今回の楽曲解説は、ブルグミュラー作品より「つばめ」です。
ブルグミュラー25の練習曲も残すところあと2つとなりました。
左手が右手と交差するこの曲の、弾き方のポイントや練習の手順などを確認していきましょう。
ブルグミュラー「つばめ」の概要を解説
ブルグミュラー25の練習曲の24曲目は"L'hirondelle"、日本語で「つばめ」です。
「つばめ」は、無窮動のいかにも練習曲らしい曲です。
※無窮動とは、常に一定した音符の流れが特徴的な、急速なテンポによる楽曲(Wikipediaより)
18曲目「気がかり」と似ていますが、広い音域を迅速に行き来することで、さらに難易度がアップしています!
まさに、つばめが上に下に、滑空しているようです。
つばめの飛行速度は平均時速40~50km、外敵から逃げるときの最大速度は時速200㎞にも及ぶそうですよ。
拍子は4分の4拍子、調はト長調です。
テンポ表示は、「Allegro non troppo(快速に、速すぎずに)」。
慌てて弾きとばすような感じにはならないように、といったイメージです。
また、楽曲の形式は、A-A'-B-Codaの二部形式です。
以下に参考動画を掲載しておきますので、イメージをつかむ際にご参照ください。
「つばめ」の弾き方のコツは?手の交差をマスターしよう
「つばめ」の目立った特徴は、1小節目の2拍目と4拍目に「m.g.」と書かれていることです。
これはフランス語で「main guache(マン・ゴーシュ)」の略で、「左手」の意味を表しています。
この音は左手で弾いてほしいということで、左手は右手を飛び越して(交差させて)弾くことを表します。その後は書かれていませんが、以下同様です。
つまり、この曲の学習ポイントは「すばやい手の交差」です。
ちなみに、「右手」は「m.d.」と書きます。
フランス語では「main droite(マン・ドロアト)」、イタリア語では「mano destra(マノ・デストラ)」なので、略語が共通しているのですが、「左手」のイタリア語は「mano sinistra(マノ・シニストラ)」となり、「m.s.」と書かれます。
どちらも使われるので、覚えておいてくださいね。
また、この曲がどのように構成されているか、分析してみましょう。
左手の低音がベースの役割、そして高音部がメロディの役割を果たしています。つまり、片手で2つの役割を果たしているんですね。
一方で、右手は一貫して分散和音(和音を同時にではなく分けて演奏すること)です。
ですから、左手でこの曲の骨格を演奏し、右手は響きを豊かにする色づけを担っている、というイメージです。
「つばめ」の練習方法は?手順を確認する
続いて、「つばめ」をどのような手順で練習したらいいのか、練習方法について見ていきましょう。
①右手を分散和音ではなく、コードとしてかたまりで弾く
まず、右手の分散和音の練習についてです。
分散和音を練習する際は、最初から音を分散させて弾くのではなく、かたまり(和音・コード)ごとに一緒に弾いてみましょう。
先に手の形を覚えておくことで、分散和音にしたときにスムーズに指を移動させることができるようになります。
また、先にコードを弾いてみると、意外と動きが少ないことがわかると思います。
②左手の練習は重心移動を意識しながら
先述したように、左手はベースとメロディの二役をこなさなくてはいけませんので、広い音域を移動することになります。
最短距離で移動し、鍵盤に指を乗せて、用意ができてから弾く!が鉄則でしたね。
スタッカートはそのあたりがおろそかになりがちですから、最初はレガートで弾いてみる、というのもひとつの方法です。
左手が鍵盤を右へ左へと移動する際に、座っている位置をずらさないこと。
お尻の位置は動かさずに、重心移動をしてください(右=高音域へ行く際には、お尻の左側を少し浮かせ、右足により重心をかけるような感じ)。
足の裏もしっかり床につけて、安定感のある姿勢で弾いてくださいね。
③右手の位置を軸にして、左手を動かす
まずは、右手を①で練習したようにコードのかたまりで弾きながら、左手を入れてみてください。
右手を軸に、左手は右手の上を飛び越して左右に動くイメージです。
このとき、重心移動の具合も確認してくださいね。
それがうまくできるようになったら、右手も楽譜どおりに弾いて、完成です!
ピアノならではの特性を活かした曲としての表現を
最後に、他の楽器にはない、ピアノならではの特性ってなんだと思いますか?
まず、高い音から低い音まで、一台のピアノで出せてしまうということです。
フルオーケストラで、あれだけの数の楽器を使って出す音域を、ピアノは一台でまかなえてしまいます。
また、一度にたくさんの音を出せる、というのもピアノならではの特性です。
10本の指を使って10個の音を同時に出せてしまう、そんな楽器はなかなかありません。
というわけで、この曲のアルペジオや手の交差も、ピアノの特性を活かしたものだと言えるでしょう。
手の交差というのは得意・不得意が分かれると思いますが、ひとたび体得すると、まるでピンポンでラリーを続けているような、スポーティな快感すら感じます。
また、見た目にも派手で「すごいことやってる」感が出るので、パフォーマンスにはもってこいです
リスト作曲の「ため息」(《3つの演奏会用練習曲》第3曲)も、内声のアルペジオに手の交差という動きの点では似ていますね(ただし、演奏難易度はうーんと高め)。
大変美しい曲なので、こちらもぜひ聴いてみてください。
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