固定ド・移動ドとは?

固定ド・移動ドとは?違いは?絶対音感・相対音感との関係を理解する

固定ド・移動ドと絶対音感・相対音感のイメージ画像

●このページでわかること
固定ド・移動ドソルフェージュの違いは?音名と階名?絶対音感・相対音感?メリットとデメリットは?

【 固定ドと移動ドとは 】
「固定ド」または「固定ド唱法」とは、音名(=音の「高さ」に対する名称)に基づく歌唱法のことである。絶対的な音の高さに基づくものであるため、「ドレミファソラシド」の位置は変化しない。

「移動ド」または「移動ド唱法」とは、階名(=音の「機能」に対する名称)に基づく歌唱法のことである。主音や調性に対する音の機能に基づくものであるため、主音の変化に伴って「ドレミファソラシド」の位置が移動する。

音楽の世界には、音楽の基礎能力を高めるための「ソルフェージュ」と呼ばれるトレーニングがあります。

そして、ソルフェージュには、「固定ド(唱法)」に基づく方法と「移動ド(唱法)」に基づく方法の2種類があります。

実は、固定ドと移動ドでは、それぞれに伸ばすことのできる能力が異なります。また、「絶対音感」と「相対音感」という言葉も、固定ドと移動ドを理解することによって正確に意味を理解することができます。

このページでは、「固定ド」と「移動ド」の意味や違い、「絶対音感」と「相対音感」の違いなどについて、できるだけわかりやすく&詳しく解説していきます。

固定ドと移動ドの違い

ソルフェージュの固定ド・移動ドとは?

音楽には、「ソルフェージュ」という基礎トレーニングがあります。

ソルフェージュとは、音を聴き取ったり楽譜を見て歌ったりすることによって、音感や読譜能力など、音楽の基礎力を総合的に養うトレーニングのことを指します。

もう少し簡単に言うと、ソルフェージュとは、音感や読譜力など音楽の感覚を磨く基礎トレーニングのことです。

ソルフェージュでは、楽譜を見ながら、音を声に出して歌います。これを、「視唱ソルフェージュ」と言います。

視唱ソルフェージュを行う際には、ドレミ~の位置が移動しない「固定ド唱法」と、ドレミ~の位置が移動する「移動ド唱法」の2つの方法があります。

この「固定ド」と「移動ド」について、それぞれの意味や違いを以下で詳しく見ていきましょう!

固定ド(固定ド唱法)とは?

「固定ド」もしくは「固定ド唱法」とは、「ド」の位置を固定して歌う方法のことです

「ドレミファソラシ」の位置が固定されている歌い方と言い換えることができます。

「固定ド唱法」は、「階名」ではなく「音名」に基づいて歌う方法です

この「音名」についても簡単に確認しておきましょう。

「音名」とは、ある音の「高さ」に対してつけられた名前のことです。たとえば、現代の西洋音楽では、440Hz(ヘルツ)の音の高さの音を「ラ」と呼びます。

音名と振動数の関係を画像で表すと、以下のようになります。

音名と振動数

固定ドにおいては、振動数に基づいて音の名前が決まります。

たとえば、261.63Hzという高さの音は「ド」と呼ばれ、329.63Hzという高さの音は「ミ」と呼ばれます。

そして、「固定ド唱法」では振動数によって音の呼び名が決定されるため、ドレミファソラシドの位置が変わりません。

そのため、主音や調などが変化しても、同じ高さの音であれば、音の呼び方が変わらないことが特徴です

ところが、この後に説明する「移動ド」では、同じ440Hzの高さの音であっても、「ラ」と呼ぶこともあれば、「ド」や「ミ」と呼ぶこともあります。

つまり、ドレミ~の各音の位置が、場合によって変化するのです。

移動ド(移動ド唱法)とは?

「移動ド」もしくは「移動ド唱法」とは、主音の変化に伴って「ド」の位置が移動する歌い方のことです

「ドレミファソラシ」の位置が変化する歌い方と言い換えることができます。

「移動ド唱法」は、「音名」ではなく「階名」に基づいて歌う方法です

「階名」とは、ある音と主音(=楽曲の主役となる音)との距離を表す音の名前であり、楽曲の中でその音が果たす「機能」に焦点を当てた音の呼び方です。

主音の位置が変化するのに伴って、「ドレミファソラシド」の位置も変化するのが特徴です

階名では、(特に長音階の場合)音階の主音を、音の高さにかかわらず「ド」と呼びます。

そして、そこから「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」ずつ進んだものを、それぞれ「レミファソラシド」と呼びます。

そのため、音名の「ド」が主音の時には、音名の「ド」が階名の「ド」、音名の「ミ」が階名の「ミ」にあたります。

もしこれが、音名の「ソ」を主音とした場合、音名の「ソ」を階名の「ド」、音名の「シ」を階名の「ミ」と呼びます。

次節で、移動ドの具体例について、固定ドと比較しながら詳しく見ていきましょう。

画像でイメージする固定ドと移動ド

固定ドと移動ドをイメージで理解するために、音階を固定ドと移動ドで表したものを画像で見ていきましょう。

たとえば、音名の「ド」を主音とした長音階(ハ長調の音階)の場合を見てみましょう。これを五線上で表すと以下のように表されます。

ハ長調の音階

これを固定ドで表すとどうなるのでしょうか。以下は「ド」を主音とする長音階を固定ドで鍵盤上に表した図です。

ハ長調鍵盤図

「ド」を主音とした場合、固定ドではおなじみの「ドレミファソラシド」で表されます。移動ドの場合はどうでしょうか。

ハ長調鍵盤図

移動ドは主音を「ド」とするため、音名の「ド」が主音である場合、固定ドと移動ドの「ド」の位置が一致していることを意味します。

そのため、移動ドでも「ドレミファソラシド」となり、固定ドと同じ音階をつくります。

これが、音名の「レ」を主音とした音階(=ニ長調の音階)に変わるとどうなるでしょうか。五線上で表すと、以下のように表されます。

ニ長調の音階

これを固定ドで表すと、下図のようになります。

ニ長調の音階

音名の「レ」を主音とした場合、固定ドでは「レミファ♯ソラシド♯レ」と表されます。

これが移動ドになるとどのように変化するかを見てみましょう。

ニ長調の階名

 

移動ドでは、主音が音名の「レ」の場合であっても、主音を「ド」と呼びます。そのため、固定ドでは「レミファ♯ソラシド♯レ」であったものが、移動ドでは「ドレミファソラシド」になるのです。

さらに移動して、主音を音名の「ミ」にした場合(=ホ長調の音階)を見てみましょう。五線上に表すと以下のようになります。

ホ長調の音階これを固定ドで表すと、以下のようになります。

固定ドのミ

音名の「ミ」を主音とした場合、固定ドでは「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」と表されます。これが移動ドになるとどのように変化するかを見てみましょう。

移動ドのミ

移動ドでは、主音がの音の高さに関係なく、主音を「ド」と呼びます。そのため、固定ドでは「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」であったものが、移動ドでは「ドレミファソラシド」と呼ばれます。

ここまで見てきたように、固定ドでは「ド」の位置が固定されています。

そのため、主音が移動すると、音階が「ドレミファソラシド」「レミファ♯ソラシド♯レ」「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」のように変化します。

一方で、移動ドでは「ド」の位置が主音の変化に伴って変化します。移動ドにおいては、いつでも主音から「ドレミファソラシド」の音階がつくられます。

では、固定ドと移動ドにはどんな違いがあるのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

固定ド・移動ドの違いは?音の「高さ」VS「役割」

固定ドはドレミ~の位置が全て一定であるのに対して、移動ドは主音の種類によってドレミ~の位置が変化することを確認してきました。

では、ドレミ~が移動するかしないかによって、何が変わるのでしょうか?

言い換えれば、固定ドと移動ドはどう違うのでしょうか?この点を詳しく見ていきましょう。

固定ドは音の「高さ」を識別する

固定ドは、たとえ主音が変化しても、ドレミ~の位置は変わりません。

これはつまり、ある音の「高さ」に対してドレミ~の名前がつけられているということです。

したがって、固定ドは音の「高さ」に基づいて音を識別するトレーニングであるということができます。

固定ドでは、主音や調が変化しても、音の「高さ」に基づいてドレミ~を判別するのです。

移動ドは音の「役割」を識別する

では、移動ドはどうでしょうか?

移動ドを理解するためには、音の「役割」について理解を深めておく必要があります。

実は、(特に)クラシック音楽では、楽曲や楽章ごとに、それぞれの音がそれぞれに異なった「役割」を持っています。

そして、この音の「役割」は、調(や音階)の変化に伴って変わります。

それぞれの音の役割は、「主音」「属音」「下属音」「導音」などと呼ばれます。

たとえば、主音は、その調の中心となる音です。そして、属音や下属音は主音と最もよく調和する音、導音は主音に向かっていく性質を持つ音です。

以下は、ハ長調(=ドを主音とする長音階)の各音の機能をまとめたものです。

音の役割・機能

ここで大事なのは、これらの各音の役割は、主音の変化に伴ってそれぞれ変化するということです。

そして、移動ドとは、この音の「役割」によってドレミ~の位置が決まるソルフェージュ方法なのです。

具体的には、移動ドでは楽曲の調の「主音」をド、上主音を「レ」、「中音」をミ、下属音を「ファ」、属音を「ソ」、下中音を「ラ」、導音を「シ」と呼びます。

これに基づくと、たとえばハ長調では固定ドの「ド」の音が主音、固定ドの「シ」の音が導音です。したがって、ハ長調では固定ドの「ド」の音を移動ドでも「ド」、固定ドの「シ」の音を移動ドでも「シ」と呼びます。

これが、へ長調(=ファを主音とする長音階)になった場合を考えてみましょう。

へ長調では、固定ドの「ファ」の音が主音、固定ドの「ミ」の音が導音へと変化します。したがって、へ長調では固定ドの「ファ」の音を移動ドで「ド」、固定ドの「ミ」の音を移動ドで「シ」と呼びます。

このように、調によって各音の役割が変化するために、移動ドではドレミ~の位置が変化するんですね!

固定ドは音の「高さ」を識別する、移動ドは音の「役割」を識別するトレーニング方法であることは、ぜひ知っておいてください。

絶対音感と相対音感とは?違いは?固定ド・移動ドとの関係は?

音楽をしたことがある方なら、「絶対音感」と「相対音感」とう言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

実は、この「絶対音感」と「相対音感」という言葉は、固定ド・移動ドと密接な関係があるのです。

ここからは、固定ド・移動ドと絶対音感・相対音感の関係性を見ていきましょう・

絶対音感とは?音の「高さ」を識別できる能力

絶対音感とは、音の「高さ」を聴いて識別できる能力のことです。

たとえば、261.63Hzという高さの音を聴くと「ド」、392.00Hzの音を聴くと「ソ」、440.00Hzの音を聴くと「ラ」という音名が浮かびます。

「固定ドと移動ドの違い」の箇所で、固定ドは音の「高さ」を、移動ドは音の「役割」を識別するトレーニングであることを見てきました。

そして、音の「高さ」を識別できる能力のことを「絶対音感」と呼び、絶対音感は固定ドソルフェージュによって育むことができるのです。

相対音感とは?音の「役割」を識別できる能力

一方で、相対音感とは、音の「役割」を聴いて識別できる能力のことです。

たとえば、ト長調(=ソを主音とする長調)であれば、主音である固定ドの「ソ」の音を「ド」と呼び、属音である固定ドの「レ」の音を「ソ」と呼びます。

同様に、ニ長調(=レを主音とする長調)であれば、主音である固定ドのれ「レ」の音を「ド」と呼び、属音である固定ドの「ラ」の音を「ソ」と呼びます。

このように、音の聴いてその音の「役割」を識別できる能力のことを「相対音感」と呼びます。

そして、音の役割を識別する「相対音感」を育むトレーニングこそが、移動ドソルフェージュなのです。

固定ドと移動ドのメリットとデメリットは?

ここまでで固定ドと移動ドの意味や違いを確認してきましたが、固定ドと移動ドにはそれぞれにメリットとデメリットがあります。

最後に、固定ドと移動ドそれぞれの利点と欠点について見ていきましょう。

固定ドのメリットは?

固定ドのメリットは、音の「高さ」に対する感覚がよく磨かれることです

固定ドでは、261.63Hzの高さの音=「ド」、440Hzの高さの音=「ラ」のように、音の高さと音の名前が必ず一致します。

前章でも説明しましたが、音の「高さ」と音の名前が一致している状態のことを「絶対音感」があると言います。

そして、固定ドのトレーニングを積むことによって、「絶対音感」が育つのです

また、ある高さの音はいつでも同じ名称で呼ばれるため、移動ド唱法よりもシンプルです。そのため、音が飛んだり、転調が多かったりするような複雑な曲になっても、対応しやすいという利点が挙げられます。

固定ドのデメリットは?

一方で、固定ドのデメリットは、、移動ドと比較して、音の「機能」や「調性」に対する感覚が育ちにくいことにあります

固定ドはあくまで音の高さに基づいて行われるものであるため、主音や調が変わっても、歌い方が変化しません。

主音や調の変化に伴って音の呼び方を変える移動ドでは、音の「機能」に関する感覚を育てることができますが、固定ドはこの点で移動ドには劣ってしまうのです。

移動ドのメリットは?

移動ドのメリットは、音の「役割」や「機能」を深く理解できるようになることです

移動ドでは、いつでも主音(=曲のメインとなる音)は「ド」、属音・下属音(=主音と最も調和する音の1つ)は「ソ」・「ファ」、導音(=主音に向かっていく音)は「シ」と呼ばれます。

基本的に、主音が変わると、属音や導音など、それぞれの音の役割も変化します。

移動ドでは、このような主音の変化に伴う音の役割の変化を感覚的にとらえることができるようになります

また、音の「役割」を識別できる能力は「相対音感」と呼ばれることを確認しましたね。

お察しの通り、移動ドのトレーニングを積むことによって、「相対音感」を育もことができます

移動ドのデメリットは?

一方で、移動ドのデメリットは、複雑な曲に対応するのが困難なことです

移動ドでは、主音の変化が起こると、各音の位置も変化します。そのため、転調が多くなるなどの理由で曲が複雑になればなるほど、音の位置を変化させることがむずかしくなります。

この点では、固定ドはいつでも同じ高さの音は同じ名前で呼ぶので、曲が複雑になったとしても対応が比較的容易であるといえます。

固定ドと移動ドの違いを踏まえて選択し組合せよう!

ここまで確認してきたように、固定ドとには固定ドの、移動ドには移動ドの良さがあります。

固定ドと移動ドの違い

固定ドは音の「高さ」に対する感覚がより育つのに対して、移動ドは音の「機能」に対する感覚がより育ちます

どちらの方がより優れているというわけではありません。それぞれの相対的なメリットとデメリットとを比較して、自分の目的に合った方法を選択したり組み合わせて利用するようにしましょう。

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