楽譜を書く能力は、「作曲家」といった立場から「演奏者」に向けて音楽を「書く」力です。
また、③の楽譜を見て曲をイメージする能力は、「演奏者」として「作曲家」の音楽を「読む」力であることがわかります。
さらに、④の正しい音程やリズムで歌ったり演奏する能力は、「演奏者」として「聴き手」に「表現する」力に他なりません。
そして、「聴く」「書く」「読む」「表現する」という行為は、人間のコミュニケーションそのものです。
つまり、ソルフェージュとは、音楽の「コミュニケーション能力」を向上させるトレーニングなのです!
音楽のシーンでは、「演奏家」「作曲家」「聴き手」など、状況によって異なる役割を担うことになります。
そして、ソルフェージュとは、どのような役割であっても、他の「演奏家」や「作曲家」「聴き手」と適切に音楽のコミュニケーションができる能力を育むものです。
音楽をしていく上では、「作曲家」や「演奏者」「聴き手」とのコミュニケーションが欠かせません。
そんな、音楽に必要となるコミュニケーション能力を高めるトレーニングこそが、ソルフェージュなのです!
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