【 調(音楽用語)の意味 】
調とは、楽曲の音階について、主音(=音階の1番目の音)が何であり、音階が長音階と短音階のどちらであるかを表す言葉である。
楽曲は、主音の種類や音階の長短によって、曲の雰囲気が変化する。そのため、表現したい曲想によって調が使い分けられるのである。
調の種類の例として、「ト長調」や「へ短調」などがある。この「ト」や「へ」などの頭文字のカタカナは主音となる音の種類を、「長調」や「短調」は長音階と短音階のどちらの音階が用いられているかを表す。
音楽の世界では、「ト長調」「イ短調」など「調」という言葉が当たり前のように使用されています。
しかしながら、特に音楽の初学者にとっては、「調」という概念を理解することは容易ではありません。
私も、音楽を学び始めてすぐの頃は、楽典の本などで理解しようと努めましたが、なかなか腑に落ちる言葉に出会うことができませんでした。
しかしながら、音楽学習を重ねるにつれて、「調」というものを言語的にとらえることができるようになってきました。
そこでこのページでは、感覚だけでなく言語的に「調」という概念を理解したい方向けに、調の意味や種類、調号の種類などを解説していきます。
調とは?音楽用語「調」の意味をわかりやすく
調とは、楽曲における主音(=音階の1番目の音)が何であり、長音階と短音階のどちらが用いられているかを表す言葉です。
たとえば、「ト長調」という調があります。頭文字の「ト」は主音が「ソ」(日本語でトと呼ばれる)の音であることを、後半の「長調」が長音階であることを表します。
一方で、「イ短調」という調の場合はどうでしょうか。頭文字の「イ」は主音が「ラ」(日本語でイと呼ばれる)の音であることを、後半の「短調」が短音階であることを表します。
したがって、調の概念を理解するために、「主音」についてと、「長音階」と「短音階」について、それぞれ確認しておきましょう。
主音とは
まず前提として、西洋音楽には「ド ド♯(レ♭) レ レ♯(ミ♭) ミ ファ ファ(ソ♭) ソ ソ(ラ♭) ラ ラ(シ♭) シ」の12種類の高さの音が用いられます。
そして、主音とは、12種類の高さの音のうち、音階の第1番目に位置する音であり、楽曲や楽章の中心的な役割を果たす音のことです。
主音は、「ド ド♯(レ♭) レ レ♯(ミ♭) ミ ファ ファ(ソ♭) ソ ソ(ラ♭) ラ ラ(シ♭) シ」のいずれの音もなる可能性があります。
楽曲の主音が異なれば、主音と最もよく調和する「属音」「下属音」の位置や、主音に向かって上行する性質を持つ「導音」の位置、など各役割をもつ音の位置もまた異なります。
これはつまり、主音が変化することによって楽曲の音階も変化することを意味します。
そして、音階が変化すると、楽曲の雰囲気も変化します。
つまり、主音やその他の機能を持つ音の位置が変化することによって、音楽の雰囲気が変化するということです。
裏を返せば、主音の位置を変えることによって曲の雰囲気が変わるため、作曲家たちは自分がつくろうとしている曲の曲想に最も合った主音を考え選択してきました。
主音を何にするかで曲のイメージが全然違うので、その曲が何の音を主音としているのかを表すために、調の名前は主音の音名から始まるのです。
「長」音階と「短」音階
そもそも、音階とは「ド ド♯(レ♭) レ レ♯(ミ♭) ミ ファ ファ(ソ♭) ソ ソ(ラ♭) ラ ラ(シ♭) シ」の12の楽音のうちのいくつかの音を、1オクターブの範囲内で、あるルールに従って並べたもののことです。
実は、楽曲や楽章などにおいて、12の音がすべて均等に使用されるわけではありません。基本的には、主音と、主音とよく調和するいくつかの音を中心に曲がつくられるのです。
この、曲の中心となる音を取り出して並べたものを「音階」と呼ぶのです。その中でも、クラシック音楽で中心となる音階は、「長音階」と「短音階」です。
長音階とは、主音と、主音から「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」ずつ進んだ音を並べたものです。
半音とは、ドとド♯、ミとファのように、となり合う音同士の距離のことです。そして、ドとレ、ミとファ♯のように、半音2つ分の音の距離のことを全音と呼びます。
長音階の並びでつくられた曲は、明るい雰囲気の曲になりやすいです。
一方で、短音階とは、主音と、主音から「全音・半音・全音・全音・半音・全音・全音」ずつ進んだ音を並べたもののことを指します。
短音階は派生して、7番目の音を半音上げたり(=和声短音階)、6番目と7番目の音を半音上げたり(=旋律短音階)して楽曲に用いられることが多いです。
短音階の並びでつくられた曲は、暗く悲しげな雰囲気を持つことが多いです。
長音階と短音階の最も大きな違いは、主音(=音階の1番目の音)から中音(=3番目の音)までの距離(=音程)にあります。
具体的には、長音階は長3度(全音+全音)の距離であるのに対して、短音階は短3度(全音+半音)です。
この3度の音の長短が、楽曲の明るい/悲しい雰囲気を分ける大きな要因なのです。
このような雰囲気の違いがあるからこそ、長音階と短音階は楽曲によって使い分けられるのですね!
調の名称はどのように決まるのか?
調には、「ハ長調」「ト長調」「イ短調」「ホ短調」など、多くの種類があります。
それぞれの調の名称はどのように決まるのでしょうか?
ここからは、調の名称がどのような規則によって決まるのかを詳しく見ていきましょう!
調の名称の「ハニホヘトイロハ」とは?
「ハ長調」「ホ短調」といった調の名称は、ある規則に従っています。ここでは、調の名称がどのようにして決まるのかについて見ていきましょう。
まず、頭文字の「ハ」や「ホ」などは、主音が何であるかを表しています。「ドレミファソラシ」などの各音のことです。
では、なぜ「ドレミファソラシ」と呼ばずに「ハ」「ホ」「ト」などと呼ばれるのでしょうか?
それは、「ドレミファソラシ」がイタリア語の音名であるのに対し、日本語の音名も別で存在するからです。
日本語の音名は、いろは歌のように、「ハニホヘトイロ」で表します。
「ハ」は「ド」、「ニ」は「レ」、…中略…、「ロ」は「シ」という順序で対応しています。以下の画像のようなイメージです。
つまり、ドが主音であれば「ハ長調」や「ハ短調」、ソが主音であれば「ト長調」や「ト短調」という名称になるのです。
長調と短調とは?
続いて、「ト長調」「ト短調」などのように、調は「長調」と「短調」に分かれます。
この「長調」と「短調」という名称は、どのように決まるのでしょうか?
実は、楽曲の音階に長音階が用いられている場合は「長調」に、短音階が用いられている場合は「短調」になります。
たとえば、楽曲の音階が「ミ」(=ホ)を主音とする場合の調の名称は、音階が長音階の場合には「ホ長調」に、音階が短音階の場合には「ホ短調」になります。
このように、調の名称は主音と音階の長短によって決定されるのです。
加えて、調には「嬰へ短調」や「変ロ長調」のように、頭に「嬰」(えい)や「変」(へん)といった文字がつくことがあります。
この時、「嬰」は♯(=半音上げる)を、「変」は♭(=半音下げる)をそれぞれ表します。
そのため、調の「ハニホヘトイロハ」の前に「嬰」や「変」がついている場合、主音は♯や♭がついた音であることを表しているのです。
たとえば、「嬰へ短調」は、へ(=ファ)を半音上げたファ♯を主音とする短調であることを表します。
それに対して、「変ロ長調」であれば、ロ(=シ)を半音下げたシ♭を主音とする長調であることを表します。
調の名称の決まり方は以上です。最後に簡単にまとめておきましょう!
- 調の「ハニホヘトイロ」はそれぞれ「ドレミファソラシ」と対応し、楽曲の音階の1番目の音(=主音)は何かを表す。
- 「長調」は楽曲の音階が長音階であることを、「短調」は楽曲の音階が短音階であることを表す。
「調」の関連トピックまとめ
ここは見出しをつけずに、それぞれの概要とリンクを提示するにとどめる。
調の意味や調の名称を決める規則などについて理解を深めたところで、ここからは調についてより深く理解するための様々なトピックについて簡単にまとめています。
もっと詳しく読みたいテーマがあれば、ぜひリンク先のページをご覧ください♪
それぞれの調が持つ「調号」とは?
楽譜には、最初に楽曲の調に応じた変化記号(♯や♭)が書かれます。
このような、楽曲の調に継続して現れる変化記号(♯や♭)を楽譜の最初に示したものを、「調号」と言います。
調号についての詳細は、以下のページをご覧ください!
調の種類と特徴/調号・音階・雰囲気の一覧
調には、24にものぼる(異名同音の調を含むと30)種類があります。
そして、それぞれの調が調号・音階・雰囲気などの点において、異なる特徴を持っています。
各調の特徴を一覧にしたものは、以下のページをご参照ください♪
調の相互関係について
調同士の関係には、お互いによく調和する音階を持つ関係の近い調(=近親調)もあれば、関係の遠い調(=遠隔調)もあります。
ある調と特に関係の深い調には、「平行調」「同主調」「属調」「下属調」の4種類があります。
調の相互関係について、詳しくは以下のページをご覧ください♪
転調・移調について
調はある楽曲が他の調へと変化することを、「転調」または「移調」と言います。
転調は、ある楽曲が途中から別の関係の近い調へと変化することです。
一方で、移調とは、楽曲を始めから終わりまで丸ごと別の調へと移すことを意味します。
転調と移調の違いについて、詳しくは以下のページをご参照ください♪
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